さや侍(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2
2011年06月17日

さや侍(ネタバレ)

テーマ:新作映画(2011)
さや侍※シネマハスラーへのリンクを追加しました(8/3)

三角絞めでつかまえて-さや侍

2011/日本 上映時間80分
監督・脚本:松本人志
脚本協力:高須光聖、長谷川朝二、江間浩司、倉本美津留
出演:野見隆明、熊田聖亜、りょう、ROLLY、腹筋善之助、國村隼、伊武雅刀、板尾創路、柄本時生
(あらすじ)
ある出来事により、侍として戦うことをやめ、刀を捨てた野見勘十郎(野見隆明)。そんな父に対し、娘(熊田聖亜)は反発していた。2人は、あてもなく旅をしていたのだが、無断で脱藩した勘十郎には懸賞金がかけられており、とうとう捕まってしまう。しかし、奇人として世間では有名だった殿様から「30日の業」に成功したら、無罪にすると言われ……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




40点


※今回の記事は、映画とはまったく関係のない、つまらない妄想がダラダラと書かれているので、「さや侍」の感想が読みたくて来た人は他のブログを読んだ方が良いです。
※今回の記事は、「さや侍」が好きな人や松本人志さんのファンは高確率で不快になると思うので、読まない方が良いです。
※今回の記事は、「パンズ・ラビリンス」のネタバレにも触れているので注意です。


「松本人志監督が『さや侍』というタイトルの時代劇を撮る」と聞いた時、僕は「ホーク・ウォリアーがホーク軍団を引き連れてWJに参戦する」と聞いた時の長州力選手のように、「きたか」と思いましたよ。「今度はチャンバラ格闘アクションにチャレンジするつもりだな ( ̄ー ̄)ニヤッ」と。

「刀の鞘しか持たない侍がいた」とするならば、“あえて鞘しか持たなくなった”か、“鞘しか持てない状況になった”かのどちらかじゃないですか。“あえて鞘しか持たなくなった”と考えるなら、やっぱり“不殺思想”というか、「るろうに剣心」の実写版的な期待をしちゃいますよね(ちなみに僕は悠久山安慈派)。例えば! どこかの寂れた宿場町(庄内映画村あたり)で、2つの勢力がにらみ合って斬り合いを始めそうな時、フラリと鞘だけ持った優男が現れるワケですよ。「邪魔だ、どけ!」「てめぇ、何モンだ!」などのベタな怒号&「この侍、鞘しか持ってねーじゃねぇかw」的な嘲りを受ける中、ふとしたキッカケで戦闘状態になり、さや侍の“鞘を使ったケレン味溢れる殺陣”が展開!(叩くだけじゃなく、相手が突いてきた刀を自分の鞘に収めて防御したりする) それか「野良犬相手に表道具は用いぬ」と素手で撲殺するパターンでも良いかもしれませんな(って、不殺じゃないけど)。


藤木源之助様の素手での戦闘力を見たい方は、ぜひ「シグルイ」を読んでぇ!ヽ(`Д´)ノ
三角絞めでつかまえて-表道具


“鞘しか持てない状況になった”とすると、それもそれで面白いですよね。カポエイラが両手を鎖で繋がれた奴隷たちが編み出した格闘技だったように(若干、眉唾)、廃刀令により刀を捨てざるを得なくなった侍たちが編み出した“鞘のみを使う新たな武術”「鞘型(SAYA-KATA)」なんて設定はどうでしょうか(叩くだけじゃなく、相手が突いてきた刀を自分の鞘に収めて防御したりする…って、しつこいですな)。例えば! 西南戦争を生き残った5人の薩摩隼人(a.k.a.日本のサイヤ人)たちが示現流と清朝から伝わった棒術を組み合わせた「鞘型」をハードすぎる修行の末に修得(映画中盤、修行の成果を試すべく巨大なツキノワグマと戦闘した際に1人死亡)。憎き大久保利通を暗殺すべく東京に乗り込むも、そこにはすでに別の暗殺部隊がいてーー!? やべぇ、恐ろしく観たくなってきました… (;´Д`)ハァハァ


映画とはまったく関係ありませんが、有名なカポエイラの動画を貼っておきますね↓




こちらも映画とはまったく関係ありませんが、示現流の動画も貼っておきますね↓




な~んて期待を抱いてたんですが、全然そんな映画じゃなくて… (´・ω・`) って、まぁ、何の得もしない妄想はこのくらいにして、とりあえず映画の感想を書いておきますね。新宿ピカデリーで観たんですが、「惜しい!」と思いましたよ。話の流れを簡単に書くと…↓


鞘しか持ってない侍の野見は脱藩して娘とともに逃亡。賞金首として殺し屋に狙われていた
→多幸藩で捕まってしまう
→「若君(清水柊馬)を笑わせる」という“30日の業”をやらされる(成功=無罪放免、失敗=切腹)
→最初は父をバカにしていた娘も途中からネタ出しを手伝い、ネタの前に口上をするようになる
→ネタをやっているうちに若君も若干の反応を示し、殿様(國村隼)も野見を気に入っていく
→結局、“30日の業”が失敗に終わるも、殿様の温情により「切腹の直前までに笑わせればOK」とルール変更
→「適当な辞世の句を詠めば若君が笑ったことにする」みたいなムードを拒否して野見は切腹!
→途方に暮れる娘の前に托鉢僧(竹原和生)が登場。野見から託された手紙を読みながら歌う
→野見の墓の前にいる娘のところに若君が。野見もなんとなく登場
→時代が現代になっても野見の墓が残ってるシーンで終了



確かこんな感じだったかと。で、僕的には大好きなシーンがありまして…。それは最後の切腹! 出来レースを拒否して野見は切腹をするんですが、首を落とそうとする介錯人を止めて、切腹に使った短刀を“自分の鞘”に収めるシーンはかなりカッコ良かったです。「これがやりたかった!ヽ(`Д´)ノ」ってのがビンビン伝わってきましたよ。ここはもう一度観たいくらい気に入りました。

その後の竹原和生さんの歌もジーンとしましたね~。序盤から意味ありげに映ってたから、何をするのかと思いきや、まさかあそこで“歌”がくるとは! 近くの席では笑ってる人もいましたし、確かに朗読からいきなり歌になるのは変ではあるんですけど、僕は結構好きというか。親に先立たれてしまった娘が不憫というのもあって、ちょっと涙が出たくらいだったんです。

ただね、この2つのシーンは大好きなんですけど、他の部分が非常におかしなことになってまして。瞬間風速的にはグッときても、よくよく考えるとそんなに乗れなくなってくるから不思議な話ですな。僕的に大きな不満は2点。


①肝心なところが説明不足

すみません、僕は「働くおっさん人形」とか見てなくて、野見さんのことは全然知らなかったんですけど、彼のルックスや存在感は凄く良かったんですよ。で、この映画では、彼に具体的な内容を教えずにその場でいろいろ指導しながらやらせてたそうで、その方法もアリだとは思うんです。ただ、そのせいで、野見の心情や意志を描写してないから、最後、唐突に感動的なオチを用意されても違和感を感じちゃったんですよね。


一応、「働くおっさん人形」の動画を貼っておきますね↓




映画は野見が走ってくるシーンから始まるんですが、その時、野見は娘に構わずにダッシュして逃げてるじゃないですか。要は“娘よりも自分の命が大事な男”だったワケです。それが最後は“娘に武士の誇りを教えるために死ねる男”に成長しているのに、その変化を表すシーンや演技がまったくなくて説明不足だから、「なにいきなり娘思いの武士ヅラしてんの (゚Д゚)ハァ?」って思っちゃったというかそんな気がしたりしたんですけどそんなこともないのかなぁもしかしたら僕が見落としただけでちゃんと描かれていたのかもしれないね (・ε・)

あと、「切腹に使った短刀を“自分の鞘”に収めるシーン」自体は大好きなんですけど、野見が鞘しか持たなくなった理由が納得いかなくて。一応、「病気で奥さんが死んで…」と軽い説明はあるんですけど、「それだけなの!?∑(゚Д゚)」と。いや、単純に「死因が病気だろうと、奥さんを守れなかったんだから、そんな男が刀を持っていても仕方ない」的な解釈ができなくもないけど、それなら鞘ごと捨てるような…。もちろん「それでも野見は武士の誇りを捨てきれなくて、鞘だけは腰に差してた」ってことなんだろうけど、そこまで拘るなら、それこそ「封建社会のせいで奥さんが死んだ」とか、もう少し動機に肉付けをしてほしかったなぁ。なんか「短刀を自分の鞘に収めるシーン」ありきの設定という臭いがプンプンして萎えちゃったんですよね。


②要らないところが説明過多

逆に、説明的なシーンが多かったとも思いました。例えば、板尾創路さん演じる門番の倉之助が野見に縄跳びをさせて娘を挑発するシーンも「もう分かったから先に進んでくださいな」と思うくらいクドくて。終盤の切腹までの流れでも、殿様&門番&町人たちの“なぁなぁ感の醜さ”描写とか、野見が武士のプライドを傷つけられて怒ってる描写とか、娘の過去の発言が流れる演出自体は良いとしても、それがあまりに分かりやすい上に多いから、逆に「観客をバカだと思ってるのかな?」って思っちゃって (´・ω・`)

最後だって、野見のお墓に若君が来るのは別に良くて(なんで笑うようになったのかは分からないけど)。そこに野見が出てきて「首が~~~戻った」ってやるシーンもね、僕は結構好きだったりしたんですよ。ただ、その後に野見の姿が消えちゃたのは「野見は生き返ったワケじゃないんですよ~」という観客に対する野暮なエクスキューズっぽくて、僕的には台無しに感じちゃったり…。

殺し屋に頭を撃たれてもすぐ治ったりとか、1日で大掛かりな仕掛けを用意できたりとか、簡単に城に忍び込めたりとか、リアリティの設定基準が緩いのは、寓話的な話なんだし、僕的には全然良いんですよ。でも、だからこそ、最後に野見が生き返ったような幻想的な余韻を残して終わるのだって全然アリじゃないですか。オフェリアが姫になれたかどうかがボンヤリしてるからこそ、「パンズ・ラビリンス」は死ぬほど泣けるというかね。僕は変なところで余計な説明をされた感じがして醒めちゃったなぁ。


その他、「殺し屋3人組の必要性があまり感じられない」とか「あの位置のフスマ破りは若君から見えないだろ」とか「風車のシーンの安っぽさ」とか「屈辱に耐えて“生”を拾うことも全然立派だし、あの時代に幼い娘を1人で放置する方が酷くないか?」とか細かい文句もあるんですが…。一番、面倒くさく感じたのは、松本人志監督的にこの映画娘を持つ親としての自分を投影した作品であって、「現代まで野見のお墓が残った」のは「自分の作品はずっと残る」って意味だったんですかね? そう考えちゃうと、ちょっと辟易しちゃうような…('A`)

って、例によって恐ろしくグダグダな長文になっちゃって、すみませんm(_ _ )m 僕的には“30日の業”では笑えるところも多かったし(ミカンを顔につけたまま牢にいるシーンが良かった)、さっきも書きましたけど切腹と歌のシーンは大好きなので、本当に「惜しい!」と思ったんですよ。他の松本人志監督作と比較すると、「大日本人」「さや侍」>>>>>>>>>>「しんぼる」って感じでした。正直、興味がある人はDVDでも十分のような気がしないでもないですけど、そもそもこのブログは「マリア様がみてる」に高得点を付けたりさらにもう1回観に行ったり、もうそろそろ発売される「劇場版 マリア様がみてる 豪華版(ブルーレイ+DVD)」をしっかり予約していたりする残念なブログということで、僕が書いたことなんて気にしない方が良いですぞヘ(゚∀゚*)ノワラライフ!

宇多丸師匠の松本人志さんへの愛情が伝わってくる誠実な批評がアップされているので、チェックしてみてくださいな。




松本人志監督の第1作。オチの前まではそんなに嫌いじゃないです。
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松本人志監督の第2作。プロレスラーに異変が起きてからは大嫌いだったり…。
三角絞めでつかまえて-しんぼる
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未見なんですけど、僕的にはあまり合わない感じがします。
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