映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -2ページ目


「夕暮れにベルが鳴る」という映画があった。
1979年製作のアメリカ映画。
確か仙台では、「エレファント・マン」と同時上映だった。


いわゆるB級映画だが、中学生だった自分には十分面白いサスペンスだった。
クライマックスで主人公が部屋で襲われるシーンも、未だ覚えている程。
主人公を演じたのはキャロル・ケイン。


決して知られた存在ではないが、美しかった。
その後、どんな作品に出演していたのかも知らない。
だが、「コート・スティーリング」のパンフレットに彼女が載っていたのだ。


出演作に、「夕暮れにベルが鳴る」とある。
「コート・スティーリング」で主人公を苦しめるユダヤ教徒のマフィア兄弟が登場するが、そのおばあちゃん役で出演していたのだ。
もちろんかわいらしいおばあちゃんである。


時の流れを感じるが、今も現役の女優。
しかもダーレン・アロノフスキー作品に出演であり、オースティン・バトラー相手に芝居をする。
こういった発見がまた、映画を観る楽しみでもあるのだ。






2024年に公開された「シビル・ウォー~アメリカ最後の日」は、アメリカの分断を描いたリアルな傑作だった。
その監督アレックス・ガーランドが、今度はイラク戦争の戦場に我々を送り込む。
「ウォーフェア戦地最前線」


この映画には、映画的なサービスが一切ない。
実際に起こったイラクでのアメリカ兵達の混乱を体験する映画だ。
そこにはヒーローなんていない。


叫び声と呻き声と、降り注ぐ銃弾の音。
最前線を体験する映画だが、我々に痛みは伴わない。
そこが違いだ。


元海軍のレイ・メンドーサが共同監督。
イラク戦争のありのままがそこにある。
救いもなければカタルシスもない。


死んでいく兵士と傷だらけの兵士。
何とか生き延びても、まだ命の保証はない。
常に死と隣り合わせ。


イラク人家庭に無理矢理侵入し、そこをアジトにして銃撃を繰り返すアメリカ人。
イラク兵に攻撃され、八方塞がりとなり、救助を求めるもそこは地獄。
何て愚かな争いだろう?


我々は醜い殺し合いを繰り返し、子供のように人のものを欲しがり、壊す。
地球が滅びるまでこれは続くのだろう。
この映画が作られたところで何も解決しないのが残念である。






ダーレン・アロノフスキーの映画を長年観てきた人達は、この新作をどう捉えただろうか?
「コート・スティーリング」
彼がクライムムービーを撮ったのだ。


自分だけでなく、意外と思った人は多かったのでは?
クエンティン・タランティーノやデビュー当時のダニー・ボイルを思わせるテイスト。
何せ「レクイエム・フォー・ドリーム」の監督である。


後味の悪さも何のその、ドラッグに冒された人間の破滅を徹底して描いた人だ。
その後の「レスラー」は自分も大好きな作品で、「ブラック・スワン」でも、らしさを爆発させた。
同時に、評価もぐんぐん上がっていった。


俳優の演技を引き出すのも上手く、「ブラック・スワン」ではナタリー・ポートマンに、「ザ・ホエール」ではブレンダン・フレイザーにオスカーをもたらし、完全復活させた。
今回は、いわゆる巻き込まれ型のクライムムービーである。
友人から猫を預かって世話をするはずが、事件に巻き込まれ、マフィアに命を狙われる逃走劇。


今が旬のオースティン・バトラーが、駄目男をコミカルに演じている。
悪の組織との二転三転、裏切りあり、罠あり、逆転あり。
ローラ・ダーンの出演とか、嬉しさもあり。


どこをどう観てもダーレン・アロノフスキーっぽさはない。
毒や刺激は皆無、よくあるクライムムービーと言っていい。
何故これをダーレン・アロノフスキーが撮ったのか?


救いようのない闇を掘り下げて描いてきた映画監督ダーレン・アロノフスキー。
今回はやけにポジティヴで、バッドエンディングでもない。
何が彼をそうさせたのか、謎は深まる。