国立天文台の三鷹キャンパスで、ちょうど4D2Uドームシアターの向かいくらいでしょうか、森の中へと続く道がありまして、見学者向けの道標も立っており…。構内各所には「ハチに注意!」(スズメバチがいるのでしょうなあ)の看板があるものですから、いささか森の中へとむ見込むには臆するところがあったのですが、「ええい、ままよ」と。

 

 

まだかまだかと思いつつ進むも実際の距離はさほどではなく、精神的に遠さを感じただけだとは思いますが、行きついた先にはこのような看板が待っていたのでありましたよ。曰く「太陽塔望遠鏡(通称 アインシュタイン塔)」と。

 

 

木立の奥にうっすらと見えているのが、これまで見てきた「第一赤道儀室」、「天文台歴史館(大赤道儀室)」と同様、国登録有名文化財となっている「アインシュタイン塔」でして、「塔全体が望遠鏡の筒の役割している」のであるということなのですな。外観を眺めるのみで内部には入れないようですが、もそっと近づいてみましょう。

 

 

ちなみに、この建物が「アインシュタイン塔」とも呼ばれる謂われのほどは、「ドイツのポツダム天体物理観測所のアインシュタイン塔に由来」するのであるとか。説明にはこのように記されておりましたよ。

ドイツのアインシュタイン塔は、アインシュタインの一般相対性理論を太陽光の観測から検証する目的で建てられたものです。三鷹の太陽塔望遠鏡も同じ構造と機能を持っているため、アインシュタイン塔と呼ばれるようになりました。太陽塔望遠鏡では一般相対性理論の検証はできませんでしたが、黒点の磁場観測や太陽フレアの観測、太陽の自転の測定や太陽光スペクトルの研究などに使われ、成果をあげました。

基本的に観測という実用一点張りの建物なのですが、外壁の仕上げにスクラッチタイル(最も有名な使用例としては、フランク・ロイド・ライト設計による帝国ホテル旧本館でしょうか)を貼り込んであるあたり、当時としては最先端の科学に供する建物という意識が込められていたりするのかもですね。

 

 

そうした造形意匠へのこだわり(?)は別の建物にも見られるところでして、構内のちょうど中ほどに位置している「レプソルド子午儀室」(上の写真)、そのお隣の「ゴーチェ子午環室」(下の写真)などにもまた。いずれもやはり国登録有形文化財となっているそうな。

 

 

 

ですが、これのいったいどこに意匠を凝らしておると…?と思うところですが、言われて(解説板に説明されて)なるほどと思いましたのは「柱の頭部や入口のひさしには建設当時(1925年)に流行していた新しい造形芸術運動であるセセッションの流れを汲んだ縦筋に見える模様」があると。この部分でありますね。

 

縦縞模様はなるほどウィーン分離派やそれに先立つユーゲント・シュティールを思わせて、ふいとヴィースバーデン博物館を思い出したりもしたものです。ところで、「レプソルド子午儀室」の方は現在「子午儀資料館」となっておりまして、入口から覗く形で中に展示された子午儀の数々を見ることができるのでして、その中の目玉がかつてこの建物の名前にもなっていた「レプソルド子午儀」、これ単体で国指定重要文化財になっているということですのでね。

 

 

お隣の「ゴーチェ子午環室」に置かれてあるのはこちらの器材ですけれど、基本的には子午儀も子午環も「子午線に沿って、南北のみに回転する観測装置」とのこと。ただ、「大型の子午儀に、精密な目盛りが刻まれたリング(目盛環)を取り付けた」ものを特に子午環と呼ぶようなですな。

 

 

と、子午儀・子午環の展示室の近くには、特段の展示物があるでなし、外観のみを通りすがりに眺めるだけながら、もひとつ国登録有形文化財となっている建物がありましたですよ。かつては図書館として使われた建物ということですが、これもまた眺めやれば、スクラッチタイルの外壁になっておりましたな。

 

 

とまあ、国立天文台三鷹キャンパスの構内には歴史的建造物が数多残されているわけですけれど、さらにもひとつ、現在は全く天文台の仕事とは関係の無いことに使われている建物がありまして、そのあたりを次に見てまいろうと考えておりますです、はい。