映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


ガス・ヴァン・サント監督の「マイ・プライベート・アイダホ」に続いて、「ドラッグストア・カウボーイ」がシネマート新宿で上映されている。
ドラッグに依存した若者の暴走と末路を描いた一作。
デビュー当時からガス・ヴァン・サント監督の映画は一貫している。


主演は、当時大スターだった頃から、少し翳りが見えたマット・ディロン。
ジャンキーの悲哀を演じて、評価された。
我々の世代は、マット・ディロンの映画を直撃で受けた。


何よりもフランシス・フォード・コッポラ監督の「アウトサイダー」。
ジェームズ・ディーン世代ではない自分達にとっては青春映画のバイブルであり、多くのスターが生まれた。
クリス・トーマス・ハウエルにダイアン・レイン、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、トム・クルーズもいた。


最も成功したのはトム・クルーズだろうが、当時のトップはマット・ディロンだった。
マット・ディロンは今でももちろん活動しているが、全盛期の面影はない。
通好みの地味な作品を選び、納得するものにしか出演していないかのよう。


最近では「タンゴの後で」で、マーロン・ブランドを演じていた。
ラース・フォン・トリアーの「ハウス・ジャック・ビルト」では、ぶっちぎりのサイコキラーを演じた。
王道ではない、リスクのありそうな役ばかりだ。


マット・デイモンの登場は、マット・ディロンの人気に影響してないだろうか?
1980年代はマットと言えばディロンだったが、1990年代後半のマット・デイモンの登場によって、マットはデイモンになった。
しかもマット・デイモンは売れに売れてしまったのだ。


関係ないと言えばないが、0.何パーセントくらいはあるのではないか?
マット・ディロンはスーパースターの座ではなく、自分の信じる演技の道を選んだ。
華々しい活躍は、2004年のアカデミー賞作品賞受賞作品「クラッシュ」での警察官役だろう。


差別主義者の奥行きのある芝居を見せ、男優賞にノミネートされた。
それ以降も、ひたすら癖強めの作品に出演し続けている。
マット・ディロン、このまま己の道を突き進むのだろうか?








古代ギリシャの壮大な冒険物語「オデュッセイア」。
これをクリストファー・ノーラン監督が映画化。
見所満載で、期待以上の172分であった。


20年間故郷に帰らない、王であり英雄であるオデュッセウスの物語。
一方で、帰還を待つ息子のテレマコスの成長の物語。
激闘とスペクタクル盛り沢山で、クライマックスまで飽きさせない。


有名なのは、一つ目巨人との緊迫感溢れる戦い。
それから、トロイの木馬での敵地への侵入。
これまで難役を数々演じてきたマット・デイモンの新たな代表作と言っていい。


キャストはもちろん豪華だが、各々の役割、駆け引き、見せ場も楽しめる。
王位継承を乗っ取ろうとする狡猾なアンティノオスを演じたロバート・パティンソン。
愛する王を待ち続けるペネロペを演じたアン・ハサウェイ。


オデュッセウスが流れ着いた島で暮らすカリュプソを演じたシャーリーズ・セロン。
父を信じ、逞しく成長していくトム・ホランド。
ジョン・ レグイザモ演じる、目の見えないオデュッセウスの従者エウマイオスも魅力的だ。


ワンポイントで出演している魔女を演じるサマンサ・モートンも強烈だ。
演技巧者が集まり、クライマックスに向けて演技合戦を繰り広げる。
これだけの膨大な物語を3時間にまとめる、クリストファー・ノーランの演出も光る。


このギリシャ神話をこれほどのクオリティーで完成させる監督は、ノーラン以外にはいないだろう。
クライマックスのひりひりする展開は、今思い出しても込み上げるものがある。
映画館で味わうべき超大作だ。







1986年のアメリカ映画。
「ヘンリー」
昔観たのはビデオだったか、テレビだったか?


派手な怖い映画に慣れていた自分は、単純につまらないなと思った。
特にドラマがあるわけでもなく、起伏があるわけでもなく。
だいぶ大人になって、観る印象は違う。


1970年代から80年代にかけて、アメリカで300人以上を殺害した実在の人物ヘンリー・リー・ルーカス。
彼の日常に迫ったドキュメンタリータッチの映画。
気に入らなければ、自分に必要がなければ殺す。


息を吸うように繰り返される残虐な行為。
それをカメラに淡々と収める映画の恐ろしさ。
まるで自分もそこにいるかのように、殺人を目撃する。


アメリカではお蔵入りとなり、4年間劇場公開されなかった。
男が隣にいる恐怖。
また誰かが犠牲者になるという恐怖。


エンタメ要素はまるでない。
そこがこの映画の潔いところで、徹底したリアリズムは評価すべきだろう。
ラストの静寂。


寒々しい怖さは身震いする程。
この映画は、人間がこうまで非情になれるかを教えてくれる。
だから、どのホラー映画よりも怖いのだ。