映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


ガス・ヴァン・サント監督の1991年の作品「マイ・プライベート・アイダホ」。
新作「デッドマンズ・ワイヤー」が公開したばかりのヴァン・サント。
インディペンデントな作風は、今も健在だ。


リヴァー・フェニックスとブレイク前のキアヌ・リーヴスが共演。
社会からはみ出して男娼として暮らす二人だが、二人の道は大きく明暗分かれていく。
リヴァー・フェニックスはこの演技で、ヴェネツィア国際映画祭主演男優賞を受賞。


美しい二人の共演。
リヴァー・フェニックスは1993年に薬物過剰摂取により、 23歳で死去。
キアヌ・リーヴスは、「スピード」の大ヒット、「マトリックス」の成功により、大スターとなる。


これも明暗と言って良いのか?
母親に捨てられ、ナルコレプシーという病を抱えるマイク。
孤独な青年を演じたリヴァー・フェニックスは短い人生を駆け抜けた。


市長の息子で女性と結ばれるスコットを演じたキアヌは、スター街道を駆け抜ける。
映画の中の二人も、実際の彼らのようにまるで違う人生を歩む。
リヴァー・フェニックスのファンは、この映画で報われない彼を見るのは辛いかもしれない。


親友だったジョニー・デップは、傑作「ギルバート・グレイプ」にリヴァーへの思いを重ねた。
暗く鬱々としたあの目は、リヴァーを失った直後だったからだ。
かつてジェームズ・ディーンが事故で亡くなった時同様、リヴァーもまた、哀しく孤独な役に恵まれた。


ジェームズ・ディーンの再来と言われ、本当にジェームズ・ディーンのようにあっという間に旅立ってしまった。
男娼として生き、母親を探す旅に出る眩いばかりの二人。
時を経ても、映画は色褪せない。







今自分が日々繰り返している仕事は、キックボクシング。
ダイエット目的であったり、強くなりたい人ももちろんいるし、試合に出たい人もいる。
アマチュア大会のセコンドに付くことも増えた。


18歳から夢見がちで、売れない食えないをそのまま突っ走った。
ただ今高齢で、いつまで続くか分からないが、食えない役者をやめた以上、この仕事に全力を尽くしている。
やり甲斐はあって、夢を追っていた頃より楽しいし、充実もしてる。


選手が試合に勝って、その後に飲むお酒は最高だ。
毎日長い時間を費やしているので、人一倍健康には気を遣うが。
間もなく60歳、この道があって本当に良かったと思う今日この頃。






寡作の人、橋口亮輔監督。
彼の代表作「ハッシュ」と「ぐるりのこと。」が、現在リバイバル公開中。
橋口監督の映画は、彼だからこそ撮れる希少なもの。


才能ある監督は数あれど、橋口監督の作品は誰も真似出来ない。
「ぐるりのこと。」は2008年の一組の夫婦の物語。
鬱だった監督が、主人公の木村多江さんに自分を投影した。


生まれたばかりの子を亡くして、妻は壊れてゆく。
精神を病んでゆく女性を描いた映画は、ジャン・ジャック・ベネックスの「ベティ・ブルー」やジョン・カサヴェテスの「こわれゆく女」が有名だ。
演じていたベアトリス・ダルやジーナ・ローランズは激しく崩壊していったが、多江さん演じる翔子は静かに崩れていく。


リリー・フランキーさん演じる夫が、妻を支える。
自然な佇まいが、この役にぴったりだ。
法廷画家という設定も効いていて、彼が立ち合う連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄サリン事件、池田小殺傷事件等、社会を震撼させた出来事との対比も映画の魅力である。


夫婦はこうあるべきだ、なんて言えない。
血の繋がりのない者同士が出会い、価値観を共有して結ばれる。
どの夫婦も、それぞれの距離感があり、会話で上手に続いていく夫婦もあれば、会話せずとも空気のように成り立っている夫婦もある。


千差万別、正しい形なんてない。
「ぐるりのこと。」の夫婦は不器用ながら支え合い、お互いを思い遣る。
彼らが微かな光から希望を見出して前を向く姿は、美しい。


この映画の次回作、長い時間を経て、傑作「恋人たち」が生まれる。
心に闇を抱えて、橋口監督作品に救われている人はたくさんいるんじゃないだろうか?
自分も、そんな一人だ。