ちょいと前に映画『ちはやふる』を見てから少々短歌づいて、「百人一首」の本(といっても、『ちはやふる』公式ガイドブック的なるものでしたが)を読んだり、町田市民文学館の「57577」展を覗きに行ったりしておりましたですが、このほどはちと趣きを変えて、こうしたものを。

 

 

映画『恋は五・七・五!』と言う一作。先に映画『レンタネコ』を見た折、ちと荻上直子監督作品を検索した際に発見し、「短歌もいいけど俳句もね」と思っておったわけで、ここでようやく。とは言いつつも、先ごろまでは(以前にも触れましたように)短歌=昔々の和歌=およそ(結構どろどろした)恋の歌ばかり…という意識が勝っており、その点、松尾芭蕉に代表される俳句はわびさびの世界、渋いよね、いいよねと、そんなふうに考えていたのですなあ。

 

さりながら、「いいよね」と思いつつも自ら実作に及ぶか…と言えば、その実、上のフライヤーにあるよう「俳句なんてジジイのうわ言、ババアのたわ言?!」とまでは言わないながら、確かにそんなふうな気も少々は。もっとも、いつしか年齢的には、そんな見方をされる俳句作りに見合うお年頃になってしまってはおりますが(笑)。

 

それはともかく、映画で取り上げられているのは「目指せ!俳句甲子園」というお話なのですな。正式名称を「全国高校俳句選手権大会」として毎年夏に正岡子規ゆかりの松山で開催される全国大会に向け、苦吟を展開するというわけでして。

 

まあ、野球漫画の『キャプテン』ではありませんけれど、根性で頑張れば全国制覇も夢ではないという、現実離れした(と言い切っては醒め過ぎ、あきらめ過ぎなのかもですが)部活もの(その点では『ちはやふる』もそうでしたな)が多くある中で、これもまたと思うところながら、そもそも「俳句なんてやりたくない…」(あるいは全く動機が異なるとか)という連中が集まって団体戦に臨むというのは、そうはない設定かもしれません。

 

で、その結果がどうなるのか…は映画を見てのお楽しみとしまして(ただし、さほどによくできた映画とは思いません。個人の意見です)、俳句の大会で勝ち負けをつける、その方法には「こんなふうであるか…」と思ったのですなあ。5人一組のチームで、両チームそれぞれにひとりずつ自作の句を詠み上げ、都度審査員が勝敗を決し、先に3勝した方のチームが勝ちとなるのですが、ユニークであるなと思いましたのはひとりずつ詠み上げるごと、相手チームとの間で質疑応答の時間が設けられている点でありまして。

 

まあ、たったの十七文字で表現するには、「この句はこういう意味なのですよ」と語りたくもなりましょうし、そうでなくとも「どういうこと?」と尋ねてみなければ真意を量り兼ねることもありましょう。となれば、質疑応答の時間は有効とも思え、映画の中では質疑応答の良し悪し?が勝敗を左右するところもあったやに見受けられたところなのですね。

 

確かに俳句は十七文字、短歌では三十一文字、この短い言葉でもって深淵なる世界を表現し、それこそが真髄と考えれば、含意やダブルミーニングなどはむしろ当たり前なのかもしれませんですね。ただ、個人的にはストレートには短い言葉を短い言葉のままに受け止めてなお、「うむうむ、ふ~む」と頷けるような一句、一首に惹かれるものですから、どうも作為的、技巧的に過ぎるのではないか…と思ったりもしたものです。

 

ところで、映画『ちはやふる』は短歌に関わるとは言っても、あくまで競技かるたの世界であって、歌を作るものではなかったわけですが、俳句甲子園よろしく短歌には短歌甲子園なる作歌を競う大会もあるようですな。こうしたところから、明日の俳人、歌人は誕生してくるのでありましょうか。気になるところではありますね。