映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -2ページ目


コンビニエンスストアが舞台のホラー映画、「チルド」。
ベルリン国際映画祭フォーラム部門で、国際映画批評家連盟賞を受賞。
どこにでもある小さな空間がホラーの現場になるという、アイディアの面白さ。


とにかく人間が怖い。
主人公は無機質に、コンビニの仕事をこなす。
オーナーも輪を掛けて無機質だ。


新人女性店員が加わったことで、彼らの歯車が狂い出す。
人間の暴走は、何より怖い。
名作「シャイニング」だって、霊的なものはあれど、父親の暴徒が怖いのだ。


チャップリンの傑作「モダン・タイムス」だってそう。
工場で毎日同じことの繰り返しを、いかにもチャップリンらしく風刺していた。
コンビニでも皆、マニュアルに従い、マニュアル通りに働いている。


それが彼らを浸食し、次第に壊していく。
人間性を失い、コンビニのための物体となっていく。
極端だが、追い詰められた人間は、こうなる可能性があるということだ。


「廃用身」でも凄まじい存在感だった染谷将太さんが、ここでも光る。
怪物西村まさ彦さんと、異質の唐田えりかさんとの対比も良い。
社会で、無機質な人間は以前より明らかに増えている。


彼らの暴走を誰が止めるのだろうか?
耳を傾ける人間は、近くにいるのだろうか?
誰かと語りたくなる映画だ。





今回の「午前十時の映画祭」で、最も観たかった作品がこれだった。
「カプリコン・1」
何十年も前に観ていても、もう一度、しかも映画館で味わいたい映画だった。


1977年のアメリカとイギリスの合作映画。
当時のアメリカ映画はアメリカンニューシネマが終わり、ホラー映画やパニック映画、社会派サスペンス等が多数作られていた。
スピルバーグやルーカスが登場したのも、この頃。


陰謀に巻き込まれた宇宙飛行士3人の逃亡を描くサスペンス。
見せ場は何と言っても、3人が脱出して砂漠を逃げるシーンだ。
追い掛けるのは2機のヘリコプター。


この逃走、追跡劇が映画の見せ場であることは間違いない。
そしてこの映画をより魅力的にしているのは、エリオット・グールド演じる新聞記事の存在だ。
宇宙飛行士の事故に疑問を持った彼が、命を狙われるという同時進行の妙。


これによってサスペンスが加速するのである。
ラストシーンのスローモーションは今観ても色褪せず、ぐっとくる。
分かっているのに、涙腺を刺激するのだ。


ピーター・ハイアムズ監督は、「破壊!」や「カナディアン・エクスプレス」等、サスペンスを得意とする映画監督。
しかし、中でも「カプリコン・1」は最高傑作だろう。
とても半世紀前に撮られたとは思えない、優れた映画である。







「隣人たち」
ヒッチコックの影響を受けた映画が、これまでどれだけ作られたことか?
これもヒッチコックを意識した、全編ヒッチコックの影響大のサイコ・スリラー。


それまで仲の良かった隣人同士。
息子がベランダから転落死する事故が起き、そこからお互いの関係は一変する。
両家族共に隣人に疑心暗鬼となるのだ。


ヒッチコックにはこのような作品がいくつもある。
「疑惑の影」では、姪が叔父を疑う。
「断崖」では、妻が夫に殺されるかもと疑う。


心理サスペンスはヒッチコックお得意のもの。
お互いがお互いに疑惑を抱いた両者は、行動をエスカレートさせていく。
ジェシカ・チャスティンが窓からアン・ハサウェイの行動を覗き見するシーンが何度も繰り返される。


もちろんこれは「裏窓」を意識してのものだろう。
「裏窓」では、グレース・ケリーが犯人の部屋に忍び込むが、ジェシカ・チャスティンも隣人宅に侵入し、暴走していく。
オスカー女優二人の熱のこもったバトルは必見だ。


ベルギー映画の「母親たち」のリメイク。
「縞模様のパジャマの少年」の撮影監督ブノワ・ドゥロームの監督デビュー作。
クランクイン1週間前に、急遽監督の降板により、バトンタッチとなった。


ヒッチコックのファンなら楽しめるはず。
しかし、ヒッチコックの偉大さを改めて思い知らされるのも事実。
映画の完成度は、ヒッチコックの方が遙かに上だからだ。