実効性のある取組を行うために
実効性のある取組を行うために、経営トップのコミットメントが様々な面で重要になっております。
その中で、先日ご紹介した取引慣行の改善という課題については、経営トップを巻き込んで実効性のある取組を進めていくことができなければ問題解決には進みません。現場レベルの議論では課題は色々と出てはくるのですが、結局それを解決するためには、経営トップがコミットして、強いリーダーシップを発揮しなければ、現場だけで取引慣行を改善していくというのはとても難しいです。
また、業界全体を通したITの導入についても同様のことが言えます。例えば、EDI(電子商取引)であったり、電子タグのような業界で共通化を進めなければ、その効果も半減してしまうようなITについてはことさらです。
ただ、こうした経営トップをコミットメントするためには、政府が強制するのではなく、いかにそうしたことがビジネスモデルとして重要であるかということを共通認識として作っていく必要があります。例えば、取引慣行改善やIT化が、みんなにとってWin-Winの関係になることをしっかりと実証したり根拠を持って説明することが重要であると思います。
社会が複雑化する中で、色々なことにコミットメントを求められる経営トップの重要性はこれからますます高まっていきそうです。わが国も世界に通用する経営リーダーの育成にますます力を入れていかなければなりません。
取引慣行の問題
またまた更新が滞っており申し訳ありません。遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。
さて、今年1番最初に取り上げたいのは、取引慣行の問題です。先日、繊維産業における取引慣行について伺う機会がありました。その内容を会話形式で示すと以下のような内容でした。
商社A「この生地100反欲しいんだけど。」
機屋B「了解です。注文ありがとうございます。」
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機屋B「100反できましたので、納品させてください。」
商社A「いやいや、あれは注文じゃなくて、独り言だから全部は買わないよ。でも、20反は欲しいから買うよ。」
機屋B「本当ですか・・・では、10万円になります・・・」
商社A「今手元にお金ないから手形決済ということでよろしく。」
機屋B「うちも手元に資金なくて、原材料費の支払いが・・・」
商社A「手元にお金がないから仕方ないじゃないか。」
機屋B「本当ですか・・・」
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帰りがけの機屋Bに商社Aのエントランスで男が声をかける。
商社A’「そこの機屋さん、その10万円の手形9万5千円で買うよ。」
機屋B「これ10万円の手形なのに・・・でも、仕方ないか・・・」
当然、商社Aと商社A’はグルです。前者の発注形態を「つぶやき・ささやき」。後者の決済形態を「歩引き」というそうです。 こういう取引慣行がまかり通っていたのも、繊維産業は工程ごとに企業の大小の差が大きいことや、発注を口頭でやっており、契約書がないといった理由があるとのことで、 こうした状況を改善するために、民間ベースでも精力的な取り組みがなされているようですが、まだまだ問題を根絶するのは至らないようです。
やはり日本の中小企業は付加価値の源泉でありますが、大企業との取引においてはどうしても不利な立場におかれてしまうという問題があります。しかし、こうした取引慣行の不透明さは、無駄な生産やそれに伴うコストの上昇につながることになります。むしろ、取引慣行を公正なものにするだけでも、日本の生産性が高まるのは確実でしょう。こうした問題は、素形材、広告、建築といった中小企業の多い産業には依然として多く見られるようです。
こうした取引慣行は契約自体が民間ベースでもあり、明らかな下請法違反、独占禁止法違反以外は、政府がなかなか関与できないという問題もあります。 しかし、こうした取引慣行の改善が無駄の削減につながれば、それが大企業にとっても利益になるということをベストプラクティスとして示し、広く公報したり、大企業を中心に下請法の遵守を訴えていくことにおいては、政府が大きな役割を果たすことが期待されていると言ってもいいのではないかと思います。
経済団体の抱える問題
日本の産業政策に対する民間の声を代表するのは、戦後ずっと経済団体が担ってきました。現在では、特に経団連こと日本経済団体連合会が有名です。こうした経済団体は政治家に対して大きな影響力を持っており、それに加えて、役所が経済団体に影響力を持ち、政治家が役所に対して色々と注文することによって、今日まで奇妙な三権分立が成立されてきてます。
全体的な議論はまた別に議論させていただくとして、もう少しミクロな経済団体について考えていきたいと思います。経団連を始めとした業種横断的な経済団体の下に業種別の団体があり、その下にさらに工程等に分かれたさらに小さい団体があるというのが、日本の団体構造になっています。
こうした団体は確かに地方の末端の声を拾い上げ、それを中央の政治家・役所まで伝えるという点では大きな役割を果たしてきました。しかし、現在においては、経済の実態のグローバル化が進んでいる一方で、明らかに時代遅れな構造になっていることは否定できません。若い経営者の中でも、団体に参加するということに対してプラスのイメージだけを持っている人は数少ないのではないでしょうか。
その結果として、団体の高齢化・硬直化は飛躍的に進み、機動力や柔軟性は著しく失われています。こうした団体構造を打破するためにも、経済の動きに敏感な若手を一層取り込みやすい団体(コミュニティ)を模索していく必要があるのではないでしょうか。
こうした問題の解決の1つのヒントとして、地域の学生との連携が考えられるのではないでしょうか。産学連携というと、どうしてもテクノロジーとかのイメージが強いですが、経営でもそういう連携は少しずつ広がりつつあります。さらに進んで経済団体の活動もそういう若い新鮮な人の力を借りることも一案だと思います。
なかなか戦後ずっと続いた構造を改革するのは難しいかもしれませんが、経済のグローバル化・国内の少子高齢化ということが生み出す危機感がこうした改革を進めてくれればと思います。
