ヴィースバーデンという温泉保養地
に来ながらも
本格的な温浴施設を敬遠したのは故無しとはいえず…。
とりあえずは町の中心部あたりをぶらりぶらりと歩いてみることにしたのでありまして。
コッホブルンネンから目と鼻の先、
中央駅から続く大通りに面して実に立派な建物があるのですね。
もしかすると、ヴィースバーデンではその姿かたちを一番知られた建物ではないかと。
この建物が「Kurhaus(クアハウス)」と呼ばれているということでしたので、
てっきりここが温浴施設だと思っていたら、全くの大間違い。
温泉保養客のための娯楽施設であって、カジノあり、音楽ホールありてな具合。
さらにすぐお隣にはヘッセン州立劇場まであって。
これがまた実に立派な建物なのですなあ。
今でこそヘッセン州立ということですが、
先に触れましたようにかつてはプロイセン王国の直轄地とされていただけあって、
元々はドイツ皇帝ヴィルヘルム2世のために建てられたという。
これまで見てきたあれこれからしても、成り上がり新興国プロイセンの看板払拭には
とかく大袈裟な設えが必要だったのでありましょうね。
で、劇場前にはよく劇作家の像が建てられてあったりしますけれど、
このでの代表選手はフリードリヒ・フォン・シラーでありました。
「Storm und Drang」(疾風怒濤)期の作家でもあるわけですが、
あまり芳しくない空模様はそんなシラーの時代と妙にマッチするような気がしたものでありますよ。
大通り沿いのぶらりに続いて今度は裏道に入り込み、いわゆる旧市街の方へ。
まず迎えてくれたのは大通りを挟んでクアハウスを見やるほうに建てられた銅像です。
「Kaiser Friedrich Denkmal」(皇帝フリードリヒ記念碑)というものですが、
ここの皇帝は時代背景的にはフリードリヒ3世(プロイセン王でドイツ皇帝を兼ねた)でしょうか。
本来ここはシラー像があった場所ながら、
どうやらそれを台座の上から押しのけて皇帝フリードリヒの像が置かれたそうな。
まあ、今となってはですが、シラーにしてみれば劇場前にいる方が居心地良いことでありましょう。
取り敢えず皇帝陛下にはご挨拶だけ申し上げて奥へと向かっていきますと、
上へ上へという垂直のラインが印象的なマルクト教会が空へと伸び上がっています。
中央の塔の高さは98mで、ヴィスバーデンでは最高であるとのこと。
ですが、教会というよりはいささか事務的なビルといった感
無きにしもあらずのような気がしますですなあ。
マルクト教会のほぼお隣には新市庁舎が建っておりますが、
これもいい感じではあるもののさほどに目を奪う建物ではないような。
元は1887年にドイツ・ルネサンス様式で建てられたものが大戦で破壊されたのち、
ヴィースバーデン市のHPの記載によれは「質素な造りに再建」されたのだそうで。
とまれ、この辺りが旧市街の中心地なのでありましょうね。
折りしもあいにくと雨が降り出したものですから、かなり端折り気味になってますけれど。
旧市街から元の大通りに取って返し、雨宿りも兼ねて立ち寄ろうと向かったのが、
こちらの建物。ヴィースバーデン博物館であります。
器としては大きなものながら、その中には美術館と自然史博物館とが同居しているそうな。
そうした建物の目の前に鎮座しているのは、ゲーテ
なのですなあ。
多方面に及ぶ該博な知識を持っていたゲーテならではの場所なのやもしれませんが、
それにしてもこの半裸の姿は?
考えてみれば、ヴィースバーデンだけに
「ゲーテも風呂場で考えた…」てなことなのかもしれませんですね(思い付きですけど)。
ということでたどり着いたヴィースバーデン博物館、
中に入って美術作品を中心に見て廻ったというお話を次にしようと思っております。