映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン -5ページ目


アカデミー賞で脚本賞と主演男優賞にノミネートされた会話劇「ブルームーン」。
受賞は逃したが、これこそ会話劇!
たった一夜を描いた、会話を楽しむ映画だ。


リチャード・リンクレイター監督はもともと会話劇の名手。
かつてイーサン・ホーク主演で、ビフォア3部作シリーズで評価された監督だ。
ジュリー・デルピーと二人の正真正銘の会話劇。


今回は映画の開巻から、イーサン・ホークがマシンガントークで飛ばす。
演じるのは、ブロードウェイで有名な作詞家ロレンツ・ハート。
当時彼は低迷期にあり、アルコール依存症だった。


自分は関わっていないブロードウェイ初演のパーティー会場。
ロレンツにあるのは、嫉妬と一方通行の恋。
恋のお相手を演じるのは、「サブスタンス」でブレイクしたマーガレット・クアリー。 


どこまでも無邪気に純粋に振る舞い続ける主人公。
その姿が哀愁を誘う。
因みに、お相手が連れている男性は、「まだ駆け出しの映画監督ジョージ・ヒル」と紹介される。 


長年の映画ファンならご存知だろう。
後に、「明日に向って撃て!」や「スティング」、「ガープの世界」で大成功するジョージ・ロイ・ヒル監督である。 
ここにも、時代の波に押し流されたロレンツ・ハートの悲哀があるのだ。


最初から分かっていてそのつもりで観たなら良いが、苦手な人は苦手だろう。
何せ映画にあるのは、会話会話の連続。
それを楽しめて、映画にのめり込めるなら最高だ。


変幻自在のイーサン・ホークと、最強タッグのリチャード・リンクレイター。
玄人好みの大人の映画。
自分はどちらかというと、「6才のボクが、大人になるまで」や「30年後の同窓会」のようなうねりのある映画の方が好きだが、どうでしょう?









韓国映画が面白い!と日本にも知れた2000年頃、その先頭に立っていたのがパク・チャヌク監督だった。
バイオレンスを武器に、新作を発表する度に世間をあっと言わせた。
その頂点が「オールド・ボーイ」でのカンヌ国際映画祭グランプリ受賞。


「JSA」,「復讐者に憐れみを」、「親切なクムジャさん」、どれもが面白く、刺激的だった。
2022年の「別れる決心」でもカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、健在振りを見せつけた。
しかし、作品は以前よりも作家性が深まり、かつてあった無軌道な荒々しさがなくなり、物足りなさもあった。


原点回帰となったのが、新作「しあわせな選択」である。
しかも、イ・ビョンホンとソン・イェジンというトップ俳優の初共演。
イ・ビョンホンは、リストラされてライバル達を次々殺害しようと決意する暴走男の役。


パク・チャヌク監督らしさが爆発するかと思いきや、そうはならなかった。
男が地位回復のために身を削って奔走するバイオレンスである。
なのにこの映画、コメディ要素がやたら強い。


パク・チャヌク監督映画の魅力は、追い込まれた人間の衝動である。
それが今回は、男の滑稽さや悲哀が前面に出た。
よっていつもある張り詰めた緊張感がない。


時折挟まれるブラックな笑いにより、散漫な印象を受けた。
狙いは分かるが、パク・チャヌク映画の魅力が半減した。
監督のファンだけではなく、観客も今ひとつ乗れなかったはずだ。


パク・チャヌク監督だけでなく、「パラサイト半地下の家族」のポン・ジュノも、世界がターゲットになってから本来の魅力が失われている。
有無を言わせぬ迫力、我々に刃先を突き付けるような凄味が欠けている。
残念ながら、パク・チャヌク監督、原点回帰ならずだ。






第98回アカデミー賞受賞結果が発表された。

作品賞は「ワン・バトル・アフター・アナザー」、監督賞はポール・トーマス・アンダーソン。

これまで斬新な映像と尖った作風で批評家達を唸らせてきた彼の、正に集大成のような映画だった。



古くからある追跡劇を更にエンタテインメントに押し上げ、娘を守るために戦うという元革命家の物語だ。

白人至上主義と真っ向から向き合う、現代のアメリカの暗部を映した作品。

カーアクションも見所だ。



軍人をアグレッシブに演じたショーン・ペンが助演男優賞。

俳優達の名演が光ったノルウェー映画「センチメンタル・バリュー」は、国際長編映画賞を獲得。

家族の崩壊 と再生を描き切った。



他に「罪人たち」のマイケル・B・ジョーダンが主演男優賞、「ハムネット」のジェシー・バックリーが主演女優賞。

助演女優賞は「ストリート・オブ・ファイヤー」が懐かしい、大ベテランのエイミー・マディガン。

ハビエル・バルデムは「戦争反対」と書かれたバッチをつけ、壇上でメッセージを訴えた。



政治的発言は毎回のことだが、今回は特に現在のアメリカを憂いで、言わなければと決意して臨んだ者も多かったようだ。

映画で政治を変えるのは難しいが、果敢にトライは出来る。

発言しなければ、何も変わらないのだ。