
ダーレン・アロノフスキーの映画を長年観てきた人達は、この新作をどう捉えただろうか?
「コート・スティーリング」
彼がクライムムービーを撮ったのだ。

自分だけでなく、意外と思った人は多かったのでは?
クエンティン・タランティーノやデビュー当時のダニー・ボイルを思わせるテイスト。
何せ「レクイエム・フォー・ドリーム」の監督である。
後味の悪さも何のその、ドラッグに冒された人間の破滅を徹底して描いた人だ。
その後の「レスラー」は自分も大好きな作品で、「ブラック・スワン」でも、らしさを爆発させた。
同時に、評価もぐんぐん上がっていった。
俳優の演技を引き出すのも上手く、「ブラック・スワン」ではナタリー・ポートマンに、「ザ・ホエール」ではブレンダン・フレイザーにオスカーをもたらし、完全復活させた。
今回は、いわゆる巻き込まれ型のクライムムービーである。
友人から猫を預かって世話をするはずが、事件に巻き込まれ、マフィアに命を狙われる逃走劇。
今が旬のオースティン・バトラーが、駄目男をコミカルに演じている。
悪の組織との二転三転、裏切りあり、罠あり、逆転あり。
ローラ・ダーンの出演とか、嬉しさもあり。
どこをどう観てもダーレン・アロノフスキーっぽさはない。
毒や刺激は皆無、よくあるクライムムービーと言っていい。
何故これをダーレン・アロノフスキーが撮ったのか?

救いようのない闇を掘り下げて描いてきた映画監督ダーレン・アロノフスキー。
今回はやけにポジティヴで、バッドエンディングでもない。
何が彼をそうさせたのか、謎は深まる。