一般投資家の視点から、「大学のデューディリジェンス」について書いています。今回は、私立大学獣医学部/獣医学科について、週刊東洋経済 臨時増刊 本当に強い大学2017を参考にして、まとめました。
日本大学は、私立大学では総資産、事業活動、教員数が第1位です。生物資源科学部(神奈川県藤沢市)の中に獣医学科があります。かっては日本大学農獣医学部だったのが1996年に改名されました。敷地面積は約55 haです。農場があり、食品加工実習センターもあります。
酪農学園大学は北海道江別市にあり、農食環境学群と獣医学群、獣医学群は獣医学科、獣医看護保健学科から構成されています。酪農学園大学の敷地面積は約135 haで農場があり、ソーセージやハム、ベーコンなどの実験実習設備、チーズ、バターなどを作る乳製品製造実験実習設備などがあるようです。
日本獣医生命科学大学(武蔵野市)は日本医科大学と同一法人です。獣医学部と応用生命科学部から構成されています。
麻布大学(神奈川県相模原市)は獣医学部と生命・環境科学部から構成されています。麻布大学は1890年に東京の麻布で開設された東京獣医講習所が前身です。麻布大学は日本大学、日本獣医生命科学大学と同様、都心に近いので、東日本の志願者の選択肢に入るのでしょう。
北里大学は、医療系だけで医学部、薬学部、看護学部、医療衛生学部のほか2つの専門学校があり、理学部、獣医学部、海洋生命学部があります。獣医学部は青森県十和田市にあります。
日本大学、日本獣医生命科学大学、北里大学は医学部があるので総資産、事業活動の規模が大きいようです。
50年以上、「岩盤規制」と称される文部科学省の告示で獣医学部の新設、定員増は認められませんでした。逆に言えば、最後に設置された北里大学でも50年を超える伝統があります。麻布大学は日本最初の私立の獣医系大学で、130年近くの歴史があります。
岡山理科大学獣医学部は、いまだに「絵のない額縁」状態です。本当に最先端のライフサイエンス研究を目指すのであれば、研究施設は青天井の費用がかかります。総合病院と同様にX線CT、MRI(核磁気共鳴画像診断)や手術関係の機器、BSL3施設などを揃えると、総資産が余程、潤沢でなければいけないように思います。BSL3施設に入れる安全キャビネットも数百万円はするでしょう。検査装置は一台で数千万円は安い方で、上はキリがありません。また、それぞれの機器には専任のオペレータ(検査技師)が必要です。
建物を建てただけでは、開校は不可能です(と思います)。本来は専任の教員が、建物、施設の仕様を決め、それにあった必要な放射線防護、磁気漏えい防止が必要ですし、また、BSL3施設については、実際に利用した経験のある教員が仕様を決めるものです。設計会社、建築会社には、それぞれ実績が必要です。見よう見まねで「設計図」を作るのはダメです。
(10:3-AM、追記)
今治市役所は、誘致を推進していた企画課の職員が農林水産課、建築指導課の職員を連れて、せめて鳥取県、山口県にある獣医学部を視察しなかったのでしょうか?また、西予市には愛媛県農林水産研究所・畜産研究センターがあります。一度ぐらい、本当に専門家のアドバイスを求めなかったのでしょうか?今治市長が直々に行くことはないでしょうが、現場の職員のモラルとしては、当然、事前の勉強はするものでしょう。
(2018年7月18日追記)
私立大学の経営状況はブラックボックスです。端的に言えば、4大監査法人までは言いませんが、ちゃんとした監査法人の監査報告が全部、出ているか疑問に思っています。
獣医学部については、昨年度に購入されるべき図書が納入されていないような記事があります。どうなんでしょうか?
(過去のブログ記事)