ということで、10年前の2014年から発掘も復元もずいぶんと進んだようすの山形城をひと巡りして、石垣だけが残っている南門(二ノ丸南大手門)から入った霞城公園を、櫓が再建されていた東門(二ノ丸東大手門)から外へ(といっても、広大だった山形城の城外ではなくしてまだ三ノ丸なのですが)出ることに。

 

 

通り抜けながら「そうそう、ここであの映画のラストシーンが撮られたのだったっけ」と思い出すわけですが、それが『超高速!参勤交代』であったことは、10年前にも書きましたっけね。ちなみに二ノ丸濠のすぐ外側をJR奥羽本線(山形線)の線路が通っておりまして、濠に架かる橋は跨線橋の役割も果たしておるのですなあ。

 

 

と、霞城公園からとって返して、ホテルに預けた荷物をピックアップし駅へと向かうには南門から出た方が断然便利なところを、わざわざ東門から出たのは、橋を渡ってすぐの場所にある山形美術館を訪ねようと考えておったからでして。

 

 

いかにも山形県の「山」の字を姿かたちで表すような建物を微笑ましく眺めるつつも、実は「地域性と近代様式をマッチさせた多層民家風」のイメージであるとは、同館HPに教わったところでありますよ。

 

この美術館にはやはり10年前に立ち寄っておりまして、見事なフランス近代絵画コレクションに常設展示室で出くわし、「おお!」と思ったことが忘れられず、常々「いつかまた」と考えておったわけなのですね。吉野石膏という県内企業が寄託しているそのコレクションは見飽きることがなさそうですのでね。ロダン館のある静岡県立美術館やミレー館のある山梨県立美術館などとともに、侮れない地方美術館のひとつではありましょう。

 

てなことで再訪に及んだ山形美術館…なのですが、入口に近づいてみますと正面ガラス張りのエントランスホールと思しきところはしっかりとカーテンが閉め切られており、カーテンの陰で遠慮がちに見え隠れするのは、なんとまあ、「臨時休館」の掲示であったとは!…。

 

 

写真がぼやけているのは、思い掛けない休館に滂沱の涙で目が霞み(霞城だけに?)…てなこともでありませんけれど、予め通常の休館日は一般的な月曜定休と確認していた上で出かけた火曜日に遭遇したよもやの臨時休館。「納得いかんなあ」と思いつつも、閉まっていたは致し方なしながら、この時はすぐお隣にある最上義光歴史館の方を覗こうかという考えにも思い至らず(一度、覗いているのでいいんですけどね)、屋外展示の彫刻群をいくつか眺めまわったのでありましたよ。

 

 

こちらは、目ぢからのあるところとキュビスム的印象(実際はキュビスム作品ではありませんが)からピカソを想像してしまいましたけれど、ハンス・コックというドイツ作家の作品『ハモニアの顔』であると。北ドイツで活躍した作家で、ハンブルクの街なかにもいくつか作品が置かれてあるようですので、もしかしたら見かけていたのかも。ま、ハンブルクでは(いつものことながら)タブロー中心に見ていて、彫刻で気に掛けたのはバルラッハくらいでしたけれど。

 

昭和62年(1987年)に設置されたことを示す銘版には作家が「1920~ 西ドイツ生」と記されている。設置された2年後の1989年にベルリンの壁が崩壊するのですから、こんなところからぎゅっと歴史の記憶が蘇る思いを感じたものでありますよ。

 

 

でもって、今度は日本人作家の作品でして、地元山形出身・桜井祐一の「やすらい」。平櫛田中に師事したということですけれど、この作品は至っておだやか。いかにもなブロンズ彫刻に思えます。土地柄からか、なんとはなしさくらんぼを想起してしまいましたが、どうやら今年はさくらんぼが不作のようですなあ、余談ながら。余談ついでにいいますと、山形県内をふらふらしていて「色白の女性が多いなあ」という印象が。お隣の秋田は色白美人で知られますですが、元々は秋田と山形、併せて出羽国だったてなあたりと関係があるのかないのか、全くわかりませんけれど(笑)。

 

 

もう一つの作品は竹内正治の『のぞみ』…ということなのですが、(申し訳ないながら)作品自体よりも「?!」と目を引いたのはこれのすぐ脇に置かれたこちらだったのでありますよ。

 

 

あたかも墓碑銘でもあるかというように「四つのテスト」とありまして、

  1.  真実か どうか
  2.  みんなに 公平か
  3.  好意と友情を 深めるか
  4.  みんなのためになるか どうか

という四項目が記されてある。後付けで知ったことですが、紋章のようなものはロータリークラブの記章のようで。つまりは山形のロータリークラブで設置ということなのでしょうかね。それにしても、「ロータリークラブ」とはよく聞く名称ながら、「しかしてその実体は?」てなふうにも。予備知識が何もないだけに「フリーメーソン的な?」とか想像してしいますが…。

 

とまあ、入れず仕舞いの山形美術館を目の前にして、つらつらと好き勝手な想像に勤しんだわけですが、実は今回、別の美術館にも入れず仕舞いだったことがありまして。こちらは予め立ち前にはコロナ禍の煽りを喰らって閉館していた…ということが判明していたのですけれど、山寺後藤美術館、ここにも常々立ち寄りたいと思っていただけに残念至極。フランスのロココ絵画やバルビゾン派の作品などのコレクションは、この後いったいどうなってしまうのでありましょうか…。とまれ、こうしたことでもって、「常々行きたいと思っていた」なんつうことでなくして、「行きたいと思ったが旬」とばかりに動き出さないと気を逸すると思ったものなのでありましたよ。