揺れる木洩れ陽を見たの
あとあなたに逢えれば
もうひと足早い夏

 

レモネードの夏 松田聖子 1982年

人気が高いシングルB面曲

いい曲だけど、B面曲だったので、

発売当時はそれほど反響はなかった

と記憶します。
それは「制服」も同じ。
CM曲だった「Romance」の方が
当時よっぽど知られていた印象です。

B面曲で初めてアルバムに収録されたのが
大きかったかな。
当時、シングルB面、アルバム曲どちらも
TV、ラジオでほとんど流れなかったけど
レンタルレコード店でアルバムを借りて
この曲を知る人が増えたと思います。

後に若松プロデューサーはこう言っています。
「新曲を待つファンのみなさんの気持ちを考えて
シングルB面はアルバムに入れていなかったのだが
この曲はフレッシュな曲だったため収録している」


正直に感想を言いますね。

ハァ? なにそれ? 意味不明。
今までのB面もフレッシュだったでしょ。
シングルを買い続けてきたファンからすれば、
逆にアルバム曲を1曲損したくらいなのに
その雑な説明はありえないよ…

さて、気分を変えて続けます。

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作詞 松本隆、作曲 呉田軽穂(松任谷由実)

基本的にユーミンの提供曲は"曲先"。
ユーミンが先に作ったメロディーに
松本隆が詞をのせる形です。
今回、松本隆ちょっと仕掛けているようです。

冒頭からサビ、

冷えたレモネード
白いカフェーから
揺れる木洩れ陽を見たの
あとあなたに逢えれば
もうひと足早い夏


これだけなら、どう聴いてもラブソング。

1番の冒頭で、

樹にもたれた貸自転車
コテージから光を縫って来た


ここまで明るいイメージと思ってたら

想い出には縛られない
もう恋などする気も無い私

少し淋しげな深い青空

えぇーっ、なんか不穏な雰囲気が漂い、

最後の2番で、

時が消した胸の痛み
忘れるのに一年かかったわ

逢いたいのは未練じゃなく
サヨナラって涼しく言うためよ


爆弾発言大どんでん返し

松本隆「してやったり」という構成ですね。

今は私も20才(はたち)

この歌詞の通り、当時聖子も20才になったとこ。
松本隆、これも狙ってますね。

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けれど歌詞には謎もたくさん。

こんな話を何故、避暑地で?
彼女が彼を呼び出したの?
(だったら相当メンドクサイ女)

いえいえ、彼女が
そんなメンドクサイ女の訳がありません。
僕はそう信じています。

きっと偶然、
昔別れた彼から電話があって
彼から、久しぶりに会えないかって
誘われたんです。

たぶん「やり直したい」

そんな感じです。

アンビバレントな気持ちの彼女。
彼への気持ちの整理はついているものの
会うのは何故か少しうれしそう。

彼女は否定しているけど
彼への思いはまだ僅かに
残っているんじゃないでしょうか。

彼と会って
自分の本当の気持ちを
もう一度だけ確かめたい。
やっぱりサヨナラってことになるかも
知れないけれど。

本当は彼女はそう思っているのでは
ないでしょうか。

冷えたレモネード
薄いスライスを
噛めばせつなさが走る


冷たくて、甘くて、ちょっと酸っぱい
レモネード。彼との思い出のよう。

レモネードの夏は、
彼との思い出に区切りをつける夏。

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「レモネードの夏」は
9thシングル「渚のバルコニー」B面曲。
1982年4月21日リリース。

作詞 松本隆、作曲 呉田軽穂、編曲 新川博 

初めてアルバムに収録されたシングルB面曲で、
1982年5月21日リリースの5thアルバム
「Pineapple」に収録されました。

2015年6月24日にリリースされた
松本隆の作詞家生活45周年記念
トリビュート・カバーアルバム
「風街であひませう」では、
中川翔子が

「レモネードの夏」を朗読しています。

中川翔子が松本隆にこの曲の避暑地について
聞いたところ「やはり軽井沢のことみたい」
とのことです。

"揺れる木洩れ陽"
"光を縫って来た"
"深い青空が肩に降り注ぐ"


避暑地の初夏の光が、
様々な形で表現されていて印象的な曲です。

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以下は過去記事です。

聖子の夏の曲