△超新星爆発ってどういうものなの? | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

Q 超新星爆発とはどういうものなのでしょうか?


A 超新星爆発とは、星(恒星)がその生涯の最後に華々しく全体的な爆発を起こすことです。
以下の解説はやや高度なため、星の進化について知識をお持ちでない方は、より基本的なQ&A「△星にはどんな種類があるの?」を先にご覧になることをお勧めします。
http://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/8499597.html

1.超新星(supernova)は、その爆発の機構により大きく2つに分けることができます。
一つは、もともと太陽質量の10倍以上ある大質量星の場合です。
この場合には、燃焼(核融合)により中心部でより重い元素の合成が次々と進み、外側から中心に向かって、水素、ヘリウム、炭素・酸素(C+O)、酸素・ネオン・マグネシウム、ケイ素、鉄という順序のタマネギ型の構造ができます。
より重い元素が燃焼するにつれ、中心部の温度・密度・圧力はいずれもどんどん高まっていきます。
高い温度により高い圧力が生じて、膨大な重力により自らつぶれること(重力崩壊)を妨げているのです。

さて、鉄56は核子(陽子と中性子)当たりの結合エネルギーが最大であるため、鉄の合成まで行き着くとそこで燃焼は止まってしまいます。
しかし、核が収縮して温度・密度・圧力をさらに高めるため、中心温度が約100億度に達した時点で鉄がガンマ線光子を吸収してヘリウムに分裂し、さらにヘリウムが陽子と中性子に分裂します。
これは吸熱反応なので中心部の温度は急速に低下するため、圧力も急速に低下して、星は自らを支えきれず重力崩壊を起こします。
重力崩壊の結果、中心部では陽子が電子を吸収して中性子となりますが、中性子たちは高い圧力下であたかも一つの原子核のようになり、原始中性子星が形成されます。
一方、より外側から落ちてきた物質は原始中性子星の表面にぶつかって跳ね返り、外向きの衝撃波を作ります。
この結果、外層は爆発的に吹き飛ばされることになります。
これが「鉄光分解・重力崩壊型超新星」です。

このとき生じたエネルギーのほとんどは、光(電磁波)ではなくニュートリノにより外に運び出されます。
また、このタイプの超新星爆発で当初の星の質量が大きかった場合には、原始中性子星の核力、縮退圧等では重力崩壊を阻止できず、重力崩壊が最後まで続いてブラックホールが形成されます。
つまり、重力崩壊型超新星爆発では、その結果として星があった場所に中性子星あるいはブラックホールのいずれかが形成されます。
質量が大きいために超新星爆発の規模が桁違いに大きいものは、極超新星(hypernova)と呼ばれます。
スーパーの上がハイパーなんですね(^^

2.もう一つのタイプの超新星爆発は、白色矮星が近接連星系をつくっている場合に起こります。
もともと太陽質量の8倍以下の中小質量星では、ヘリウム燃焼までは進むものの、中心部の温度上昇が不足するため燃焼が途中で止まり、水素とヘリウムからなる外層は星風により吹き飛ばされて惑星状星雲となり、残った中心部の燃え殻は炭素と酸素からなる白色矮星となります。
この白色矮星の質量は太陽程度です。
この白色矮星が単独で存在する星であれば話はここで終わりで、後はただ静かに冷えていくだけです。

しかし、宇宙には単独星よりも連星系をつくっている星の方が多いのです。
白色矮星と連星系をつくる相手の星は、もともとの質量がより小さくそのために進化がより遅いため、たいていの場合は赤色巨星段階にあります。
近接連星系で重力ポテンシャルが等しい面を連ねると2つの袋を1点でつなげた形、あるいはひょうたんのくびれ部分を1点につぶした形になります。
これを「ロッシュ・ローブ」といい、つなぎ目の1点を「ラグランジュ点」といいます。
2つの袋のそれぞれに白色矮星と赤色巨星が入っているわけですが、後者は膨れ上がって袋を満たし、余ったガスがつなぎ目から白色矮星側に流れ込みます。
このとき白色矮星にガスが降着する速度が速いと、チャンドラセカール限界質量に達してつぶれ始め中心で炭素に火がつきあとかたもなく爆発します。
これを「核爆発型超新星」または「炭素爆燃型超新星」と呼びます。
ただ、近接連星系を構成する白色矮星ならすべて超新星爆発を起こすというわけではなく、ガス降着の速度に依存するようです。

なお、以上で説明した仕組みとは別に、白色矮星どうしからなる連星が合体してこのタイプの超新星爆発を起こすという説もあります。

3.次に、以上の分類と観測結果との対応関係を紹介します。
超新星のスペクトルを調べたときに、水素の吸収線が観測されるものを II 型、観測されないものを I 型と呼びます。
I 型はさらに3つに細分され、ヘリウムがなくケイ素の吸収線が強いものを Ia 型、ヘリウムの吸収線が強いものを Ib 型、ヘリウムもケイ素も弱いものを Ic 型と呼びます。

水素のある II 型はタマネギ構造の重力崩壊型超新星、水素もヘリウムもない Ia 型はC+O白色矮星の核爆発型超新星と考えられます。
一方、Ib 型は大質量星が爆発前に何らかの機構で水素層を失ったもの、Ic 型は同じく水素層とその内側のヘリウム層を失ったもので、いずれも重力崩壊型の一種と考えられています。
したがって、超新星爆発は大きく分けて重力崩壊型の II 型、Ib 型、Ic 型と核爆発型の Ia 型の2種類に分類されます。

4.超新星の種類とその出現場所については、古い赤い星からなる楕円銀河では Ia 型超新星しか現れないのに対して、新しい星を含む渦巻銀河では II 型超新星も( Ib 型も Ic 型も)現れます。
これは II 型超新星が大質量星が急速に進化した最期の姿なのに対して、Ia 型超新星は連星系をなす白色矮星が爆発したものであり、もともとの星の誕生からの寿命と無関係だからです。

5.以上のように超新星には大きく分けて2種類ありますが、実は宇宙初期にはもう一つ別の種類の超新星があったと考えられています。
宇宙初期の頃は重元素(水素、ヘリウムより重い元素)が少なく、現在ではあり得ないような太陽質量の数百倍という巨大な星が生まれたと考えられています。
これは、重元素が少ないと放射がうまくいかないため、星の素となるガス雲がうまく冷えて収縮することができず、ガス雲の質量が今の星の場合よりずっと大きくないと収縮できないからなのです。
太陽質量の130倍くらいまでは重力崩壊型超新星となるのですが、同140~300倍では「電子・陽電子対生成型超新星」となり、木っ端微塵に砕け散り後に何も残しません。
これは、中心部においてガンマ線光子から電子と陽電子が対生成され、そのために圧力が急激に下がって重力崩壊するという機構で、あまり知られていないと思いますが第3の超新星といえるでしょう。
さらに太陽質量の300倍以上だと、再び重力崩壊型となり、あとには中間質量ブラックホールを残すとされます。
こうした宇宙初期の超新星については、今のところ理論的な推測に過ぎず、観測で確認されたわけではありません。


★ もともとの質量が太陽の8~10の星の最期は、ケースバイケースで白色矮星か重力崩壊型超新星かに運命が分かれるようです。

参考文献としては一つだけ挙げておきます。
参考文献:野本憲一編『元素はいかにつくられたか 超新星爆発と宇宙の化学進化』岩波書店

なお、日本天文学会の教科書シリーズの『恒星』が出たら書き直すかもしれません。


★★ △Q&A一覧:http://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/68743060.html

★★★ 2018年10月13日、一部修正。