最初にたどりついたときにはがっちり閉まっていた鉄格子扉が開かれて、
ようやく入れることになりましたのが、ヘイルスホーフ美術館(Museum Heylshof)。

それにしても、14時開館とはどうしたことなのか…。


ヘイルスホーフ美術館の玄関


たまたまにもせよ、このほどの旅では初めての美術館詣でとなりますので、
どうしても期待が高まってしまう嫌いがあったわけですけれど、
入口の扉がこんなふうな装飾になっているのを見るにつけ、
主体はビーダーマイヤー系か思ったりするのでありました。


ヘイルスホーフ美術館の玄関扉


ところで期待が大きかった分、いささか「おやぁ」になったのは
かなり小ぢんまりとした美術館なのだな、実態は…ということ。
外見は豪壮な御屋敷風なんですが、たまたまなのか見られるのは一部分だけ。
一階のワン・フロアをぐるっと一回りしておしまいという感じ。


ですから、元は司教館だったらしい(なるほど大聖堂に隣接している)館そのものと
庭も含めて堪能するのが本来の味わい方なのかもしれませんですね。


後から「そうなのかも…」と思ったことで、
もしかすると重大な見落としになってしまったやもしれぬことなんですが、
皇帝カール5世とマルティン・ルター との歴史的対決の舞台がこの館であって、
その場所にマーキングされているてなことでもあるようで…。
(何せドイツ語のみのページで垣間見た程度ですので、確証はありませんが…)


とまれ、さしあたってはヘイル邸美術館と館名にその名のついた革製品で儲けた実業家、
コルネリウス・ヴィルヘルム・フォン・ヘイルのプライベート・コレクション、
ガラス器や磁器など含めて多岐わたる展示がありますが、
分けても(例によって)絵画作品を中心に見ていくことに。


「小ぢんまり」とは言いましたですが、「山椒は小粒で…」の部分はあるもので、
見始めてすぐ、受付のすぐ左手の展示室でやおら目に止まったのがこれです。


アルノルト・ベックリンのヴィーナス像(部分)


一見したところ古めの作品かなと思ったものの、

実はこれがアルノルト・ベックリン作のヴィーナスでありました。

かちっと描かれた「死の島」とは違って、もやっと感があるのも象徴主義らしくあらんかと。


そして、この美術館での最大の目玉はルーベンスではなかろうかと思うのですね。

ルーベンスと言えば、大きな美術館の壁面いっぱいの巨大画面に描かれる神話世界…

てなイメージもあろうかと思いますが、そうしたルーベンス工房の人海戦術による作品よりも、

おそらく本人がひとりで手掛けたであろう小品が実は見ものであるような。


そのことは上野の西洋美術館 で見ても、はたまたアントワープのルーベンス・ハウスでも

思うところですけれど、このヘイルスホーフでも同様でありました。


まずもって「十字架降架」という、ともすると至って悲嘆の極みを大きく描きだす題材を扱って、

実に速いタッチで仕上げた小品に「おっ!」と思いましたですが、もうひとつはこちら。


ルーベンスの聖母子?(部分)


聖母子だと思うのですけれどね。

どうもお決まりのあれこれから外れている気がしますですね。

ごくごく普通の母子に見えないこともない…ですが、

そうした肖像画と見るにはあまりに見る者をつかんで離さないのでありますよ。


工房の親方としてはもちろん、外交官としても多忙を極めたルーベンスですけれど、

自らがひとり絵筆をとって描くとこうなる。つはりは第一級の画家であったと改めて思うわけです。


と、ピックアップしたのはわずかなりとはいえ、

たとえ一作でも本物を目の当たりにしたときの感興は筆舌に尽くしがたい。

だもんで、毎度あちこちと美術館を訪ね回ってしまうのですね。空いているところ狙いで(笑)。


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