8月後半に劇場鑑賞の作品にたどり着きました。鑑賞日は異なりますが、いずれも伏見ミリオン座での鑑賞です。1本目の映画『ぼくの家族と祖国の戦争』は、第二次世界大戦末期にドイツから20万人以上もの難民がデンマークに押し寄せた事実をもとに、極限状態に置かれながらも信念を貫こうとする家族の姿を感動的に描いた作品です。
2本目の映画『エターナルメモリー』は、アルツハイマーで記憶を失っていくジャーナリストの男性と彼を支える妻、その愛と癒しに満ちた日々を記録した、チリ発のドキュメンタリー作品です。監督は『83歳のやさしいスパイ』のマイテ・アルベルディ。劇場は伏見ミリオン座(シニア会員1,200円と、10ポイント獲得の無料鑑賞)。
以下は映画『ぼくの家族と祖国の戦争』公式サイトに記載の紹介ストーリー(一部)です。
1945年4月、デンマークの市民大学。学長ヤコブ(ピルウ・アスベック)が、現地のドイツ軍司令官から思いがけない命令を下される。ドイツから押し寄せてくる大勢の難民を学校に受け入れろというのだ。想定をはるかに超えた500人以上の難民を体育館に収容したヤコブは、すぐさま重大な問題に直面する。
それは多くの子供を含む難民が飢えに苦しみ、感染症の蔓延によって次々と命を落としていくという、あまりにも残酷な現実。難民の苦境を見かねたヤコブと妻のリス(カトリーヌ・グライス=ローゼンタール)は救いの手を差しのべるが、それは同胞たちから裏切り者の烙印を押されかねない振る舞いだった。――
舞台は1945年、ドイツによる占領末期のデンマーク。市民大学の学長ヤコブは、敗色濃厚となったドイツから逃れてきた大勢のドイツ人難民を学校に受け入れるように命じられる。ドイツ人を助ければ周囲から裏切り者と見なされて全てを失う可能性があるが、救いの手を差し伸べなければ多くの難民が飢えや感染症で命を落とす…。
そんな切迫した両親の状況を、こっそり覗き見するようにして察していくヤコブの12歳の息子セアン。物語全体は、この12歳の少年を軸にして綴られます。自国を占領したナチスへの恨みや反発、“解放”をめざす活動を行う人々への同調などが目立ってくる中、手痛いイジメに遭うことから、セアンの感情や行動も大きく揺れ動きます。
やがて心を通わせたドイツ難民の少女が感染病にかかったことから、セアンも両親と同様に良心のもとに行動しますが、12歳の少年の行動と感情の振れ幅は実に大きいです。そして終戦後の街を去る家族のエンディング、そこに悲嘆の色はないです。
(2023年、監督・脚本/アンダース・ウォルター、撮影/ラスムス・ハイゼ、美術/ハイディ・プラッゲ、編集/ラース・ビッシンク、音楽/ヨハン・セーデルクビスト)
被写体として登場するのは、かつてチリで著名なジャーナリストとして活躍した夫、アウグスト・ゴンゴラと、国民的女優でありチリで最初の文化大臣となった妻、パウリナ・ウルティア。20年以上に渡って深い愛情で結ばれた二人は、自然に囲まれた古い家をリフォームして暮らし、読書や散歩を楽しみ、日々を丁寧に生きている。
そんな中、アウグストがアルツハイマーを患い、少しずつ記憶を失い、最愛の妻パウリナとの思い出さえも消え始める…。本編は、アルツハイマーを患った夫アウグストと、困難に直面しながらも彼との生活を慈しみ彼を支える妻パウリナの、ささやかな幸せにあふれる暮らし、愛と癒しに満ちた日々を記録したドキュメンタリーです。
2023年サンダンス映画祭ワールド・ドキュメンタリー部門で審査員大賞を受賞した本編。2020年製作の映画『83歳のやさしいスパイ』でチリの女性として、初めてアカデミー賞にノミネートされたマイテ・アルベルディ監督にとっては、本編によりオスカーの「長編ドキュメンタリー賞」部門で2度目のノミネートを果たしています。
ある意味“愛と介護”の夫婦愛を描いた本編を見ながら、作品のジャンルも描き方も異なりますが、少し前に見た日本映画『大いなる不在』を思い出すことになりました。こちらで認知症の夫を演じたのは藤竜也、妻役は“不在”の原日出子でした。
(2023年、監督・プロデューサー/マイテ・アルベルディ、撮影/パブロ・バルデス、編集/キャロライナ・シラキアン)