明日(6/15)、受講生募集開始です!!👇
7月〜9月期のベーシック・クラスは……
スタニスラフスキー・システムをはじめとしたリアリズム演技でもっとも重要な「五感」のトレーニングからスタートします。
いくら一生懸命に役のことを考えたって、そこに「五感」を通した感覚が備わっていなくては意味がありません。
理詰めで想像を膨らませたところで、それは俳優自身を「駆り立てるもの」にはならないのです。
役の準備段階において、「五感」が伴わない想像、いわゆる「アタマ」で考えてしまっているケースは非常に多いんですね。
頑張って役の過去やバックグラウンドをあれこれ作ってるのに、演技に活かされていない。
そういう時は、一度、ココを疑ってみてください。
その想像は、あなたの感情を本当に「駆り立て」ますか?
それを想像した時、胸がキュッと締め付けられたり、背中がゾクッとしたり、お腹のあたりがソワソワと落ち着かなくなったりするでしょうか?
つまり、その想像が他人事ではなく「自分事」として感じられているか? が重要なんですね。
台本に書かれた文字に命を吹き込むのは、こうした俳優の五感からくる「体感」です。
これ無くして、行動へと駆り立てる「衝動」も、湧き上がる「感情」も手に入れることはできません。
この体感にアクセスするには、「ディテール」を想像することが重要です。
想像の対象を、細かく、具体的に想像するのです。
たとえば、これから大好きな人とデートなのに「服が汚れてしまった」という場面。
この「デート」という目的に対し、「服が汚れた」という問題を、俳優はどうやって自分事として手に入れれば良いでしょう?
ただ「汚れた」ということだけでは、「これからデートなのに……」というショックや苛立ちを実感として持つのは難しいのではないでしょうか?
……それでは、この「汚れ」を、具体的に想像してみましょう。
あなたは今、白いシャツを着ています。
デートに備えてしっかりアイロンをかけた、パリッと眩しいくらいのキレイな白シャツです。
ここに、スパゲッティのミートソースが飛び跳ねてしまったら??
たったこれだけのディテールですが、少しでも「うわ……」という感覚を具体的に感じることができたのではないでしょうか。
別の例でもやってみましょう。
たとえば、集合住宅にある共同の「ゴミ捨て場」。
住人たちのゴミ捨てマナーが乱れているせいなのか……とにかく、このゴミ捨て場があまりに「汚い」ため、あなたは不動産会社に苦情を訴えることにしました。
さぁ、想像してみましょう。
今、そのゴミ捨て場に何が見えますか?
食べ終わったコンビニ弁当が入った、ビニール袋でしょうか?
袋の中に汁がこぼれ、結び目からは割り箸が飛び出ています。
それとも、バナナの皮に無数のアリが群がっている光景でしょうか?
数えきれないほどのアリが、ウヨウヨと蠢いています。
あるいは、ネズミの死骸が転がってるかもしれません……。
朝になると、それをカラスがつついているかもしれません……。
……いかがですか?
あなた自身の中に、汚れたゴミ捨て場への「体感」が具体的に湧き上がりましたか?
「嫌悪」や「寒気」といった感情や、心の中の衝動を本当に感じたでしょうか?
「臭い」を感じた方もいらっしゃったかもしれません。
ちょっと、気分が悪くなってしまいましたね💦
では、気持ちを切り替えましょう!!
あなたが「素晴らしい」と思うものを、できるだけ具体的に想像してみてください。
花にとまった、小さな蝶。
初夏の砂浜に落ちている、7色に輝く貝殻。
デパートのショーケースの中に並べられた、ダイヤモンドの指輪。
ペットの犬の、クンクン動く湿った鼻先。
大好きな人の、くちびる。
……どうでしょう。
こうした、小さくて具体的なディテールに目を向けると、そこから何らかの「体感」を手に入れることができ。
同時に、先ほどの気分の悪い光景はアタマから離れ、心の中の状態が変化したのではないでしょうか。
そして、どんなことに対して「素晴らしい」と感じられるかは、人によって違います。
僕は犬が好きなので、犬の鼻を思い浮かべただけでココロが癒されますけれど。
人によっては「怖い」と感じるかもしれませんよね。
どんなディテールを想像すれば、「自分という俳優」の心を刺激することができるのか。
ここに、一般的な正解はありません。
あなたが本当に体感を手に入れ、心が動けば、それがあなたにとっての正解です。
こればかりは、演出家も、演技講師も、その正解を知らないんです。
なぜなら、「あなた」ではないから……。
自分の心のことは、自分にしか分かりません。
もちろん、演出家や演技講師も、俳優を傷つけないように配慮したり、心が高揚するように誘導することは大切です。
しかし最終的には、あなたの心は、あなた自身が管理しなくてはいけないんですね。
これが、俳優自身の重大な責任でもあります。
まず必要な、五感のトレーニング。
それによって、自分自身の心を管理し、コントロールすることを知るのです。
それができていなければ、役の世界に没頭することも、台本のシーンをリアルに演じることも困難です。
より良い演技とは?
3ヶ月ワークショップでは、技術力だけでなく、俳優に必要な「考え方」や「論理」もお伝えしています。
先日のベーシック・クラスでは、演技を4つのパターンに分類し、「どれが良い演技で、どれが良くないのか」ということのひとつの考え方を、序列をつけてご紹介しました。
1番良い演技は、見ていて「分かるし、信じられる」演技。
2番目は、見ていて「分からないけれど、信じられる」演技。
3番目は、見ていて「分かるけど、信じられない」演技。
最下位は、見ていて「分からないし、信じられない」演技。
「分かる」演技とは、たとえばキャラクターが「今、相手に対して怒っている」「悲しい状況にいる」といったことなどが、観ている人にもカタチとして分かりやすく表現されている演技のことだと思ってください。
一方、「信じられる」演技とは。
俳優ではなく、その役の人物がまるでそこに本当に存在しているかのように、観客が錯覚させられる演技です。
もちろん、「見ていてもよく分かるし、なおかつその人物が本当に存在していると信じられる」演技が最高なのは言うまでもありません。
でも、ここで注目していただきたいのは、2番目と3番目。
俳優が手に入れるべきは、信じられないけど「分かる」演技ではなく、たとえよく分からなくても「信じられることが大事」だということです。
「分かる」演技ばかりを追い求めると、それは、演出家や観客に媚びた、説明的な演技(「表示」の演技)に陥る危険があります。
そうした演技をする俳優は、相手役や劇空間との繋がりを失っていく。
結果、劇世界の中に存在できなくなってしまうのです。
それよりも。
この人が何を考えているのか、それはよく分からない。
でも、とにかくその人物がそこに「存在する」ことは、とても信じられる。
俳優が相手役としっかり繋がり、劇空間と繋がり。
そして、観客への意識が消えている状態(スタニスラフスキーはこれを「観客の前の孤独」と言いました)。
こうして俳優は、役として本当に「存在する」ことができるようになるのです。
……ところが、問題なことに。
「信じられる演技」が蔑ろになり、「分かる演技」ばかりを追い求めてしまっている俳優は、後を絶ちません。
その理由のひとつに、俳優が「他人からの評価」を気にしてしまうから、ということが考えられます。
演出家や講師、観客からの評価、仕事の獲得。
俳優だって人間ですから、そうしたことが気になるのはごく自然なことです。
しかし、そうしたことを過剰に気にしてしまったり、自分自身をきちんとコントロールできていないと。
俳優はやがて、自分が作ってきた役や感情を「分かってもらおう」とし始めます。
その結果、「分かる演技」へと傾いてゆき、やがて俳優の演技は「信じられない」ものになるのです。
こうなってくると。
俳優自身も演技を「楽しめない」という、最悪な状態に陥ります……。
五感の訓練から、相手との交流へ
あらためて。
「五感」への集中のトレーニングは、こうした、俳優にとって非常に重要なマインドセットも整えることができます。
最初はとても単純なエクササイズからスタートしていきますが、こうしたシンプルな訓練こそ、実は奥が深く、とても幅広い重要性を持っているものなのですね。
そこからレッスンは、相手と交流していくトレーニング、そしてマイズナー・テクニックの「レペテーション」へと入っていきます。
スタニスラフスキー・システムとマイズナー・テクニックを中心に、僕が実際に俳優活動を通して検証してきた「使える」演技メソッドをお伝えしています。
ぜひ、ご参加ください。
皆様とお会いできること、心より楽しみにしています!!
明日(6/15)20時、受講生募集開始!!👇
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