お見舞い考
昨日なぜかこのことが思い出されて仕方なくなったのでお見舞いのことを書こうと思うあくまで夫の場合に限ってはということで****夫は病気のことを誰にも知らせなかった親しかった友だち親戚誰にもそれが夫の強い希望だったなのにどこからどうやって聞きつけたのか最期に近いある日友人の一人が奥さんとともにお見舞いに来たその日私が病室に着くと「○○さんが来てしまった」と夫は苦痛に満ちた顔で言った明るく元気だった夫は病気でやせ細り声も出せないほど弱っている姿をかつての仲間には見られたくなかった見せたくなかったのだと思う私は病院と相談して面会制限の札をかけてもらうことにした葬儀では長男が挨拶をした参列してくださった人たちはみんないったい何があったのかと驚いていたと思う長男は病気の経過などを簡単に説明し父はみなさんに心配をかけたくない気持ちがあってだれにもお知らせをしなかった元気になってから「実は……」と明かすつもりでいたからという趣旨のことを話したそうしたら、例のご夫婦が私のところに来てそんな気持だったとは知らず申し訳ないことをしたと奥さまが謝罪されたそのとき自分がなんと答えたのか覚えていないそれが、夕べこの一連の出来事がよみがえった正直にいえば私は今もあのご夫婦がゆるせない夫の気持を踏みにじったことがゆるせないあの日の辛そうな夫の顔が忘れられない実は、もう一つ、全くの別件でその人(夫さんの方)の人格を疑ったことがあったが、それはここに書くことができない向こうの世界にいる夫はそんなこと、今や少しも気にしていないに決まってるのにゆるせないのは私の逆恨みかもしれないのだけれど世の中には最期には会いたい人に会って今までのお礼を言ってさよならをしたいと考える人もたくさんいると思うそれも一つの見事な最期の迎え方であろうと思っている