映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -3ページ目


「プライベート・ケース」
ジョディ・フォスターが主演で、初のフランス語に挑戦。
共演者がダニエル・オートゥイユとマチュー・アマルリック、そして「急に具合が悪くなる」でカンヌ女優賞を受賞したヴィルジニー・エフィラ。


共演者に魅力を感じ、観ることにした。
ジョディ・フォスターが演じるのは、精神分析医。
自分の患者の死に疑問を持ち、真相を突き止める。


そこで手を貸してくれるのが、ダニエル・オートゥイユ演じる元夫。
元夫婦が時には息を合わせ、時には意見を戦わせながら事件を追うバディ・ムービーである。
残念なのは、レベッカ・ズロトヴスキ監督の演出。


サスペンス、ミステリー映画としては、演出が緩慢過ぎる。
そこに加えて、度々挟まれる深層心理に入っていくという映像。
これがまた映画をややこしくし、一体どういう事件なのかが掴みにくい。


明らかにされないことばかりで、観客は置き去り。
期待はしていなかったが、このキャストを使ってこの内容では勿体ない。
オープニングのトーキング・ヘッズ「サイコ・キラー」にはゾクゾクしたが。


見所は、やはりジョディ・フォスターとダニエル・オートゥイユの微笑ましいコメディ・シーンだろうか?
そこ以外はどうも中途半端で、緊迫感に欠ける。
二人の熟練の演技合戦をもっと堪能したかったのだが残念。









ガス・ヴァン・サント監督は、成功してもずっとインディーズ魂を失わない人だ。
これまでの多くの作品に魅了されてきた。
「ドラッグストア・ カウボーイ」に「マイ・プライベート・アイダホ」、「グッド・ウィル・ハンティング旅立ち」、「エレファント」、「永遠の僕たち」、そして「ミルク」。


8年振りの新作「デッドマンズ・ワイヤー」は実話を元にした作品。
1977年インディアナポリスで実際に起きた、人質立てこもり事件。
全米が注目した劇場型犯罪だ。


自分の首と人質の首をショットガンとワイヤーで固定し、動けば自動発砲されるという装置を使っての犯行。
不動産ローン会社に自分の財産を騙し取られたとして、ローン会社の役員を人質に取ったのだ。
テレビでの生中継まで要求した。


犯人の名は、トニー・キリシス。
彼の訴えは、何よりもローン会社からの謝罪だ。
籠城し続け、謝罪と補償を求めた。


あの時代の空気を映画から感じていると、当時の傑作「狼たちの午後」を思い出した。
銀行強盗で劇場型犯罪、主演はアル・パチーノ。
「デッドマンズ・ワイヤー」では、アル・パチーノが事件の鍵を握るローン会社の社長役。


これまた犯人を挑発するなかなかの社長で、映画を盛り上げる。
主演はビル・スカルスガルド、役員役はデイカー・モンゴメリー。
二人の緊張感溢れるやり取りに、息を呑むばかりだ。


ガス・ヴァン・サントお得意のリアルな人間のドラマ。
破天荒だが、人々が犯人に肩入れしたのもよく分かる。
社会の片隅に生きる人間は、昔も今も状況を変えられないのだ。


「ドラッグストア・カウボーイ」と「マイ・プライベート・アイダホ」が、もうすぐリバイバル公開される。
楽しみにしている方も多いだろう。
ガス・ヴァン・サント映画のファンには、暑い熱い夏になりそう。











エドワード・ヤン監督は7本の映画を残して、59歳で亡くなった台湾の映画監督である。
もう随分前になるが、映画ファンは口々にエドワード・ヤン監督の素晴らしさを自分に語った。
今、日本を代表する監督である濱口竜介監督や深田晃司監督は、彼から影響を受けている。


「恐怖分子」も「 牯嶺町少年殺人事件」も「ヤンヤン夏の思い出」も、後追いで観た。
今回、新宿でついにデビュー作「海辺の一日」が公開され、全ての彼の作品を映画館で味わうことが出来た。
「海辺の一日」は、こちらの想像を遥かに超えて素晴らしかった。


一人の女性の波乱に満ちた人生。
物語は決して突飛なものではないものの、深く余韻の残る作品だ。
彼女の失われた13年間が語られていく。


すれ違いの連続の人生。
厳格な父親への反発と、自ら切り開いた結婚の破綻。
そして運命を決定付ける3年前の海辺の一日。


13年振りに再会した、兄と結婚するはずだった女性。
カフェで語られていく回想。
物語にぐいぐい引き込まれ、主人公の過去に釘付けになった。


エドワード・ヤンの語り口の上手さだろう。
海辺のシーンはサスペンスも孕み、大きなうねりとなった。
壮大なデビュー作である。


当時エドワード・ヤンについて熱く語った映画狂の知人の言葉の意味が、今は分かる。
エドワード・ヤンがどれだけ偉大な監督だったのか。
死から19年、彼の映画は繰り返し映画館で上映され、今も多くのファンを獲得している。