…ということで、東京・三鷹の国立天文台に出かけて、やおら古墳の話になってしまいましたですが、やはり当然に天文学に思いを馳せるお話を。そも、入口を入ってすぐ左手に(見学者エリアとしては)どんづまったあたりに古墳があって…というその手前、同天文台三鷹キャンパスの中で最も古いという建物があるのですな。1921年(大正10年)に建設されて、今は国登録有形文化財となっているこちらの建物です。

 

 

いささか廃墟感を醸して、レトロSFチックさが濃厚なこの建物は「第一赤道儀室」ということで。赤道儀というのは(守衛所でもらった「見学ガイド」の受け売りですが)「天体の動き(日周運動)にあわせて星を追いかける(追尾する)ことができる架台のこと」だそうな。架台に望遠鏡などを載せて天体観測するのでしょう、なんと「電気なしで最長約1時間半の天体追尾が可能」とは「重錘式時計駆動」という仕組みによると。極めて簡単に言ってしまえば、鳩時計が錘でもって動くのと同じ機構なのでしょう。科学史の一端に思いを馳せたくなるところでもありますですね。

 

 

木造ドームに覆われた中には「20cm屈折望遠鏡」(右側の太い方)と「太陽写真儀」(左側の細く小さい方)が据えられて、1938年からはその後60年に及ぶ太陽の観測などに使われたそうでありますよ。三鷹の国立天文台といえば夙に太陽観測で知られておりますね…と、そのあたりはEテレ『ザ・バックヤード』でも先月やってましたっけね。

 

とまあ、そんな第一赤道儀室から敷地の奥へとまっすぐに延びる通路には「太陽系ウォーク」という呼び名が付けられておるのですな。見学ガイドに曰く「太陽系の距離を140億分の1、天体のサイズを14億分の1に縮めた展示」とありまして、まず始まりは「太陽」ということに。

 

 

これでサイズが14億分の1と言われてもピンときませんですが、この後に出てくるそれぞれの惑星の大きさを考えれば、比較対照で「ああ、こんなにも大きいのか」という感覚にはなりますね。また、惑星間の距離もこんな感じかと。水星、金星、地球、火星までは結構近いなという印象です。実際には、これを140憶倍した距離ですが…。

 

 

 

輪っか状の解説板の最上部には、それぞれの惑星の大きさが14億分の1のスケールで示されているのですけれど、このあたりの惑星ではもはや写真からでは大きさを見て取ることは不可能ですなあ。それだけ太陽が大きいのだということで。

 

で、この先さらに太陽系惑星の解説板が距離スケールに擬えた形で離れたところにあるわけですが、火星から木星、そしてそれ以降、何と遠いところにあることか。

 

 

 

その遠いところにある木星と土星は大きな惑星だけに14億分の1スケールでもはっきり形が分かりますな(といって、太陽には比ぶべくもないですが)。でも、遠くなれば大きくなるというわけでもないことはその後に続く天王星、海王星のことを考えれば、これもまた明らか。加えて、まだ分からないことが多いのか、あるいは単純に「太陽系ウォーク」と位置付けた通路の距離が足りなくなったか、両者はもはや一絡げにされてしまい…。

 

 

さらに、かつては太陽系で最も遠い惑星とされた冥王星がいつしか惑星のカテゴリーから外され、「準惑星」に格下げ?になってしまいましたけれど、この解説板によれば冥王星の大きさというのは地球の月よりも小さいのだそうな。天体観測が進んだ結果として、海王星の外側には(発見者の名を冠して)「エッジワース・カイパーベルト天体」と総称される小天体(冥王星もその一つ)が「円盤状に分布」していて、2015年までに見つかった数は1600個以上に及ぶとは。

 

ものの例えとして「星の数ほど…」とは、とにかく数が多いことを言いますですが、そうにもそれは無量大数状態でもありますなあ。観測技術が進んだことで、より遠くのようすが見えてくる一方で、さほど遠くないところにもまだまだざくざく見つかるものがある。ま、さほど遠くないといっても、太陽系ウォークを歩いただけでも海王星までの遠さが偲ばれる気がしたものではありますけれどね。