映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -4ページ目


美しい青年が才能を開花させ、究極の演技者になる。
30歳のティモシー・シャラメが歩んでいる道は、挑戦の連続だ。
かつてレオナルド・ディカプリオがそうであったように。


作品選びのセンスは、かなりのものだ。
「マーティ・シュプリーム世界をつかめ」
「名もなき者」でボブ・ディランを演じて我々にインパクトを与えた後、興奮が醒めやらぬうちにまたもややってくれた。


ボブ・ディランではその容姿や話し方だけでなく、歌まで自分のものにした。
今回演じるのは、卓球の世界チャンピオンを目指す最低男だ。
実在の卓球選手に着想を得て、周りを振り回して疾走する男を軽々と演じた。


この男、とにかく女にだらしない。
駄目っ振りが突き抜けてて笑えるが、ティモシーが演じると憎めないキャラに変身。
ジョシュ・サフディの演出はドタバタが過ぎるが、後半へのドラマ展開は素晴らしい。


上野恩賜公園で撮影されたというクライマックスは必見だ。
「君の名前で僕を呼んで」でブレイクしたティモシーのラストシーンを覚えてる方も多いだろう。
あの長尺のアップと涙。


若くしてアカデミー賞にノミネートされた彼の名シーンである。
今回も、ラストシーンのティモシーに泣かされる。
これまでのどの演技にも負けない、ティモシー・シャラメここにありのシーンだ。


インタビューで、この役で消耗したと語っているが、それは頷ける。
卓球は5年程練習したと言うし、その人物造形のためにエネルギーを尽くしたのだろう。
ドゥニ・ヴィルヌーヴやウェス・アンダーソン、クリストファー・ノーランと言った作家性のある監督や個性派との共闘。


そういったものが彼の血となり肉となり、今後ますます飛躍するのは間違いない。
この映画の魅力は、マーティの無鉄砲な行動を観客が味わう醍醐味にある。
最低男だが、がむしゃらでひたむきで、こんな生き方してみたいと思わせる説得力があるのだ。







 

「決断するとき」でベルリン国際映画祭助演俳優賞に輝いたエミリー・ワトソン。
その演技を見たいと思った。
若い頃から、その大きな目で多くを語ってきたエミリー・ワトソン。


デビュー作「奇跡の海」から既に衝撃だった。
「レッド・ドラゴン」の盲目の女性や「パンチドランク・ラブ」の主人公の恋の相手も、鮮烈な印象を残した。
当時、エミリー・ワトソンが出演していたら、映画が間違いなく面白くなった。


「オッペンハイマー」でオスカーを獲得したキリアン・マーフィーは、原作「ほんのささやかなこと」を読んで映画化を熱望した。
初めてプロデュースも兼ね、マット・デイモンやベン・アフレックの協力も得て、「決断するとき」を完成させた。
アイルランドの女性収容施設マグダレン洗濯所の悪夢の物語である。


エミリー・ワトソンが演じるのは 修道院の院長シスター・メアリー。
過酷な労働に虐待、入所者は逃れられない。
そこでの行いを正当化する、静かなるカリスマ。


仕事で訪れた修道院で、主人公は助けを求められる。
苦悩し、どうすべきかと揺れ動く主人公。
キリアン・マーフィーは、昔から映画の中で沈黙し、歩き続けた。


「28日後…」では人が消えた街を漂い、「オッペンハイマー」でも原爆を開発したことで自問自答し、世界中が彼に注目した。
今回はアイルランドの歴史に切り込んだ。
オスカーの後に「レンタル・ファミリー」を選んだブレンダン・フレイザーもそうだが、そこに俳優の心を感じる。


地味だが、社会に訴える物語。
今こそやるべきだと、キリアン・マーフィーの背中を押した作品。
頂点を極めても尚、挑戦し続ける姿勢は俳優の鑑だ。









チャック・ノリスが亡くなった。
86歳だった。
自分達の世代だと、B級アクション映画の俳優として記憶している方も多いだろう。


もちろん「ドラゴンへの道」の強敵として、ブルース・リーの前に立ちはだかったアメリカ人空手家役が有名だ。
ブルース・リーの死後半世紀以上経っても、あのコロッセオでの激闘は語り継がれる。
最大のライバルとして、ブルース・リーを輝かせた男だ。


自分はブルース・リーの大ファンだが、あのチャック・ノリスとの決闘は名シーンだ。
あれほどブルース・リーを輝かせた男は他にいない。
後にアクション俳優としても主演作を残したが、我々はブルース・リーの強敵としての認識が強い。