久しぶりの更新ですが、何だか、九州電力の『やらせメール』問題、と称して大騒ぎしている人たちがいるようです:




電力株、総崩れ…耐性検査、「やらせメール」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110707-00000925-yom-bus_all



”7日の東京株式市場で、電力株はそろって急落した。

 終値は、関西電力が前日比133円安の1452円、中部電力が109円安の1442円、九州電力は110円安の1349円だった。東京電力は14円安の403円だった。

 政府が全原子力発電所に対するストレステスト(耐性検査)を実施する方針を示したことで、「停止中の原発の再稼働が当面困難になった」(大手証券)として、代替発電の燃料のコスト増が収益を圧迫することへの懸念が広がった。九州電力は、「やらせメール」問題の発覚で経営が混乱するとの見方も売り材料となった。

 また、夏場の電力不足で生産活動が低下するのではないかとの懸念から、トヨタ自動車や日産自動車など自動車関連の株価も下落した。”




***



肝心の番組を見ていないので、何とも言えないところもありますが、報じられていることを前提にすれば、いったいこの”やらせメール”の何がいけないのか、全く解せません。



まぁ、福島原発事故のせいで、たいていの人たちが「脱原発」「反原発」といえば、いかにも”いい人”に見えてしまうこと、というか、時流について何度も懸念を示してきましたが、今回の問題もその一つ、といえるでしょう。



なにか勘違いをしている人たちが、マスコミにも、政治・行政にも、そして世間にも多いようですが、「一部上場企業としての電力会社」である以上、利潤を極大化して株主に還元するのが最大の使命です。たとえ一部上場でなくとも営利企業であれば、ほぼ全ての企業が、自社製品・サービスについて「いいことは喧伝するが、デメリットやリスクについてはなるべく説明しない」ことは言うまでもありません。



最大の防御、はいわゆる『賢い消費者』になることであって、そのために買おうとする財・サービスについて、それなりに’知識を得よう’という努力が不可欠です。もし、難しくて分からない、というのであれば、その商品を買ってはいけません。



そして、電力のように買わない訳にはいかない公共財については、だからこそ、規制が必要なのであり、営利企業のリスク軽視の怖れに対して適切な規制を設けることは政治・行政の役回りである、といえるでしょう。



ハッキリ言えば、営利企業の商品説明や宣伝などについては、ほぼ全て、不十分なリスク説明しかされていないと考えるべきです。特にテレビでの宣伝(表向きそう謳ってあるかどうかは別にして)は、ほとんど全部、ヤラセと言っていい。普通の(といっても残念ながら、この国では、それ自体がかなり高度な、ということになってしまいますが)ディベート能力を持っていれば、そうした全ての宣伝に、「じゃあ、これはどうなるの?」と反論することは実に容易いことなのです。



それを大前提に、政治家や行政官は、もし、こいつらが悪意に立ったら、という『想定の下』必要な規制態様を考えて実行すべきなのです。信頼を裏切った、などと言う政治家・行政官はそれ自体が、自らの批判能力の欠如(だからこそ、「想定外」と簡単に言ってしまう)を暴露しているに過ぎません。



そんなことはありえない? いえ、そうではありません。例えば、不動産取引や金融商品取引においては、重要事項説明やリスク説明などの説明義務を課されています。それ自体が十分かどうか、は時代によって変わりますが、それ相応の規制はそこにある、わけです。



以前から繰り返していますが、この国において最大の問題は、カネの問題(金融商品でのトラブルは所詮、カネで解決できる問題に過ぎない)には大層、うるさく、事細かな規制が敷かれるのに、命や健康の問題(カネでは買えない)については、ほとんどザルのような規制しかないこと(例えば、ちょっと前の生肉問題など典型でしょう?)、そして、それを良しとしてきた国民・有権者が大半であること、です。



やらせメールで大騒ぎしている人たちは、自分たちが、徹底的に「甘えの構造」に浸りきった、馬鹿者であること、を自覚すべきでしょう。