本作は10枚目のリーダー作で、14曲すべてがSTEPHAN OLIVAのオリジナル曲。変拍子を多用し、シリアスな抽象表現によるメカニカルな演奏と内省的で哀愁漂う雰囲気の曲とがあって、概ねは綿密に構築されたスコアにもとづき、入念なリハーサルを経て録音された作品という印象。部分的にフリーフォームもありますが、無味乾燥にならず表現力が豊かで、トータルな作品としても素晴らしい内容なのではないでしょうか。今までになかった新しい何か、これからのジャズを模索し、可能性を試しているかのような音楽性です。このテのジャズは苦手と仰る向きもあろうかと存知ますが、このアルバムは凄いですよ!どの曲も全て素晴らしい出来。で、はっきり言ってめっちゃ私好みです♪
4曲目SPIRALESは、ソプラノサックスが主役。ユニゾンで始まりますが中間部はフリーフォームで、主役のソプラノサックスにベースとドラムが絶妙に絡みつき、ピアノとクラリネットが加わる頃には徐々に盛り上がってそれが最高潮に達するとユニゾンで終わるというエキサイティングな曲。
続くCERCLE OUVERTは、リズム、メロディ、ハーモニーが全くなく、クラリネットとソプラノサックスから放たれる奇妙に歪んだロングトーンと、ベースのアルコがさながら呻くようなズゴゴゴ...という音がドスの利いた低音のまま変化しつつ絡まりあって、神秘的で不気味な雰囲気が横溢しています。暗闇のなかを得体の知れない謎の大型生物が鈍く発光しながら目の前をゆっくりと移動し、さらなる深淵へと消えてゆくといった光景を思い浮かべてしまいました。
MOUVEMENT INTERROMPUは、極端に跳躍しながら高速で絡み合うバスクラとソプラノサックスのデュオが見事な小曲。
すぐあとに続くPARADOXEという曲は、バスクラとソプラノサックスのユニゾンで始まります。中盤、ベースとドラムのスリリングで息の合ったフリー・インプロヴィゼーションによるデュオが聴き物。BRUNO CHEVILLONのベースが光ってます!
PASSAGE EN MARGEは、複雑に入り組んだ変拍子で出来ているのか、それともフリーフォームなのかがはっきり分からないところが面白い。奇妙で変てこりんなピアノもたまりまへんが、そのSTEPHAN OLIVAの変態ピアノにどこまでも喰らいついてゆくドラムのNICOLAS LARMIGNATは偉い!
ELLIPSEは、めくるめく高速プログレ風アンサンブルで始まり、それが一転するとハードボイルドなピアノ、ベース、ドラムの重厚なサウンドに主役のドスの利いたクラリネットがかぶさり、やがて主役が変態ピアノへ移ると、めちゃくちゃのようだが実際はベースとドラムがしっかり支えているアンサンブルとなり、やがてもとの高速プログレ風アンサンブルに戻って終わりという、これまたカッコ良すぎの曲!痺れます。
このアルバムは、作曲の凄さや高密度なアンサンブルもさることながら、エキサイティングでダイナミックな楽曲群に、中東あたりの民族の香りただよう曲、静謐で落ち着いたムードの曲、哀愁漂うゆったりした曲などをはさみ、最初と最後に緊張感と牧歌的雰囲気の交錯する同じテーマを配するという、聴き終わったあとに強烈な印象と余韻を残す曲構成もまた憎心憎いばかりです。
寸分の隙も見せない緩急自在のこんな凄い演奏は、ながら聴きなんてとても出来たものではありません。各楽器の音を真剣に追いつつ、絶妙に絡み合うアンサンブルにどこまでも酔いしれてください。精緻で入り組んだ美しい幾何学模様のようでもあり、各人の熱演が目に浮かぶようでもある素晴らしい作品です。
御用とお急ぎでないかたは↓STEPHAN OLIVAのホームページへどうぞ。
http://www.stephanoliva.com/
■STEPHAN OLIVA / ITINERAIRE IMAGINAIRE (Sketch SKE 333042)
STEPHAN OLIVA (p)
MATTHIEU DONARIER (ss)
JEAN-MARC FOLTZ (clarinettes)
BRUNO CHEVILLON (b)
NICOLAS LARMIGNAT (ds)
入手先:HMV(通販)




