女経

『女経』(1960年、脚本/八住利雄、原作/村松梢風、編集/中静達治、音楽/芥川也寸志 ← 3話共通のスタッフ)

 

増村保造、市川崑、吉村公三郎という大映が誇る3人の監督が、それぞれ若尾文子、山本富士子、京マチ子という、これまた大映を代表する三大女優とコンビを組んで展開するオムニバス映画。原作は村松梢風という作家の同名小説で、3話すべての脚本は八住利雄の手によりますが、3監督が組んでいるキャメラマンや美術スタッフは各作品で異なります。カチンコ


もちろん本編をDVD鑑賞まで駆り立てたのは、若尾文子出演の増村保造監督の作品を見たかったことが要因です。でも最初に書いてしまいますが、1960年のこのタイミングでは女優の風格という意味では、若尾さんはやはり3番目かな…。作品的にも増村監督の演出する第一話「耳を噛みたがる女」はイマイチで、私は市川崑監督の第二話が最も面白かったです。

 

女経

第一話「耳を噛みたがる女」(監督/増村保造、撮影/村井博、美術/山口熙)

 

若尾さんが扮するヒロイン紀美は貧しい家庭に愛想をつかし、銀座のキャバレーで男たちを巧みに騙しては金を巻き上げ、株を買っているという年に似合わぬしたたか者という設定。会社社長の跡取り息子・正巳(川口浩)は、この紀美を陥落させて見せると友人の春本(田宮二郎)と賭けをする。スポーツカーでのドライブなど、店外でのデート(?)を重ねる二人です。

 

やがて仲良くなった二人は酔った勢いでホテルへ。そこで正巳を好きでたまらないと言う紀美ですが、正巳はそれを彼女の手練手管と思い込みます。しかし、意外にあっさりと彼に抱かれる紀美。翌朝早く、彼女の眠っているうちにホテルを抜け出す正巳ですが、友人との賭けに勝った高揚感よりも、どうにもスッキリしない気分に包まれます。もしかしたら紀美は商売ぬきで本気に自分を愛していたのではないか…。その思いを確認するため彼女を探しに向かう。DASH!

 

すでに溝口健二監督の『赤線地帯』(1956年)で蓄財に励む、したたかな娼婦を演じている若尾さんです。キャバレー勤めで蓄財に励む本編では、恋愛に関しては意外に純情な面を見せます。でも、“お坊ちゃん”川口浩とあんなに簡単にベッドインするのは、どうなんでしょう(笑)。二人の友人役で登場する田宮二郎と左幸子、わずかな出番でしたが注目しました。

 

女経

第二話「物を高く売りつける女」(監督/市川崑、撮影/小林節雄、美術/渡辺竹三郎)

 

失踪した流行作家の三原(船越英二)は、湘南の海岸で白い肌の女・爪子(山本富士子)と出会う。数日後、一軒の別荘の前で彼女と再会した三原は、売りに出しているというその家を、彼女ごと買い取ると申し出た…。タイトルが「物を高く売りつける女」ですから、美貌の山本富士子が作家役の船越英二を巧みに騙す映画と思っていたら、最後に“ひとひねり”あります。軽いミステリー調の短編で、なかなか面白いです。さすが才人監督の市川崑ですね。合格

 

第三話の「恋を忘れていた女」で、主演の京マチ子が演じるのはかつて売れっ子芸妓だったお三津という女性。現在は、京都で修学旅行専門の宿と酒場とお茶屋を経営する、やり手の経営者。しかし、亡くなった夫の妹が結婚資金を借りに訪れても援助をせずに、つれなく彼女たちを帰してしまう…。商売にシビアで、情にほだされることのないヒロインのキャラは、京マチ子にとって“はまり役”に思えます。本編は恋心によってヒロインが“再生”する物語です。

 

第三話「恋を忘れていた女」(監督/吉村公三郎、撮影/宮川一夫、美術/柴田篤二)

女経

 

                     映画

 

今回のオムニバス映画『女経』のDVD鑑賞で、「増村監督×若尾文子」のタッグ作品で未見の作品は2本だけになりました。しばらく自宅でDVD鑑賞が続きそうですから、残りの2作品も鑑賞して“タッグ作品”を完全制覇したいです。(赤字の映画は各記事とリンクしています) グッド!

 

『青空娘』(1957年、脚本/白坂依志夫、原作/源氏鶏太)
『最高殊勲夫人』(1959年、脚本/白坂依志夫、原作/源氏鶏太)
『氾濫』(1959年、脚本/白坂依志夫、原作/伊藤整

『美貌に罪あり』(1959年、脚本/田中澄江、原作/川口松太郎)

『女経』[第一話・耳を噛みたがる女](1960年、脚本/八住利雄、原作/村松梢風)


『からっ風野郎』(1960年、脚本/菊島隆三、安藤日出男
『偽大学生』(1960年、脚本/白坂依志夫、原作/大江健三郎
『好色一代男』(1961年、脚本/白坂依志夫、原作/井原西鶴
『妻は告白する』(1961年、脚本/井手雅人、原作/円山雅也
『爛(ただれ)』(1962年、脚本/新藤兼人、原作/徳田秋声

『「女の小箱」より 夫が見た』(1964年、脚本/高岩肇、野上龍雄、原作/黒岩重吾
『卍』(1964年、脚本/新藤兼人、原作/谷崎潤一郎
『清作の妻』(1965年、脚本/新藤兼人、原作/吉田絃二郎
『刺青』(1966年、脚本/新藤兼人、原作/谷崎潤一郎
『赤い天使』(1966年、脚本/笠原良三、原作/有馬頼義

『妻二人』(1967年、脚本/新藤兼人、原作/パトリック・クエンティン)
『華岡青洲の妻』(1967年、脚本/新藤兼人、原作/有吉佐和子

『積木の箱』(1968年、脚本/池田一朗、増村保造、原作/三浦綾子)
『濡れた二人』(1968年、脚本/山田信夫、重森孝子、原作/笹沢左保
『千羽鶴』(1969年、脚本/新藤兼人、原作/川端康成

 

女経

 


にほんブログ村