さてイエーニッシュハウス
を後にしてバルラッハハウスに向かいましたけれど、
こちらは程なくしてそれらしき建物が見えてくる。
ということは、迷う心配も全くなしで安心、安心!なのでありました。
それにしても、へらべったい建物でありますね。
これはこれで斬新な…とは言えましょうけれど。
北ドイツに来るまではちいとも知らなかった彫刻家のエルンスト・バルラッハ(1870-1938)。
ですが、リューベックの聖カタリーネン教会
を始め、あちらこちらでその名を聞き及ぶことになり、
ともすると、ユーモラスな雰囲気さえ漂わすその特徴のある作品の数々には
俄かに関心が湧いてきたところなのでありました。
館内にはその名の通りにバルラッハ作品が多数展示されているのですけれど、
上の写真で入口脇に何やら色鮮やかなポスターが貼られておりましたとおり、
「リーバーマンからノルデまで 紙に描かれたドイツの印象主義」
てなふうな特別展が開催されていましたので、まずはこちらから先に見ることに。
「紙に描かれた」ということで、水彩作品が多かったように思いますが、
何とも素敵な小品が目白押しの展覧会でありましたですね。
こちらはハンブルク出身のエルンスト・アイトナーが1892年頃の街並みを描いた作品。
「Jungfernstieg」とありますから、内アルスター湖の湖岸あたりでしょうか。
水彩らしい淡さが色を柔らかく見せていて、尚色彩豊かさを失わない。
大都市ながらのんびりした感じでもあるハンブルクの様子は今にも通ずるような気がします。
お次はエッチングですけれど、レッサー・ウリ「雨のナッサー通りのプードルを連れた婦人」。
上の方に見える青い楕円は灯りの照り返しですので、本当は完全な単色。
ではありますが、「詩情豊かな」とはこういう作品であろうなと思ったりしたですよ。
と言う具合にどれもこれもが佳品といったこの特別展は
(照明を落とし気味であることから、これ以上の撮影は断念し)
図録を買って帰って反芻しようと思ったものですから、
いよいよバルラッハ作品との対面に及ぶことにしたわけです。
まずは木彫作品でありまして、左側が「再会」、右側が「復讐者」というもの。
ずいぶんと趣きの違う二つを並べてしまいましたですが、
いずれもバルラッハらしい(と知ったかぶりですが)ところなのではないかと。
「再会」からは「放蕩息子の帰還」を赦すような温かみ、ぬくもりが感じられる一方、
「復讐者」では瞬間を切り取ったような動きの表現がみられる。
いくつかの作品を見ていて、この二つの要素はいずれも
バルラッハの個性なのだろうと思ったのでありますよ。
この二つもまた、方や動きを方や温かさを感じるところでありますね。
左側は「父なる神」が「hovering」している場面だということでしたので、
「浮遊せる父なる神」とあてようかと思いましたが、どう見ても裾は落ちていないし、
「こりゃあ、明らかに飛んでる!」と。
右側の方は「歌う男」。
そのまんまですが、自分の歌に酔ってるような表情がいいですよね。
とまあ、これはほんの一部なわけですが、バルラッハ作品も堪能しての帰りがけ。
先ほどの特別展の図録を買ってと思い、クレジットカードを取りだしたところが、
どうやら受付の方々はどなたもカード決済を経験したことがないご様子。
「現金は?」と聞かれたですが、
もはや明日には帰ると言う段階ではもはや使い切り状態に入っており、
そのときは小銭くらいしか持っていなかったのですね。
(前に触れたようにホテルでもらったカードでもって、交通機関はフリーですし)
奥の事務室から別の人を呼んできたりして、
ああでもないこうでもないとカードリーダーに通して試すものの、結局のところだめ。
つまり、これぞと思った図録は手に入らずじまいということに。
「この期に及んでクレジットカードが使えないという状況か…」という不安もふつふつとわき起こり、
そうなると明日のホテル・チェックアウトにも大きな問題が。
素敵な絵を見たという満足感の反面、図録を入手できない残念さ、
それに加えてクレジットカードに関する不安を抱えつつ、
ハンブルク中心部への帰途についたのでありました…。