今月、10日・11日に開催された「アクティングメソッド・フェス」。
「世界でスタンダードに学ばれるアクティングメソッドの見本市」というテーマのもと、1つの台本を異なる演技メソッドでアプローチするという、とても面白い内容のワークショップでした
ご参加された皆さま、あらためまして、ありがとうございました!!
この中で、僕は、"スタニスラフスキー・システム" によるシーンスタディの講師を担当。
「目的に向かって行動する」という、システムの中軸となるキーワードのもと、主に台本読解部分に触れました。
1つの土台と、そこから発展した3つの演技メソッド
……さて。
このフェスで取り扱われた演技メソッドは、以下の4種類。
①スタニスラフスキー・システム
②ストラスバーグ・メソッド
③マイズナーテクニック
④マイケルチェーホフテクニック
これらのメソッドはすべて、「役を生きる」ことの実現を可能にした、"リアリズム演技" の手法です。
その中でも、すべての土台は①の "スタニスラフスキー・システム" という俳優トレーニング法であり、そこから②〜④のメソッドが発展・派生をして、それぞれの特徴的なアプローチが形成されてきました。
すべてはここから始まったのです。
▲このブログにも度々ご登場いただいている、コンスタンチン・スタニスラフスキーさん。
発展、派生したメソッドとして、まずは②の "ストラスバーグ・メソッド"。
映画が好きな方なら必ず一度は聞いたことがあるであろう、いわゆる "メソッド演技法(Method acting)" のことですね。
スタニスラフスキーの "システム" をもとに、リー・ストラスバーグという人がまとめ上げた方法。
ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランド、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノなど、特に20世紀中盤から後半にかけて、多くのハリウッド・スターたちも学び、実践してきました。
とっても平たく言えば、「俳優自身(の人生)を使った演技メソッド」であり、特にそこから発露される「感情」にフォーカスされた方法、といったイメージです。
ちなみに。
ストラスバーグによる "メソッド演技法" は、 "Method" と、最初の文字が大文字になります。
これは、彼が開発した方法という、固有名詞の扱いになるからです。
つまり、小文字で "method" と始まっていたら、一般的な「方法」という意味ですが、"Method" 表記なら、ストラスバーグの方法を指します。
▲『ゴッドファーザー PART II』に出演中の、リー・ストラスバーグさん。
マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロら、『ゴッドファーザー』シリーズのキャストたちに演技を教えた張本人のご出演だったため、フランシス・フォード・コッポラ監督は「この人(ストラスバーグ)にだけはダメ出しできない」と怯んでいたそう……。
③の "マイズナーテクニック" は、アメリカの演技講師サンフォード・マイズナーによる手法。
こちらもストラスバーグと同様、アメリカに渡ったスタニスラフスキー・システムをもとに創られています。
この方法論の基礎訓練「レペテーション」(repetition=繰り返し)は、近年、日本国内でも数多くのワークショップで実施されられるようになりました。
特徴としては、トレーニングの主軸が「人(相手役)との交流」にあること。
構えず、相手に集中し、受け入れる。
刻一刻と変化する相手に反応し、本能的に応じて、自分も変化し続ける。
この「相手を受け入れ、反応する」手法は、最近ではインプロ(即興)演技のトレーニングとしても取り入れられていますね。
▲サンフォード・マイズナーさん。
……なんか寒そう。どこにいるのかな?
そして、④の "マイケルチェーホフテクニック"。
これを創り上げたマイケル・チェーホフは、元々はロシアのモスクワ芸術座出身。
つまり、スタニスラフスキーの直系の弟子であり、かの作家アントン・チェーホフ(『かもめ』『ワーニャ伯父さん』など)の甥に当たる人物でもあります。
アメリカの演技講師が発展させた②、③は「精神性」のウェイトが非常に高いのに対し、マイケル・チェーホフによるその手法は「身体性」を重視した技法。
「俳優は身体で想像する」という彼の言葉が、そのテクニックの特徴を物語っていますね。
▲マイケル・チェーホフさん。イケメンですね。
ロシアで生まれた彼は、亡命し、アメリカに辿り着いて、最終的にはそこで演技の教えを広めました。
のちに、米アカデミー助演男優賞を受賞。
……20世紀の訪れとともに開発が始まった、リアリズム演技の俳優トレーニング法。
こうして見てくると、その顔ぶれは、ロシアとアメリカの人たちばかりですね。
でも、スタニスラフスキーによる "システム" がロシアからアメリカに渡ったのと同じ頃、1920年代には、イギリスにもその方法論は上陸しており。
以降、イギリスの俳優トレーニングでも "システム" が土台となっています。
ロシアで初めて体系化され、まとめ上げられたリアリズム演技の俳優トレーニング法=システムは、映画大国アメリカと、演劇大国イギリスに渡り。
さらに世界各国へと広がってゆき、今や世界のスタンダードとなっているわけですね。
お知らせ!!
さてさて。
ここで、僕の演技ワークショップ "EQ-LAB" からのお知らせです。
これまで、3ヶ月ワークショップは毎週火・金曜に開催しておりましたが。
来期、10月からは、木曜クラスが増設となります!!
さらに。
その木曜クラスの1つとして、マイズナー・テクニック(前述した演技メソッドの③番)をお伝えする「レペクラス」が新しくスタートします!!
こちらのクラス。
「レペクラス」と名付けさせていただきましたが、ネーミングについてはあんまり気にしないでくださいね。
"レペテーション=繰り返し" の基礎訓練を縮めて「レペ」なんて言ったりするのですが、クラスの内容自体はレペテーションだけに留まらず、そこから会話へと発展させ、台本のセリフへと応用していきます。
(※レペクラスは「ベーシック クラス」を1期以上受講されている方のみが参加できます。)
3ヶ月ワークショップ、来期は10月からスタート。
募集開始は9月中旬を予定しています。
詳細は、こちら!!👇
なお、募集開始の際には、LINE公式アカウントで通知をお届けします。
ぜひ、ご登録くださいね👇
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