映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


アラン・ドロン主演作「サムライ」が4K上映中。
アラン・ドロンのファンなら、主演作の中で何が最高傑作だろう?と一度くらい考えたことがあるはずだ。
「太陽がいっぱい」か、「冒険者たち」か「地下室のメロディー」か「若者のすべて」か、「山猫」か?


そんな中でも、「サムライ」と答えるファンは多い。
アラン・ドロンの美しさ、格好良さが映画に溢れているからだ。
寡黙な悪の魅力。


孤独な一匹狼。
佇まい、歩く姿。
表情を変えないクールさ。


アラン・ドロンがこれまで演じた悪の演技で、最高峰と呼べるものだ。
トレンチコートと帽子も映画の見せ場となる。
追い詰められていく殺し屋役が、これ程ハマる人もいない。


ジャン・ピエール・メルヴィル監督の演出は、多くの映画監督に影響を与えた。
マーティン・スコセッシやジム・ジャームッシュ、ジョン・ウー、ドロンが演じる孤高の男を彼らも新たに生み出していった。
いかにドロンが演じたキャラクターが魅力的だったのかが分かる。


自分にとってアラン・ドロンの最高傑作は、「太陽がいっぱい」だろうか?
ルネ・クレマンのクライマックスの演出も、インパクトがあって最高だ。
次は「冒険者たち」かな。


それでも、アラン・ドロンの魅力を最大限に引き出したのは、この「サムライ」である。
男性ファンが多いことに気付いた。
中年、老年の男性が惚れた女性を見つめるように、アラン・ドロンに釘付けになった105分であった。







「ソング・サング・ブルー」
こういう映画に弱いのは、自分でもよーく分かっていて、にしても泣き過ぎだろうと思う程泣いた。
割りと始まってすぐ、既に。


実在するライトニング&サンダーという、いわゆるコピーバンド。
ニール・ダイアモンドの歌真似が中心。
アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーでは、爆発的に人気のあったグループのサクセス・ストーリー。


マイク・サルディーナとクレア・サルディーナ、この主人公二人の前向きな生き様がいい。
二人とも音楽では売れず、それぞれ子供を育て、歌真似で生計を立てようとする。
二人は惹かれ合い、運命を共にするのだ。
立ちはだかる困難を乗り越える姿、夫婦愛に心奪われるばかりだ。
この作品でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたケイト・ハドソンと、ヒュー・ジャックマンの完璧な歌声。
他人の歌を歌っているのに、二人の背景が見えるから余計伝わってくる。


マイクの方はベトナム帰還兵でアルコール依存症、車の整備工もしている。
ケイトは精神疾患を抱えている。
共にバツイチだ。


ケイト・ハドソンはゴールディ・ホーンの娘で華々しく登場したが、決して役には恵まれていなかった。
今回のこの演技で大きく飛躍したと言っていい。
年齢を重ねて、とても魅力的な女優になった。


売れたいと願う気持ちは、とてもよく分かる。
この道で食いたい、状況を変えたい、しかしそう上手くはいかない。
この映画は、あらゆる埋もれた者達へのエールである。


労働者達、貧しき者達に力をくれる映画だ。
夢を追い掛ける者達の背中を押してくれる。
ライトニング&サンダーの歌に勇気を貰う133分、必見!






ジェシー・バックリーが主演女優賞を受賞した映画「ハムネット」。
観ていて、思い出したことがある。
今は亡き、同期のことだ。


芝居の研究所2年目、自分達はシェイクスピアのオムニバス芝居をやることになった。
自分はリチャード三世、彼はハムレットを選んだ。
「ハムネット」のクライマックスは、「ハムレット」の舞台シーンである。


「尼寺へ行け!」
真っ赤な顔で叫ぶ関貴昭の姿を思い出した。
明暗を分けて、彼は劇団に選ばれ、自分は途方に暮れた。
市川染五郎さん主演の「ハムレット」に彼が出演したのは、そのすぐ後だ。


お互いに難しい人間で、特に彼もややこしいので、度々衝突した。
喧嘩して何年間も会わず、偶然再会したのは、高田馬場駅のホームだった。
妻を紹介した。


それからは年末は必ず飲み、過去が嘘のように雪解けとなった。
会うと、また役者をやったらいいのに、と辞めた自分に気遣った。
親友を亡くして2年になる。