映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


カンヌ国際映画祭騒然と、話題になった映画「ダイ・マイ・ラブ」
観た側からすると、それほどのものかとは思う。
こっちも予想はしていたし、どこにそんな騒然とする要素があるのだろう?


ジェニファー・ローレンスはデビュー時から期待を一身に受けていた。
「ウィンターズ・ボーン」で女優賞にノミネート、「世界にひとつのプレイブック」で早くも受賞。
後はメリル・ストリープのような存在になるのでは?


しかし、彼女の人生は一変する。
プライベート写真流出事件だ。
そこから彼女の作品選びが王道から、どんどん逸れていく。


大胆さも含めて、彼女の体当たりを求める映画監督が増えていく。
かつてニコール・キッドマンもそうであった。
十分売れているのに、何故リスクを負う役をこうも引き受けるのかと。


今のジェニファー・ローレンスにはそういった危うさがあり、痛々しさもある。
映画では結婚して出産、幸せになるはずだった夫婦の崩壊を描く。
産後鬱となり、妻は狂気へとまっしぐらに落ちていく。


この原作をジェニファー・ローレンスが気に入り、リン・ラムジー監督に依頼。
リン・ラムジーと言えば、「少年は残酷な弓を射る」や「ビューティフル・デイ」のカンヌ常連監督。
自分の心身をズタボロに晒す役をジェニファー・ローレンスは自ら選んだ。


車で流れるデヴィッド・ボウイ初期の名作「クークス」。
妻はこの曲を大好きと言う。
美しいラブストーリーでもあるが、観てて面白いという作品とは違う。


幸せを掴んだかに見えた女性が破滅へと向かう。
まるでジェニファー・ローレンス自身のメッセージのようにも取れる。
いつどうなるか分からない、彼女の人生のように。








映画監督と俳優には、幸運な出会いというものがある。
古くはジョン・フォードとジョン・ウェイン。
マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロ。


若しくは、スコセッシとレオナルド・ディカプリオ。
ブラッド・ピットとデヴィッド・フィンチャー。
マッツ・ミケルセンなら、アナス・トマス・イェンセンとの出会いだ。


「さよなら、僕の英雄」
これまでに「アダムズ・アップル」や「ライダーズ・オブ・ジャスティス」と全ての監督作でタッグを組んできたマッツ・ミケルセンとアナス・トマス・イェンセン監督。
社会からはみ出した者を見つめた、個性的な物語は健在だ。


今回ミケルセンが演じるのは、トラウマを抱えて自分がジョン・レノンだと信じる男。
兄は元強盗犯で、長い服役から出所したばかり。
かつて隠した大金入りのバッグを巡って、大騒動を巻き起こす。


イェンセン監督は毎度バイオレンスを撒き散らし、そこにユーモアを交えて緩急織り交ぜる。
キャストもイェンセン組常連メンバーで、楽しい。
マッツ・ミケルセンはイェンセンの作品で、毎回複雑なアウトローを演じてきた。


今回は特に難しい役だが、公開を楽しみに待ったファンも多いだろう。
他の下手な俳優が演じたら、見てられない状況もあり得たと思う。
ぶっ飛んだ設定、ぶっ飛んだ役に息を吹き込むのも、ミケルセンの成せる技だ。 


映画は記憶を辿り、感動的な幕切れとなる。
幸運な出会いは、今後も違った形で我々の前に現れるのだろう。
強い信頼関係で結ばれた二人のタッグをまだまだ追い掛けていきたい。






午前十時の映画祭でウディ・アレン監督の「マンハッタン」。
ウディ・アレン作品、好きでしょうか?
自分は多くを映画館で観ているし、後追いで昔の作品も映画館で観たりしている。


皆さんお分かりの通り、出来不出来の差が激しいのは事実。
傑作も多いが、凡作の数も相当なもの。
それだけたくさんの映画を撮っている映画監督。


「マンハッタン」は「アニー・ホール」と並んで初期の代表作の一つ。
ウディ・アレンお得意の恋愛物。
当時のパートナー、ダイアン・キートンとの息もぴったりだ。


元妻を演じているのはメリル・ストリープ。
お互いのぎくしゃくした会話がウディ・アレンらしく、可笑しい。
モノクロ映像も美しく、淡々と描かれていることが余計に切ない。


自分の好みは、「ギター弾きの恋」や「マッチポイント」、「ラジオデイズ」に「カイロの紫のバラ」、「ミッドナイト・イン・パリ」。
コメディの人なので、軽妙さが魅力だ。
性的虐待疑惑で今はもう映画を撮れないのだろうか?


本人は否定しているが。
今なら老いの儚さを存分に発揮出来そうなのに。
新作が観られないのはとても残念である。