飯のタネ
多少の国内回帰の流れもあるものの、基本的には日本企業の海外進出が活発だ。そのため、日本の企業が国内で生産し、それを輸出して外貨を稼ぐというモデルは過去のものになりつつある。そこで、新しい国としてのビジネスモデルを考える必要がある。それはアメリカのように移民を受け入れ、無理やりにでも成長を続けるか、イギリスのように金融立国として資本収支でやっていくのかといったものだ。
日本経済の長期的なあり方として最も好ましいのは、特許料や、ライセンス料、ロイヤリティなどを世界中から日本に還流し、資金を日本に集め、さらに新しい技術やブランドを開発するというモデルなのではないだろうか。つまり、他の国で代替できる労働ではなく、アイデアや知恵を世界に売ることで利益をあげていこうということである。
教育再生が今議論になっているが、日本の世界に対する強みを再度分析し、国として飯のタネをしっかりと認識することも重要である。経済的に悪化することで、治安が悪化するということもあるし、将来の日本経済の飯のタネを確保することは色々な分野にも好影響を与える。よって、国を運営する原資を確保するためにも、早急に将来の日本国全体のビジネスモデルを考えなくてはいけない。
企業減税と消費税増税(2)
お久しぶりです。
ここ2週間は仕事が忙しかったのと、スノボ行ったり、祖父母両親を連れて温泉に行ったりと、色々ありまして、更新が滞ってしまいました。すいません。
なんか、いきなり生活感あふれる記述で始まってしまいましたが、前回の続きです。というか、むしろ、今回の話だけで閉じる気もしますが。で、前回は減価償却制度が税の繰り延べでしかないということ、国と企業の国際競争力を考えると、税制は「国」の国際競争力に非常に大きな影響を与えるため、しっかりとしたビジョンをもって考えないといけないということを述べさせていただきました。今回は前回のさらに補足的な話です。それは税制が「国」の影響力に影響するという話とリンクするのですが、企業の利益は給料としてして労働者に、配当として株主に流れるということになります。したがって、法人税で税を徴収するか、所得税で税を徴収するか、消費税で税を徴収するかは、実は税の徴収基準の違いであって、負担する人の違いではありません。
つまり、100円ショップですべての品物が100円のお店で消費税が5%から10%になったとき、店長が英断をして、100円を維持することになれば、その分の5円ちょっとはその店(法人)の負担になります。消費税だから消費者の負担になるというのは税の名前からくる思い込みなのです。むしろ、法人税が日本に立地し(国際課税とか考え出すと複雑ではありますが)、利益を出している法人に課されるという点で、不平等なところがあるのに対して、消費税は日本で作った製品も海外で作った製品も同様の課税がされるという点では平等なのです。しかし、実際には企業から労働者や株主への所得の流れはあまり進んでおらず、企業はカネ余り状況になっており、そのことが企業減税への批判へとつながっています。これについては3つの問題が背景にあるのではないかと思います。
まず、1つ目は現在企業の投資姿勢が非常に保守的であることです。バブル崩壊後の不景気の間、金融機関は貸し渋りや貸し剥がしといった厳しい姿勢を企業に対してとっており、企業の資金的自由度は非常に低い状況にありました。その反動で企業は景気が良くなり、金融機関が企業に対する姿勢を改善させた現在でも、企業は極力自己資金で投資等を行おうとし、そのために利益を企業に多く溜め込むようになったのではないかと思います。
2つ目はまだまだ利益をあげている日本の産業が資本集約的な産業であり、まだまだ人間に起因する知的労働集約的な産業になっていないからではないでしょうか。ここで知的労働集約的な産業とは、労働量に着目し、代替可能性のある(誰でもできる仕事である労働集約的な仕事ではなく、人が生み出す付加価値(アイデア、デザイン、発明等)に着目し、代替可能性のない(その人しかできない)仕事を中心とする産業とします。資本集約的な産業の利益の源泉は設備投資であり、そのため、企業は企業段階で利益を設備投資に回すということになります。一方、知的労働集約的な産業の利益の源泉はアイデア等を生み出す労働者(人間)であり、それは給料の増額につながっていきます。
3つ目は株主への利益還元が少ないことの原因ですが、やはり企業は企業で働く人のものであるという意識が日本においては非常に強いことが原因ではないかと思います。部外者と思われている株主に対する企業の経営陣・労働者の配慮はまだまだ非常に弱く、それが配当の少なさにも出ているのではないでしょうか。
つまり、企業の余っているおカネを労働者や株主により流れるようにするためには、単純に言うと、より金融機関が企業に対して柔軟な姿勢を取り、企業の資金的不自由な意識を改革すること、そして、知的労働集約的な産業への脱皮を目指して、優秀な人材の採用や人材に対する教育の活発化を果たす必要があります。
さらに、企業内の意識の問題ですが、M&Aの活発化等でだんだんその意識も変わりつつあります。しかし、この意識については、メリットも存在していると思うので、なかなか難しいところです。少なくとも1つ言えるのは、企業は企業で働く人のものであるという意識の強い日本においては、株主も企業のことを投資対象であること以上に、勉強していく必要があるし、逆に労働者も実際の企業という枠組みの外にいると思っている株主を意識して仕事をしていくことが重要であるということです。つまり、株主と労働者の意思疎通を強めていくことが必要な気がします。米国では配当や株高で消費が活発化するように消費者も株主の側面を持ってますが、日本においても、その方向に進んでいくことは非常に好ましいのではないかと思います。
解決先についてはもう少し精査する必要がありそうですが、取り急ぎ仮説で。ご意見いただければ幸いです。
企業減税と消費税増税(1)
昨年の年末に与党の税制改正大綱がまとまりました。それを受けて、まもなく始まる通常国会において税法の改正が行われます。そこで、今回は税制改正について書かせていただきます。
今回の税制改正の目玉はなんといっても減価償却制度の見直しです。産業界の悲願であったこの見直しは約6000億円(初年度は4500億円)の減税となるとされています。その一方で、今年の秋には消費税増税の議論が開始されることになりそうとのことで、マスコミの間では企業に減税した分を消費税の増税に転嫁する、「企業優遇」の税制改正であるというように報道されています。しかし、それは正しいのでしょうか。2つの点で簡単にそういいきることはできないのではないかと思います。
まず1つ目の点とは、そもそも今回の減価償却制度の見直しが課税の繰り延べでしかない点です。償却可能限度額(設備を保有中にどこまで税務上の費用とすることができるか)が今まで95%だったのが、今回のでほぼ100%(残り1円まで)費用として計上できることになったのですが、これは今までは除却した際に計上していた5%を設備を使用している間に費用とできるだけに過ぎません。要は、今払うはずの税金を将来(といっても5年くらいですかね)払うようにしたというだけです(実は固定資産税の関係もあるのですが、これはまた別の機会で)。強いて言えば、その間の金利分は減税と言えるかもしれません。
そして、2つ目の点は、国際競争力の問題です。新聞でよく国際競争力という文字をよく見かけますが、これは非常に抽象的なものです。もう少し丁寧に言えば、「他の国の企業と比較して日本企業が優位性を持つ要素」とでも言えるでしょうか。しかし、この定義だと実は少し違うような気がします。この定義が示しているのは「企業」の国際競争力であり、「国」の国際競争力ではありません。新聞に書いてある国際競争力は国際競争力は当然「企業」のものであるという前提で書いてしまっているような気がします。
税制は当然政策の一部であり、国のインフラの一部です。確かに税制は企業の税引き後利益に大きく影響するので、税制改正によって「企業」の国際競争力が影響を受けるのは明らかです。その意味では今回の減価償却制度の見直しが企業への優遇政策であるという側面はあると思います。しかし、今回の税制改正で着目するべきは「国」の国際競争力への影響ではないかと思います。「国」の国際競争力を丁寧に定義するとすれば、「他の国と比較して日本国が企業の誘致に関して優位性を持つ要素」となると思います。
ここで、補足をさせていただくと、企業は個人よりも立地に関して自由度が高いということを前提にしています。つまり、財政学では地方自治体に対して住民が足による投票をするという話が出てきますが、国と国の間を考えた場合は、やはり企業の方が他国へ立地しやすいという前提で話をさせていただきます。
さて、その前提のもとで今回の税制改正は「国」の国際競争力にどのような影響を与えるのでしょうか。当然、企業への税制が少しなりとも有利となった(金利分でしうが)のですから、日本の「国」の国際競争力は強化されることになります。しかし、はっきり言えばこれが効果があるかないかはわかりません。ただし、この日本の「国」の国際競争力は日本に住む人にとっては想定より大きく影響することになります。
例としては、昨年末に決まったエルピーダメモリと台湾企業の合弁工場が一番イメージが沸きやすいと思います。これはなんと1兆6千億円の投資を行うという話なのですが、その理由のひとつとして上がっていたのが、台湾のハイテク企業に対する優遇税制です。これはまさに「国」の国際競争力で日本が台湾に負けたということです(もちろん税制以外の要素もありますが)。もし、この1兆6千億円が日本に投資されていれば、設備投資によってGDPは0.3%程度押し上げられることになります(土地等への投資はGDPに計上されないので簡単な試算ですが)。それだけではなく、その工場に雇われる人の雇用。その工場から上がってくる税収等を考えると、その影響は甚大です。
つまり、「国」の国際競争力の結果としての企業の誘致は、0か1かの世界なのです。誘致できればハッピー、誘致できなければアンハッピー。そういうシンプルな構図になっています。したがって、「国」の国際競争力に関しては、誘致すべき企業の種類等をしっかりとイメージし、日本政府がサービス業の精神をもって政策を組み立てていく必要があるのではないかと思います。向こうが望むものをイメージせずにやみくもにやるのは、あらゆる企業に対して中途半端になり、すべてから振られるという結果に陥りかねません。そういう意味では、日本企業が日本で生産するという大前提で政策を組み立ててきた日本政府にとっては、非常に苦手な領域な気がします。
少し、長くなってしまったので、続きは次回書かせていただきます。