アストロアーツ3月18日付記事、元はNASAです。
ハッブル定数の食い違い、JWSTの観測でも裏付けられる - アストロアーツ (astroarts.co.jp)
概要>ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって複数の銀河のケフェイド変光星が1000個以上も精密に観測され、ハッブル定数の不一致問題が依然として存在することが確かめられた。
>私たちの宇宙の現在の膨張速度は「ハッブル定数H0」で表される。ハッブル定数は「地球から遠い銀河ほど速く遠ざかっている」という「ハッブル・ルメートルの法則」の比例定数だ。
宇宙膨張に関する法則は以前は「ハッブルの法則」と呼ばれていましたが、2018年8月に国際天文学連合(IAU)の総会でルメートルの名前を追加することが提案され、その後電子投票により新名称の使用を推奨することが発表されました。
ジョルジュ・ルメートル(Georges-Henri Lemaître; 1894-1966)はベルギーの天文学者です。
ハッブルの2年前に同様の内容を発表したものの、無名の仏語誌に掲載されたため、長らく歴史に埋もれていたものが近年再評価されたわけです。
詳しくは次の記事をご覧ください。
ハッブル‐ルメートルの法則! | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
ハッブル定数とは「宇宙の膨張率」のことで、銀河の後退速度を銀河までの距離で割って得られ、比例定数です。
宇宙の膨張率 = ハッブル定数 × 銀河の後退速度.
定数の方はルメートルの名前を入れないのですね。長くなると面倒だからかな。
ただ、定数といっても宇宙のどこでも同じ値という意味で、時間的には変動し得るとされます。
ハッブル定数は H という記号で表され、その現在の値を H0 で表します。
単位は km/s/Mpc、つまり距離が1メガパーセク遠くなるごとに銀河の後退速度が何 km/s 大きくなるか、です。
約 70 km/s/Mpc とされてきましたが、近年より詳しい推計値が得られるようになりました。
>現在、ハッブル定数は観測方法によって大きく2通りの値が得られている。銀河に現れた「Ia型超新星」の明るさから距離を求めてハッブル定数を導くと、およそ73.0±1.0km/s/Mpc(距離が1メガパーセク遠くなるごとに、銀河の後退速度が73km/sずつ大きくなる)という値になる。一方、ビッグバンの熱放射の名残である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」を観測したデータからハッブル定数を求めると、およそ67.4±0.5km/s/Mpcという値が得られる。
Ia型超新星とは、連星系を構成する白色矮星が伴星から流入するガスの降着により超新星爆発を起こすもので、跡形もなく爆発し、中性子星やブラックホールを残すことはありません。
詳しくは次の記事の2以降をご覧ください。
△超新星爆発ってどういうものなの? | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
宇宙マイクロ波背景放射については、次の記事の4以降をご覧ください。
△宇宙の温度は3Kなの? | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
>この2つの値が誤差などを考えに入れても一致していないことは「ハッブル・テンション(Hubble tension; ハッブル定数をめぐる緊張)」と呼ばれ、現在の宇宙論で最大の謎の一つになっている。
「ハッブル・テンション(Hubble tension)」という言葉を覚えておきましょう。
この点については、以前の記事でも取り上げました。
ハッブル定数の異なる推計 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
そのときは 73.2 と 67.1 だったので、違いはわずかに縮小しているけど、「誤差などを考えに入れても一致していない」点は同じです。
現在の宇宙論における最大の謎の一つであることは間違いありません。
まあ、宇宙論には他にもダーク・エネルギーの正体、ダーク・マターの正体など最大級の謎が目白押しなので、「の一つ」を付ける必要があるのですが。
困ったものです・・・
ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。
渦巻銀河NGC 5468。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広角カメラ「WFC3」とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ「NIRCam」で撮影された画像を合成したものです。
きれいな画像ですが、近赤外線が含まれているのでもちろん疑似カラーです。
HSTでケフェイドが見つかった銀河としては最も遠く、またIa型超新星も出現しているため、両方の天体を使った距離測定の校正に利用できる重要な銀河とのこと。
>ここで問題になるのが、銀河の距離を求める方法に未知の誤差がないかという点だ。宇宙で距離を測る方法はいくつかあり、使える範囲がそれぞれ限られている。そのため、遠い天体までの距離を測るには、近い距離を測る方法から順に複数の測定方法をつないで距離を求める。これを「宇宙距離梯子」と呼んでいる。
梯子は「はしご」と読みます。
(梯の字は常用漢字ではなく、人名用漢字です。)
距離の測定方法を近い方から一番遠い方までつないでいくのを、「はしご」になぞらえているわけです。
>Ia型超新星の明るさと距離の関係は、「ケフェイド(セファイドなどとも呼ぶ)」というタイプの変光星から求めた距離を使って校正されている。ケフェイドは個々の星を見分けられるくらい近い銀河でしか見えないが、「明るいものほど変光周期が長い」という性質(周期・光度関係)があり、精度良く距離を決められる。そのため、Ia型超新星が出現し、なおかつケフェイドも含まれているような銀河を使えば、Ia型超新星という「ものさし」の精度を校正できるのだ。
ケフェイドとは Cepheid variable の訳で、英語ではセファイドと読みます。
ケフェウス座δ(デルタ)星と同じタイプの脈動変光星のことです。
>この校正を行うには、Ia型超新星もケフェイドも含まれていて、しかもなるべく遠い銀河を使うことが望ましい。しかし、あまり遠い銀河だとケフェイドを分解できず、別の星の明るさが混ざってしまう可能性がある。実はハッブル・テンションの原因として、この「光の混入」があるのではという指摘がされていた。
Ia型超新星の方は超新星爆発ですから、1回限りの現象であり、その後から精度を上げることはできません。
しかし、ケフェイドは脈動変光星なので、精度の改善ができるわけです。
同じように距離のはしごに使われているといっても、全然性格が異なるわけです。
ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
NGC 5468で見つかったケフェイドの一つ、「P42」です。
左がJWST、右がHSTによる近赤外線画像です。
JWSTの方が大幅に分解能が向上していることが分かります。
>米・ジョンズ・ホプキンズ大学のAdam Riessさんは、Ia型超新星を使ってハッブル定数を精密に求める「SH0ES」というプロジェクトを率いている。RiessさんはIa型超新星の観測から宇宙の加速膨張を発見して、2011年にノーベル物理学賞を共同受賞した一人でもある。
>今回、RiessさんたちはJWSTを使い、計8個のIa型超新星が出現した6個の銀河について、合計で1000個以上のケフェイドの光度と変光周期を高い精度で観測した。その中には、ケフェイドが見つかった銀河としては最も遠いNGC 5468(おとめ座の方向約1億3000万光年)も含まれている。
「計8個のIa型超新星が出現した6個の銀河」というのが、疑問に感じます。
Ia型超新星が短期間の間に2回出現した銀河が2個もあったのでしょうか。
あるいは、3回出現した銀河が1個だったりして。どちらも考えづらいですね。
地球から1億3000万光年離れたNGC 5468の銀河全体が上の画像、ケフェイドが下の画像です。
それほど遠い銀河のケフェイドについて、光度と変光周期を高い精度で観測できたというのは凄いことだと思います。
>観測の結果、Riessさんたちはケフェイドの周期・光度関係の誤差を数百分の1に減らすことができたが、銀河までの距離は過去にHSTがIa型超新星を観測して求めた値とほとんど変わらなかった。そのため、ケフェイドに別の星の光が混入してハッブル・テンションが生じている可能性は否定できる、と結論した。
ケフェイドの周期・光度関係の誤差を数百分の1に減らすことができたこと、そしてケフェイドに別の星の光が混入してハッブル・テンションが生じている可能性が否定されたことが今回の研究の主な成果です。
>「JWSTとHSTの組み合わせで、両者の長所を活用できました。宇宙距離梯子をさらに上って、HSTの測定が依然として信頼できることを確かめられました」(Riessさん)。
これまで私は、単純にJWSTはHSTの後継機だと理解していたのですが、少し違うようですね。
まあ、「HSTの測定が依然として信頼できることを確かめられ」たのは良かったです。
全部測定し直しなんて大変でしょうから。
>Ia型超新星を使う方法は、いわば数千万~数億年前という比較的新しい宇宙を観測してハッブル定数を求めている。もう一方のCMBを使う方法は、ビッグバンからわずか38万年しか経っていない時代の宇宙からハッブル定数を導いている。この2つの時代の間に宇宙の性質がどう変わったのかについては、まだ直接観測されてはいない。
>「私たちは、宇宙の始まりと現在とをどうつなぐかを考える上で、何か見落としていないか、見つけ出す必要があります」(Riessさん)。
今回の研究成果は、推計方法に想定される「穴」の一つが潰されたことです。
ハッブル・テンション自体が解消されたわけではありません。
はっきり言って、現在の宇宙論と素粒子論は行き詰っています。
今後ハッブル・テンション解消を通じて、宇宙論のさまざまな謎が一挙に解決し、一点突破全面展開となることを期待したいと思います。
ウーム、でも夢で終わりそうな気も・・・
この記事は、テーマ「科学記事」ではなく「宇宙論」に入れておきます。
★ 1ドル158円台と円安の進行が話題になっています。おりしも大型連休に当たり、海外旅行に行く人、インバウンドで来日する観光客にはとりわけ実感が強いでしょう。過去、円高だったときには行き過ぎと思われるような動きをしたことが何度もありました。円安についても、極端な動きは当然あり得ると思います。
★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス194
.i pe’i ru’e ba’a nai mi cinmo lo ka frica milxe
なんだか少し変わった気分だったような気もするみたい。
pe’i : 考えたところによると。心態詞(認識系)UI2類 <- pensi 考える
ru’e : 弱。心情や態度が弱いことを表す。心態詞CAI類 <- ruble 弱い
ba’anai : 回想。心態詞(認識系)UI2*類。<- ba’a 予期
cinmo : x1はx2(感情)をx3について覚える;x1は感情的/ムードに浸っている。-cni- [生命・感情]
frica : 違う/異なる,x1は x2と x3(性質)に関して。-fic- [構造・比較]
milxe : 温和/穏やか/まろやか/マイルドだ,x1は x2(性質)の点で;x1はあまりx2ではない。-mli- [構造・範囲]
心態部は、[考慮] [弱] [回想] です。
命題部は、主述語が cinmo で、x1が mi、x2が { lo ka frica milxe } です。
出典は、