ゲーテ像
の後ろ側にあたる正面入口からヴィースバーデン博物館に入ると、
まずは小さめのホールになっており、雨模様のせいか、いくぶん暗め。
日が差し込んでおれば、天蓋ももそっと煌びやかに見えたのかも。
それにしても、鉄柵の模様といい、金箔(本物かは分かりませんが)のドームといい、
思い出すのはやはりユーゲント・シュティール、ウィーン分離派といったあたりかと。
とまれ、展示の方へと目を移していくことにいたします。
古い時代のものがから見ていきますと、当然にように出てくるのが宗教画でして、
イエスの受難
の場面などはそれこそ星の数ほどあるものと思いますが、
わざわざ描くのが茨の冠を被せる場面というのはあまり見たことがないような。
ちと色合いがへんてこになってますが、ルカ・ジョルダーノ(1634-1705)の作品です。
お次は旧約聖書からのワンシーンと思しきフランチェスコ・ソリメーナ(1657-1747)の一枚。
タイトルが英文では「Rachel taking leave」とありましたので、ラケル暇乞いのひと幕でしょうか。
神の啓示によってベツレヘムへ向かうことになった夫ヤコブに従って出発する場面とすれば、
中央で父の手をとり暇乞いするのがラケルで、右側で歩みだしている人物がヤコブかと。
旅の途次、ベニヤミンを産む際に命を落とすラケルのことは、後に新約聖書にも引用されるものですから、
そうしたことも含めて暗示的な旅立ちのシーンなのかもしれませんですね。
続いては趣きを変えて肖像画ですけれど、
肖像画大好きの英国からジョシュア・レノルズ(1723-1792)による作品。
あんまり触れたことがなかったですが、
このブログのプロフィール画像は実はこの画家の自画像でして、
それはこの画家の作品が大好きで…というのでなくして、
単にハンドルネームが「josh」だからという。
ま、どうでもいいことはともかく、
この「チョルモンディリー夫人の肖像」はさすがに肖像画の手練れであるレノルズらしい
おだやかな気品が感じられましたですよ。
お次はぐんと新しくなって、アルノルト・ベックリン(1827-1901)によるデッサンです。
タイトルは「Magna Mater」…ということになりますと、
先にマインツで見た古代ローマの聖殿 に祭られていたではないかと思い返すわけですが、
こうした絵姿になれば要するに大地母神であるのだなと分かりますですね。
もっとも海上への出現はともすると「ヴィーナスの誕生」かとも思ってしまうところですが。
なにしろ先にヘイルスホーフ美術館 でベックリンのヴィーナスを見てますし。
と言う具合にいろんな絵画作品を見て廻っていたのですけれど、
ついにはヴィースバーデン博物館が誇るべきコレクションのコーナーへと到達したのでして。
画家の名はアレクセイ・フォン・ヤウレンスキー(1965-1941)…とは訳知りな紹介ながら、
恥ずかしながらこれまで全く知らないでいた画家でありました。
ですが、そのヤウレンスキーの作品をこの博物館では多数所蔵しているのだそうでありますよ。
初めてながら一見したところ、カンディンスキー?、青騎士?といったことが思い浮かんできたのは
果たして「やっぱり!」でありまして、wikipediaの紹介文にはこんなふうに書かれておりました。
ロシア系ドイツ人の画家で、ドイツ表現主義を代表する人物の一人。ヴァシリー・カンディンスキーとも交友があり、20世紀初頭のミュンヘンにおける芸術運動であるミュンヘン新芸術家協会や青騎士にも参加して、生涯旺盛に制作に取り組んだ。
で、実際の作品に近寄ってみますと、こんな感じです。
右側などはキルヒナー
をおとなしくしたような(?)とも言えるような。
表現主義の作品には激しさがぶちまけられているふうなのも見受けますが、
ヤウレンスキーはここで見る限りは穏やかな分、落ち着いて見ていられるものでしたですね。
ちょっとだけ年代を遡るとこのような風景画もあり、後年との画風の違いで受ける印象は
ウィーンのレオポルト博物館で見た、アッター湖を描いたクリムト 作品の意外な感じに
近いかもしれませんですね。
そんなふうに興味をそそられたヤウレンスキーでしたので、帰りがけのミュージアムショップでは
ついヴィースバーデン博物館ヤウレンスキー・コレクションの図録を買ってしまったという。
とまれ、ヤウレンスキー・コレクションがヴィースバーデンにあるというのも
やはり世紀末芸術とこの土地の関わりなのでありましょうね。
最後にもう一枚だけ。カール・シュミット=ロットルフ(1884-1976)を。
大胆な色遣いがいかにも表現主義!ですけれど、ここにもやはり穏やかさがある。
これが1951年の作品だというのですね。
ここまで来ると歴史を振り返っているというよりは
同時代性の中で受け止めるような気もしてくるような。
建物のわりには(同居する自然史博物館に押されて?)小さめの印象ですけれど、
わざわざここを目指して行くかは別として、ついでに訪ねる分には損はなかろうと。
こうした言い方になるのも、実は全くと言っていいほど期待していなかったからなのですが、
同じく全く期待をしていなかったにも関わらず、「これは!」というところに
こののちすぐマインツに戻ってめぐり合うことになったのですが、そのお話を次に…。










