晴れ時々ジャズ -43ページ目

晴れ時々ジャズ

日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

双子のMOUTIN兄弟(1961年12月24日、フランスのパリ生まれ)を双頭リーダーとするMOUTIN REUNION QUARTETの3作目です。偶然ですが、兄のFRANCOIS MOUTINはTHE SYNERGY LIVE 2003(東京)のJEAN-MICHEL PILC TRIOで、弟のLOUIS MOUTINはアトリエ澤野コンサート2004(大阪)のGIOVANNI MIRABASSI TRIOでそれぞれの演奏を聴く機会がありました。
本作は、PRYSMというユニット名のピアノトリオ等で注目しているピアニストのPIERRE DE BETHMANN(1965年、フランスのボローニュ・ビランクー生まれ)が新たに参加ということで購入。
2作目から参加のRICK MARGITZA(1961年10月24日、デトロイト生まれ)はリーダー作もたくさん出していて、昨年はBOHEMIAというタイトルの民族色濃い毛色の変わったリーダー作を出しています(実はちゃんと聴いていない)。

この4人はそれぞれに実力のある人たちですから演奏は折り紙付き。全11曲のうちCHARLIE PARKERのメドレーを除き、あとはMOUTIN兄弟のオリジナル。都会的で近未来志向の、ダイナミックな演奏を聴かせている本作品の傾向は1作目と2作目(なぜかどちらも持っていたり)の印象と大きく変わっていませんが、少しずつ進化しているのではという気がします。
3曲目のMOUTIN兄弟のデュオで演奏されるBIRD'S MEDLEYは、BIRDことCHARLIE PARKER(as)のメドレーらしいのですが、曲名までは分かりません(-_-;) LOUISが素手でドラムを演奏する、楽しげで緊張がほぐれる曲で、兄弟だけに息の合った演奏はさすがです。そういえば、1作目と2作目にもこういう趣向のデュオがありましたし、昨年のGIOVANNI MIRABASSI TRIOの公演でも、スタンダード曲のYESTERDAYSではLOUISが素手でチャチャチャのリズムを打ち出し、その視覚効果もあいまって会場が盛り上がっていました。
軽やかな7曲目のTOMCATはLOUIS MOUTINの作曲。RICK MARGITZAとPIERRE DE BETHMANNのソロが聴き応えあります。
FRANCOIS MOUTIN作曲のECHOINGは、クリスタルのように響く高音域のベースを効果的に配し、ベースラインが特に際立っている美しいナンバー。ガンガンに攻めまくるエキサイティングな曲よりも、どちらかといえばこの7曲目や8曲目のように落ち着いた雰囲気の曲のほうが私は気に入っています。
エキサイティングな9曲目のBOTTOM LINE-PART 1とPART 2は1拍の1/4のところで入るアクセントが気持ち良く、FRANCOIS MOUTINのベースワークが凄いです!
あの~...少々厳しいことを申しますと、楽曲がいまひとつ練られていないのと(3作通して聴くと)テーマが似たり寄ったりの印象やなぁという感じがしないでもありません。しかしながら、変拍子を取り入れ、無機的でかっこ良いフレーズやリフが満載の凝った曲作りで演奏そのものは良いですので、硬派で男前なジャズがお好きなかたはエキサイティング出来てよろしいのではないか。

それにしても、この人たちの演奏はおうちでCD聴くんじゃなくて、ライヴのほうが断然迫力があって面白いと思いまーす!!はいはい、分かっていますとも。どうせどこも招聘してくれそうにないってーことは。
FRANCOIS MOUTINは癖のあるプレイヤー(あるいは楽曲)にも臨機応変に反応出来る勘の鋭さがありますし、速いパッセージや重音を楽々と弾きこなす変幻自在な演奏はかなりのもんです。ついついベースに耳がいってしまう私にとっては、この作品でFRANCOIS MOUTINのベーシストとしての素晴らしさを再認識させられることになったしだいです。
御用とお急ぎでないかたは↓MOUTIN REUNION QUARTETのホームページへどうぞ。
             http://moutin.com/

■MOUTIN REUNION QUARTET / SOMETHING LIKE NOW (NOCTURNE NTCD375)
FRANCOIS MOUTIN (b)
LOUIS MOUTIN (ds)
PIERRE DE BETHMANN (p, Fender Rhodes)
RICK MARGITZA (ts)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)

11月12日、大阪のフェスティバルホールで行われたシャルル・デュトワ指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏の《ロメオとジュリエット》(抜粋)と《春の祭典》を聴いてきました。
え~、前もってお断りしておきますが、私はたいしたことは書けません。なにしろ都会のホールで聴く本格的なクラシック公演は20年振り(!)なんですから。20年前に聴いたのも、覚えていることといったら、会場が大阪のシンフォニーホールで、演奏されたのが弦楽による室内楽だったことぐらいで、曲目がなんだったかは完全に忘れてしまっています(-_-;) しかも私は“ド”のつくクラシック音痴で、家にあるのは「春の祭典」が2枚、「火の鳥」が1枚のほか、フランスの近代物少々と息子のために買い与えたベートーヴェンの「月光」ぐらいという情けなさです。

それなのに今回、この公演へ行ったのは、クラシック音楽のなかで私が唯一大好きなストラヴィンスキーの「春の祭典」を一度生で聴いてみたかったから。(厳密にいうと「春の祭典」は古典ではなくて近代~現代音楽に分類されるのでしょうね)
私が「春の祭典」を大好きな理由は、一言でいうと刺激的だからです。強烈なリズム、変拍子、不協和音、大胆かつ精緻なスコアによって、不安、神秘、恐怖、官能の美を余すところなく表現している。そういった非日常を音楽で体験できて、これほどまでに面白くかつ芸術的でしかも分かりやすい音楽がこのジャンルにおいて他にあるでしょうか。
「春の祭典」を初めて聴いたのは私が高1の頃だったと思います。ピエール・ブーレーズの指揮とクリーブランド管弦楽団の演奏によるもので、たまたまつけていたNHKのFMで全曲を通して聴くことが出来ました。のちに同じNHK・FMの別の番組で「春の祭典」の一部分をいろんな指揮者と演奏者で聴き比べをするという企画を耳にする機会もありましたが、私にはブーレーズ指揮のクリーブランド管弦楽団が最高に思えました。当時、ツェペリン、ザッパ、イエス、クリムゾンなどなどを聴いていた私の心を奪った「春の祭典」の印象は強烈で、ロックが生まれるずっと以前に、実はこんなに凄い音楽があったんだなぁと感動したのを覚えています(ずいぶんあとになって、ザッパが少年の頃、ストラヴィンスキーなどの現代音楽に心酔していたことを知って納得)。指揮者ピエール・ブーレーズとクリーブランド管弦楽団の名前はしっかりと私の脳内にインプットされたものの、実際にそのアルバムを買ったのはずいぶんあとになってからのことです。

さて第一部の《ロメオとジュリエット》の演奏が始まってまず思ったのは、弦がもの凄く粘っこく響いているということ。これは、私が普段ジャズばかり聴いているせいにちがいありません。つぎに感じたのが、楽器(特にバイオリン属)の音が目に見えるということです。
普段は家のオーディオ装置でジャズなどを聴き、たまにはライヴにも出かけたりしますが、ジャズですと特別な場合以外はほとんどがPAを通した音を聴く訳ですから、場合によってはPA最悪で、「これやったら家のオーディオでCD聴いてるほうがマシやん。」というようなこともたまにあります。一方、クラシックの公演では当然PAがありませんので、今回は演奏が始まったとたんに、楽器から発せられてダイレクトに耳に届く生音を強く意識することとなりました。
たとえば、ヴィオラがハーモニーを奏で始めると、ちゃんとヴィオラ奏者達のいるその場所に倍音をたっぷり含んだ曇ような音のかたまりが出来る。チェロが演奏し始めるとチェロ奏者達のいる場所に音の曇が出来、それらはデクレッシェンドとともに消えていく。あちこちのパートで、音が生まれてはだんだん大きく雲のようなかたまりとなり、それがしだいに小さくなって消えていく様子がまるで映像のようにこの目で見える気がして、考えてみれば当たり前のことなのかもしれませんが「あ~、これが生音というものなのだな~!」と音楽の内容とは関係のない妙なところで感心してしまいました。このように“音”が目に見えるという感覚はおそらく今回が初めての経験だったので、ちょっとびっくりでした。

肝心の演奏ですが、デュトワの指揮によるチェコ・フィルの演奏は非常に洗練されていて、そのうえ表現力も素晴らしいと感じました。途中、感動で涙出そうになりましたもん。うまく言葉で表現できないのが残念ですが、とても満足しました。

さて、今回のお目当てである第二部の《春の祭典》は素晴らしかったです。デュトワの指揮は、ここでもやはり非常に洗練された演奏を生み出しているという印象で、その点ではブーレーズの指揮と共通するところがあるのではと思いました。
おそらく難曲の部類に入ると思われるこの曲を、100人もの奏者が心をひとつにして演奏し、表現し、聴衆に伝えるということは考えてみれば大変なことです。この曲で、あっさりと、しかも洗練された演奏をするというのは、実は凄いことなのではないか。お手本のような演奏というと語弊があるかもしれませんが、「何も足さない。何も引かない。」という昔あったウィスキーのTVコマーシャルの惹句を良い意味に解釈するならば、デュトワとチェコ・フィルによるそういった演奏は、《春の祭典》を初めてコンサート会場で聴く私にとっては良かったのではないかと思います。
一方で、ワレリー・ギルギエフ指揮、キーロフ歌劇場管弦楽団演奏による濃~い原始性や荒々しいまでの野性味をも表現した《春の祭典》というのも私はけっこう気に入っているのですけれどね。機会があれば、是非ワレリー・ギルギエフ指揮の演奏もコンサート会場で聴いてみたいものです。
*余談ですが、今回の公演で気になったことをひとつ。それは客席の雑音です。ジャズなどのライヴではそうそう気にならない客席のたてる様々な音も、ピアニッシッシモからフォルティッシッシモまでのダイナミクスを行き来するクラシックとなると話は別です。斜め後方に座っていた人の膝に乗せられていたと思われる本だかなんだかが入ったプラスティックバッグのバリバリ、ガサガサいう音は非常に耳障りでした。そういうのはあらかじめ座席の下に置いておくか、いっそのことクロークに預けておいてから着席して欲しいと思ってしまいました。
第一部で「タイボルトの死」が終わったとたん、2、3人の拍手のフライングがあったのはちょっと残念。演奏が終わって残響が消えないうちの拍手もどうにかならんものかと思うのですが、まぁ、あんまりうるさいことをいうといけませんね。ハイ(;^_^A

指揮:シャルル・デュトワ
演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
第一部 プロコフィエフ バレエ《ロメオとジュリエット》より「モンターギュ家とキャピュレット家」「少女ジュリエット」「マドリガル」「メヌエット」「仮面」「ロメオとジュリエット」「タイボルトの死」「ジュリエットの墓の前のロメオ」
第二部 ストラヴィンスキー バレエ《春の祭典》
アンコール チャイコフスキー バレエ《白鳥の湖》
日時:2005年11月12日(土) 午後5時開演
会場:大阪 フェスティバルホール
リーダーのMANU KATCHEは1958年10月27日生まれのアフリカ系フランス人ドラマー。STING他多くのアーティスト達の作品に参加し、リーダー作も出しています。近年はJAN GARBAREKのECM作品などで活躍し、そのECMレーベルからは初リリースとなる本作は、ECMの看板アーティスト達と共演するいう豪華さに加え、全曲がMANU KATCHEのオリジナルという意欲作。
TOMASZ STANKO(1942年7月11日、ポーランド生まれ)と、STANKOお抱えの若手、MARCIN WASILEWSKIとSLAWOMIR KURKIEWICZというのは私にとって興味深い顔ぶれですが、MANU KATCHEとJAN GARBAREK(1947年3月4日、ノルウェイ生まれ)の演奏を聴くのはこれが初めてです。ジャズ度が低くフュージョン度の高い洗練された大人の音楽という感じになっていて、ながら聴きしていても気持ちいいのですが、じっくりと聴き込んでみてもなかなか素晴らしい作品だということが分かります。私にとってはSTANKO、WASILEWSKI、KURKIEWICZのまた別の顔を知ることにもなりましたが、こういった作品においても、この3人が自分のカラーというものをさりげなく出しているところ、なかでも特にSTANKOの存在感は特別といった感じがしてやはり凄い人なんだなと思いました。
MANU KATCHEはもともとロック畑のドラマーということですが、いわゆるオーソドックスなジャズの手法ではないにしても、どことなくユニークな叩き方をする人で、うまく説明できないのですが、ふつうならこうは叩かないだろうなという意外な感じを何度か受けました。小径のシンバルを複数使用しているらしく、繰り出される音までもがユニークに聴こえます。個人的にはMANU KATCHEのドラミングは大好きとまではいかないものの、客観的には演奏も作曲も良いです。
一番のお気に入りは9曲目、GARBAREK抜きのカルテットで演奏されるMILES AWAY。KURKIEWICZのハードボイルドなベースのリフが痺れる6/8拍子の曲で、STANKOのソロは渋カッコええわ、WASILEWSKIのニヒルなピアノの即興(バッキングも素晴らしい)がこれまたええわで、文句のつけようがありません。この曲のMANU KATCHEが一番好きかも。
7曲目のLOVERY WALKは、いくぶんかのんびりしたテーマで、スリリングなGARBAREKとWASILEWSKI、渋いSTANKOのソロとをサンドイッチにした曲。GARBAREKのテナーはどちらかといえば鋭角的な音色ですが品性があり、かなり抑制の効いた演奏で、低音から高音まで凄く安定しています。MANU KATCHEのドラミングも光っていますね。
2曲目のNUMBER ONEで、途中1:23あたりのウッドベースはオーバーダビングですよね?(もしそうでないとしたら、そらもうエライことですよ!)
この盤も録音が良いので、曲によってはMANU KATCHEの奥行きのあるドラミングと深いタムの響きやウッドベースの生々しさまでもが堪能できるのが嬉しいです。夜、暖房の効いたお部屋で照明を落としてゆったりとした気分で聴くと最高なんじゃないでしょうか。あ、小さい子供さんのいるお家のかたは、その子をちゃんと寝かしつけて寝息を確認してからにしましょうね。
御用とお急ぎでないかたはMANU KATCHEの↓ホームページへどうぞ。
                http://www.manu-katche.com/
■MANU KATCHE / NEIGHBOURHOOD (ECM Records ECM 1896)
TOMASZ STANKO (tp)
JAN GARBAREK (ts)
MARCIN WASILEWSKI (p)
SLAWOMIR KURKIEWICZ (b)
MANU KATCHE (ds)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)
♪The falling leaves drift by the window,
  The autumn leaves of red and gold.
  - 以下略 -
あ~、秋ですね~。
今日、ようやくチューリップの球根とヴィオラの苗を買ってきました。あと、パンジーの苗も買わなくては。やはり、家の周りには花がないとちょっと寂しい。
トランペット
写真の花は庭に咲いていたシュウメイギク(秋明菊)です。残念ながら切花には向かないのですが、一本だけ切ってきました。庭には白っぽいクリーム色のもあります。
TOMASZ STANKOのCDを3枚買いました。
■TOMASZ STANKO / BALLADYNA (ECM) (未聴)
■TOMASZ STANKO SEPTET / LITANIA - MUSIC OF KRZYSZTOF KOMEDA (ECM) (未聴)
■TOMASZ STANKO / FROM THE GREEN HILL (ECM) (未聴)
早よ買うとかな入手困難になってしもたらあかんからね(*^^*ゞ

今後の新盤紹介はこのようになっております。
■ENRICO RAVA / TATI (ECM) (未聴)
■MOUTIN REUNION QUARTET / SOMETHING LIKE NOW (NOCTURNE) (未聴)
■MANU KATCHE / NEIGHBOURHOOD (ECM) (聴きまくり中)
で、昨日、久し振りに新盤チェックしていたら、知らないあいだにフランス物がいっぱいリリースされているではありませんか。
むむむ、この3枚はどうしても欲しい!
●BELMONDO, YUSEF LATEEF / INFLUENCE (B FLAT)
●DANIEL MILLE / APRES LA PLUIE (abacaba/Universal Music France)
●STEPHANE HUCHARD / BOUCHABOUCHES (NOCTURNE)
そや、来週大阪へ行ったら、忘れんと来年の手帳とカレンダーも買うとかな!
...といった具合で、私の場合は、哀愁やロマンのかけらもない“物欲の秋”なのでした(-_-;)

私がこのブログを始めたのが5月17日のこと。オラシオさんとしぶちゃさんにお近づきになれたのが6月の初め頃だったと思う。7月に、お2人が「スタンコが来る!」といって騒いでいらした時にも、私などは「スタンコって誰?」という具合で、さほど興味はなかった。ポーランドのジャズにしたって、7月になってからNAHORNY TRIO / DOLCE FAR NIENTE ...I NIC WIECEJをジャケ買いして聴いたのが初めてだったのだ。
今から述べることの全ては、オラシオさんのブログで、ECMからリリースされているTOMASZ STANKO QUARTETの二枚とMARCIN WASILEWSKI TRIOの一枚が紹介されていた記事を私が読んだことがきっかけで始まったことだ。オラシオさんのこの記事がなかったら、私はMARCIN WASILEWSKI TRIOのCDを聴いていなかったかもしれない。が、聴いてしまったからサァ大変(笑)
MARCIN WASILEWSKI, SLAWOMIR KURKIEWICZ, MICHAL MISKIEWICZ / TRIO(ECM)の記事を公開したあと、すぐにTOMASZ STANKO QUARTETの二枚を注文し、続いてMANU KATCHE / NEIGHBOURHOOD(ECM)も予約した。すぐに届いたSTANKOのCDはしばらく開封もぜずに放っておいて、相変わらず毎日のようにMARCIN WASILEWSKI TRIOばかり聴いていたのだが、聴けば聴くほどに素晴らしくなってくる一方だし、どうしてもこのTRIOのことが気に掛かってしかたがない。とうとう私はTOMASZ STANKO QUARTETのライヴが行われる東京の駐日ポーランド大使館のホームページを捜し出し、問い合わせのメールを送ってしまった。
あきらめていた頃に大使館から返事が来たのが10月6日のことだ。で、TOMASZ STANKO QUARTETのCDを聴いたのはその日が初めてだったから、大使館ライヴのわずか3週間前だったことになる。全てが急展開で、あれよあれよというまに、こんな一夜漬けのにわかSTANKOファンともいえないような私がSTANKOのライヴを体験することになったのは、オラシオさんとしぶちゃさんのお陰だったと思っている。お2人には本当に感謝しています。ありがとうございます。今回の「日本にもこんなコアなポーランドジャズファンがいるのだぞ大作戦!」は全てオラシオさんとしぶちゃさんのブログが発端となって生まれたのだ。非常に運が良かったのだとも思うが、私はたんにお2人のおこぼれを頂戴したに過ぎない。以下はその「大作戦」の様子を綴ったものだ。長文に加え、非常に個人的なことも併せて書いているところもあるが、その辺はどうかお許しいただきたい。
____________________

いよいよ東京へ行く日がやってきた。だが「大作戦」の前にぜひともやっておかねばならないことがもうひとつだけあった。
大使館でしぶちゃさんと会うことになっていることや「大作戦」のことを夫はまだ知らない。実をいうと夫は、私がブログを書いていることさえ知らないのだ。私のブログは、私の友人、知人、私と夫に共通する知人、高校時代の恩師など16人ほどに宣伝してあるが、肝心の夫には知らせていない。
京都駅へ向かう在来線の電車の中で夫に全てを話した。私がブログを書いていること。オラシオさんのこと。しぶちゃさんのこと。そして「大作戦」のことなどこれまでの経緯を全て。
夫がこれを聞いてどんなにびっくりするだろうと楽しみにしていたのだが、ちっともびっくりしてくれなかったので少々あてがはずれた。まぁ、人間、50年以上も生きていると、ちょっとやそっとのことでは驚かないのも確かだ。夫はこう言ったのだ「大作戦なんかより、パソコン音痴の君にブログが出来るということのほうがよっぽど驚きだ。」と。 >┼○ バタッ!ああ~、エアコンのタイマー設定さえ出来ない(というかただ面倒なだけ)夫にそんなふうに言われてしまう私って...。でも、まぁ、いいとしよう。夫はただ私に同行してくれるだけで大作戦に参加する訳ではないのだが、今回の宿泊費用だけが私持ちで、あとは全て夫が持ってくれているのだ(^▽^;) 夫は音楽無しでも生きていける人種で、私が普段聴いているジャズのことなど全然知らないのだが、いつも私と一緒にコンサートを付き合ってくれることだし。いや、そうではなくて、私を放し飼いにしておくのが心配だからかもしれないが。
東京へ向かう新幹線の中で夫に大作戦用のファイルを見せると、「しかしこのオラシオさんっていう人は凄いねぇ。」としきりに感心していた。ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう。いよいよ今夜はスタンコ氏に会って、このファイルをその手に渡すのだよ。あ~、ドキドキする。

ホテルに着くとまず部屋を居心地良く散らかしてしばらくゆっくりしたあと、洋服を着替えて「大作戦」用の荷物(ぬかりはないか何度も確認した)を持ち、いったん恵比寿ガーデンプレイスの一角にある東京都写真美術館へ。ここで内外の現代作家の写真作品をゆっくりと鑑賞したあと、なぜかひどくハワイアン丸出しの喫茶店へ入ってお茶をすませてから、いよいよここを出ることにした。ハワイアンムード100パーセントからポーランド大使館モードへの切り替えがうまくいくだろうかなどと夫と冗談を言いあいながら。

駐日ポーランド共和国大使館は恵比寿ガーデンプレイスからタクシーで3分ほどの閑静な住宅街の一角にあった。到着したのは6時35分頃だったと思う。

エントランスで招待状を提示し、大使館のロビーへ入る。クロークの向かいのテーブルにはヨーロッパ連合の旗、ポーランド共和国の国旗、日本国旗のそれぞれミニチュアと、ヨーロッパバイソン(絶滅危惧種)と思われる大小のぬいぐるみが飾られていた。ぬいぐるみの頭をひとなでしてからさらに進み、会場となる講堂へ通じる螺旋階段を降りきる一歩手前のところで、恰幅のよい白髪の外国人男性に呼び止められてしまった。なるほど、ここは第二の関所としては実におあつらえ向きの場所ではないか。名簿らしきものをチェックするが、私達の名前が見つからない。外国人男性がどこの所属だ?と聞いているようなので、すぐ横にいた若い日本人男性に、一般として招かれた旨を伝えると外国人男性も納得したようで、私たちはようやく開放され、前の方へ座ってくださいと言われた。あとでしぶちゃさんに教えてもらったところによると名簿をもっていた外国人男性はオーストラリアのプロモーターということだ。ということは私たちは業界人と間違われてしまったのか?そうだとしたら、きっと夫がはやしているヒゲのせいだ(-_-;)


講堂の奥にステージが見える。前列の指定席のすぐ後ろの一般席の左側に、しぶちゃさんらしき人物を発見しアプローチ。しぶちゃさんはブログのイメージそのままの、穏やかで優しい表情をした好人物だった。今日初めてお会いしたというのに、そうとは思えないほどにこのシチュエーションがごく自然なことのように感じられた。挨拶とお互いの紹介をして、私たちはしぶちゃさんのすぐ後ろに座った。

時間がたつにつれて、真っ赤(なぜだ?!)なテーラードジャケットを着た日本人のおじさん、いかにも高級そうできらびやかなスーツをまとった妙齢のご婦人、地味なスーツを着た若い日本人女性、若い日本人のカップル、香水の匂いを漂わせた外国人女性、紫色でフリンジのついた派手なジャケットを着て頭をドレッドヘアーにした痩身ですごく背の高い黒人のお兄ちゃん、スーツ姿の外国人男性などなど、国籍も、服装も、老若も入り乱れて様々な人たちが次々にやって来る。う~む、さすがは大使館。どういう関係かフランソワーズ・モレシャンさんの姿も見かけた。そういえばモレシャンさんは、5ヶ国語だか6ヶ国語を話すことが出来ると聞いたことがある。こうして見た限りでは、一般として来場したのは私たちだけではないようで結構大勢いるように思われた。開演前になって例のプロモーター氏が現れ、英語でTOMASZ STANKO QUARTETの紹介をし、また、このライヴがプロモート目的であることなどを説明して、いよいよライヴが始まった。

   ライヴについては、10月30日の記事「ライヴリポート編」をご覧ください。

終演後、大使館の二等書記官ボジェナ・ソハさんと思われる女性が登場し、ここは今からレセプション会場となるための準備をするので、それぞれ荷物を持って少し移動してくださいというようなことを告げたが、あまりに流暢で完璧な日本語(第8回各国大使館員日本語スピーチコンテスト2005で受賞されている)だったのですっかり感心してしまった。続いてプロモーター氏による挨拶のあと、レセプションの準備が始まったとたん、たちまち狭い会場はポーランド語、英語、たどたどしい英語などの話し声でいっぱいになった。会場の人口密度は異常に高く、場所を空けようにもそのスペースさえないほどなのだが、折りたたみ式の丸テーブルが出され、外国人女性がトレイに載せた飲み物を配り始めた。
しばらく所在無く立ちつくしていると、しぶちゃさんが私達におみやげを渡してくださった。ラ・メゾン・デュ・ショコラというフランスの超高級チョコレート専門店のアマンドショコラ(キャッ!嬉しい)。私も昨夜焼いてクリアバッグに包んでおいたナッツがたっぷり入った手作りクッキーをしぶちゃさんに差し上げる。

大作戦については、会場の様子を見て臨機応変にということになっていたのだが、この様子だと実行してもよさそうな雰囲気だ。そろそろしぶちゃさんとともに大作戦を開始することにした。あ、マルチン君(p)が暇そうにしている!ということで、まずは彼から攻めてみようということになった。「Excuse me, Mr. Wasilewski.」と声をかけ、挨拶して「This is for you.」とプレゼントを渡すと快く受け取ってくれて早速びりびりと包みを開け、「これはどうやって使うの?」と質問してきた。すぐそばにミハウ君(ds)もいるのに気がつき、彼にもプレゼントを渡す。「手を拭いたり、汗を拭いたり、頭に巻いてもいいです。」と説明すると、2人は「きれいなプリントだね。」とかなんとか口々に言って、マルチン君が「これ、いいね。僕、さっそく使ってみることにするよ。」と言ってくれた。私が「Will you give me your autograph, please ?」(この文句だけはスラスラと言えるのだ)と言ってサインをお願いすると、マルチン君がマジックペンを持ったまま「今日は25日かい?」と聞くので、「いえ、26日です。」と言うと「26日だね。え~26日、TOKYOっと。」と言いながら書いてくれた。マルチン君に握手を求めたら(外国人男性は女性に対して自分からは決して握手をしないものなので、こちらから要求しないとだめなのだ)ちょっと恥ずかしそうに笑いつつも気軽に応じてくれた。マルチン君の第一印象はいかにもシャイな感じだったが、色白でスキンヘッドの童顔は外国人版一休さんみたいで笑顔が可愛らしく、4人のなかでは最も気さくで陽気な人物という印象へと変わった。

さぁ、いよいよ御代トマシュ・スタンコへアプローチする時がやってきた。しぶちゃさんと一緒にそちらへ向かう。
ここへ来るまでは、スタンコ氏が気難しく近寄りがたい人物だったらどうしようかと思っていたのだが、全然違った。ライヴが始まった時点で、スタンコ氏が優しい心の持ち主であることが分かる場面がいくつかあったし、控えめで穏やかな性格という印象を受けていた。演奏が終わった今、スタンコ氏は優しい笑みを浮かべて私達のすぐそばに立っている。こんなことをいうと変かもしれないが、強烈なオーラが発散されているという訳でもなくて、スタンコ氏の発する言葉も一言か二言ぐらいしか聞いていないにもかかわらず、凄く人間味に溢れた人物という印象を受けた。
ああ、それにしても私、スタンコ氏に「バルヅォミ・ミウォ。」(お会いできて嬉しいです)という挨拶をちゃんとしただろうか?全然覚えていない(-_-;) 「Thank you for your superve performance.」とかなんとか言わなくてはと思っていたのに、言わなかったような気がする。それでもなんとか大作戦用ファイルとプレゼントを渡したことだけは覚えている。それからしぶちゃさんが助け舟を出して大作戦用ファイルの説明をしてくれたら、スタンコ氏が理解してくれたようだったことも。スタンコ氏に「Will you give me your autograph, please ?」と言ってサイン帳にサインを貰ったことさえ忘れて、あとでしぶちゃさんと2人で確認しなければならなかったというていたらくだった。


TOMASZ STANKOのサイン   トマシュ・スタンコのサイン


年季の入ったミュージシャンはさすがに達筆で感心する。ページの真ん中に美しいラインで描かれたスタンコ氏のサイン。美しい演奏をするヴェテランのミュージシャンはサインまでもが美しい!言っちゃ悪いが、ほかの三人のサインがミミズの這ったあとみたいに見えてしまうのだった。


TOMASZ STANKO   トマシュ・スタンコ


スタンコ氏を真ん中にしてしぶちゃさんと私の三人を撮影してくれたのは夫だ。スタンコ氏にぴったりとくっつくようにして写真に納まった。私、このあとスタンコ氏と握手しただろうか?これまた全然覚えていない(T_T) 本当はもっといろんなことを話したかったのだが、一部のファンがスタンコ氏を独占してはいけないという感じがしたので、お礼を言ってその場を離れた。「一応、作戦成功ですね!」という感じで、笑いながらしぶちゃさんと顔を見合わせ、頷きあったのは覚えている。どうかオラシオさんのポーランドジャズへの熱い想いがちゃんとスタンコ氏に伝わってくれますようにと願った。


SLAWOMIR KURKIEWICZ   スワヴォミル・クルキェヴィチュ


テーブルの上にはすでにカナッペやケーキの乗った大皿が置かれているが、この際、食べたり飲んだりは後回しだ。
さぁ、次なるターゲット、人ごみを掻き分けるようにして会場の真ん中あたりにいるクルキェヴィチュ君(b)に接近。近寄ってみるとクルキェヴィチュ君は体が大きい!手も大きい!腕も太い!胴回りも太い!(少し太ったのか?)だが、三人のなかでは一番シャイで控えめな印象を受けた。優しい目が笑っている。プレゼントを渡してサインを貰う。クルキェヴィチュ君はその大きな体に似合わず、ページのはじっこにこじんまりとサインをしてくれた。
しぶちゃさんはベーシストだからクルキェヴィチュ君に何か質問しているようだ。あ、お互いの手のひらを合わせて比べっこしている(笑)こうして比べてみると、やはりクルキェヴィチュ君の手はすごく大きい!やはり、ウッドのベーシストは背が高く、手も大きいほうが演奏上は有利なのだろうな~。しぶちゃさんの話によると、クルキェヴィチュ君の使用しているウッドはフルサイズということだった。


ウッドベース   スワヴォミル・クルキェヴィチュのウッドベース


ドラマーのミハウ君にまだサインを貰っていなかったことに気づき、ミハウ君にもぬかりなくサインを貰う。ここで、急に喉が渇いていることに気がついたので、ケータリング会社から派遣されたと思われるおばちゃんに頼んでグラスにミネラルウォーターを入れて貰った。

可愛らしくあどけない外国人の子供が2人チョロチョロしているのを横目で見ながら、最後に二等書記官のボジェナ・ソハさんに接近する。「Excuse me, are you Ms. Socha ?」と聞くと彼女は「Yes.」と言って笑顔で首を少し傾けた。私が「バルヅォミ・ミウォ。」と挨拶すると分かってくれたようで笑顔が急に大きくなり、ポーランド語らしき言葉でなにやら答えてくれた。が、さっぱり意味が分からなかった(^▽^;) そこでたどたどしい英語で「私は○○と申します。あなたにメールをしたら招待状を送ってくれた。私たち夫婦をお招きくださってありがとう。」というようなことを伝えると「オー!」と言って頷き、彼女の目が急にまん丸になったのだが、分かってもらえたのだろうか。そこで「This is for you.」とプレゼントを渡し、「I hope you'll like it.」と言うと彼女はますます笑顔になって「Thank you !」と受け取ってくれて「これはなんですか?」と日本語で尋ねてきた。あ、すっかり忘れてた。ソハさんが日本語堪能なことを(;^_^A 今度は日本語で「日本の美しい自然の風景を撮影した写真集です。」と答えると、またまた「オオー!」といって喜んでくれているようだったので安心した。「ソハさんは日本語が大変おじょうずなんですね。」と言おうとしたが、一瞬の隙をつかれてドレッドヘアーの黒人のお兄ちゃんがソハさんと楽しげに話し始めたので、その場を離れ、その後はしぶちゃさんと私と夫の三人でしばし歓談した。この頃になると、カナッペもケーキも全て売り切れて、空のお皿や飲みかけのグラスがむなしくテーブルに乗っているだけとなった。

9時をとっくに過ぎて、いつのまにか招待客も半分ほどに減ってしまったがレセプションが終わる気配はない。その後もしばらくは夫と2人でおしゃべりしていたのだが、知り合いと見受けられる男性とお話していたしぶちゃさんにいとまを告げ、螺旋階段を上り、ロビーに飾られたヨーロッパバイソンのぬいぐるみをもう一度なでてから、小雨の降る夕闇のなか、私たちは大使館をあとにした。宿泊先のホテルへ帰るあいだじゅうずっと、私の頭のなかでトマシュ・スタンコ・カルテットの曲、SUSPENDED VARIATIONS Ⅱがいつまでもいつまでも鳴り続けているのだった。
__________________________


以下は、実に個人的なことで恐縮なのだが、もしお暇ならもう少しお付き合いいただきたい。

スタンコ氏にプレゼントしたのは、滋賀県出身の写真家、今森光彦の 『里山の道』(新潮社)。この写真集は湖国、滋賀県の里山の美しい自然や小さな生命、そこに生きる人々の暮らしを撮影したものである。この写真集をスタンコ氏のプレゼントに選んだのには訳がある。初めて訪れた日本という国を知ってもらうには、写真が一番手っ取り早くて分かりやすいと思ったからだ。スタンコ氏はおそらくこのあと、観光などする暇もなくあわただしく移動するに違いない。次の国へと向かう飛行機の中で、この写真集を広げて眺めながら、今回初めて一瞬だけ降り立った日本という国に思いを馳せてくれたら嬉しい。そしてスタンコ氏にとってこの写真集が、ハードなツアーの最中、つかのまの安らぎとなってスタンコ氏を楽しませてくれればと思う。

私はトマシュ・スタンコの日本ツアーがぜひとも実現してほしいと願っている。そして、トマシュ・スタンコの素晴らしい音楽が、大勢の日本人の耳に届くことを願っている。スタンコの音楽の良さが分かるまでには少し時間が掛かるかもしれないし、人によってはある程度の根気や忍耐といったものも必要かもしれない。現に私がそうだったから。だが、いったんその素晴らしさと美しさが少しでも感じられたなら、その人はきっとスタンコの音楽に夢中になってしまうことだろう。彼の音楽にはそういう“力”があると私は信じている。それがなんなのかは私にもはっきりとは分からないのだが、この先もずっと色褪せず、輝き続ける宝物のような音楽、スタンコの創り出す音楽とはそういうものだと思う。私はトマシュ・スタンコの音楽の一端に触れることでその素晴らしさをほんの少しだけ知ることができ、そのうえライヴを体験するというめったにない幸運にも恵まれた。ジャズファンとしてこれ以上はないほどの幸せをようやく実感としてかみしめられるようになったこの頃だが、今も相変わらず毎日のように聴いているスタンコの音楽から、当分のあいだは離れられそうにない。

会場  開演前の会場


駐日ポーランド共和国大使館の地下にある講堂は奥行きが長く、並べられた椅子は120あまり。開演間近になると椅子に座りきれない聴衆が何十人も吹き抜けの螺旋階段の途中まで溢れていた。私は前列から5列目あたりの左寄り、しぶちゃさんのすぐ後ろだったので、特にピアノとベースの演奏の様子がよく分かる位置に座ったことになる。3列目あたりまでは指定席で、最前列中央に大使と思しき姿が見えた。
講堂の奥に高さ50センチほどのステージがあり、向かって左側にある小さなグランドピアノにはSHIGERU KAWAIの金色の文字が見える。中央奥にウッドベース、右に黒いドラムセット(SONORか?バスドラのヘッドも黒)。スピーカーは大小4ペアほどあってPAは客席の最後列右。
ステージに現れたMARCIN WASILEWSKI(p)は、ラフで地味な色合いの襟付きシャツ(演奏が始まると途中で脱いだ)の下に地味な色の長袖Tシャツ、SLAWOMIR KURKIEWICZ(b)は黒無地のぴったりした半袖Tシャツ(ジャズミュージシャン、特にベーシストとドラマーが決まって黒無地半袖Tシャツ姿なのは何か特別な理由でもあるのだろうか?)、MICHAL MISKIEWICZ(ds)の服装はどんなだったか覚えていない。3人に続いて登場したTOMASZ STANKO(tp)は、黒いテーラードカラーのジャケットに白シャツ、ノーネクタイ。4人とも実に地味ないでたちだ。

ステージ  開演前のステージ

最初の曲は、TOMASZ STANKOのトランペットがテーマに移るまでの導入部が長くてしばらくは分からなかったがSOUL OF THINGS, VARIATIONS Ⅲだったと思う。私も含めて聴衆は皆、一音も聴き逃すまいと演奏に集中していたのではないか。各人のソロが終わるたびに拍手が沸き起こる。ライヴだから当然といえば当然なのだが、完成された作品としてのCDとは、演奏そのものも演奏の空気感も全然違う。のっけからこんなに全開でいいのか?!と思ってしまうほど(実は全開などではなく、そのうちもっと凄くなるのだが)、とにかくアグレッシヴで熱いのだ。このメンバーで各国をツアーで回ってきただけあって、さすがに息の合った素晴らしい演奏。STANKOのソロに続いてMARCIN WASILEWSKIのピアノ、SLAWOMIR KURKIEWICZのベースのあと、なんとSTANKOのトランペットとMICHAL MISKIEWICZのドラムスで小節交換までやってくれたのだ!その後STANKOのトランペットがテーマを奏でて一曲目が終わったとたん、ため息とともに思わず「うう~...。」と唸り声が出てしまった。いや~凄い...。会場が大きな拍手に包まれたのはいうまでもない。私が曲の構成をはっきりと覚えているのは、唯一この最初の1曲のみである(分かりやすかったから)。

最初の曲を演奏中、WASILEWSKIにタオルが用意されていないことに気づいて、ソロを終えたSTANKOが、いったんステージを降りてスタッフに指示し、戻ってきて白いタオルをピアノの上に置いてあげたり、トランペットのピストン用オイル(しぶちゃさんがそう話していた)を足音を忍ばせて取りに行くという一幕もあった。STANKOは、その後もステージの袖に控える日本人スタッフに接近して何事かを伝えたり(ハウリングが起こっていたのでPAに伝えるためか)、メンバーにさりげなく演奏上の指示を与えたりして、このバンドのリーダーとして気を配っている様子がうかがえたが、それも最初のうちだけだったように思う。
3人のソロになると、STANKOは優しそうな目で(そんな感じがした)演奏を見守っているようだったし、特にピアノとベースにはソロをたっぷり取らせてあげていたので、この若いバンドを信頼しているのだなという感じがした。WASILEWSKIとKURKIEWICZの2人は度々アイコンタクトを取っているようだった。残念ながらドラムのMISKIEWICZの様子はここからはあまり見えなかった。
STANKOのトランペットの音は実に渋い。メロディも渋い。渋いうえに選ぶ音とリズムにセンスの良さを感じる。ひとつひとつが彼独自の美学にもとづいて生まれた音だといってもいい。メリハリが利いていて、突如としてハイトーンが駆け上るように響きわたると背筋がゾクゾクしそうになる。
WASILEWSKIの両足は常に激しくリズムを刻んでいる。ここからだとペダル操作までは見えない。繊細なタッチを必要とする演奏では鍵盤におでこがくっつくかと思うほど極端に猫背になり、そうかと思うと次には両腕をいっぱい伸ばし、思いっきり上体をそらして打鍵したりの視覚的効果でも楽しませてくれる。それにしてもこの躍動感、緊張感、各プレイヤーの熱演はどうだ!そのうえ各人のソロがたっぷりと堪能できるのが嬉しいではないか。特にWASILEWSKIのピアノは強烈にドライヴし、まるで何かが乗り移ったかのような凄みを感じさせる演奏だ。ああ~、CDと全然違う。これがライヴの醍醐味ってぇもんだぜ!となぜか急に東京弁になってしまう。CDと全然違うと思ったのは、バップテイストを感じる場面がけっこう多くあって意外な感じがしたということもある。やはり、そこはヨーロッパのジャズだから、非常に洗練されたバップテイストではあるけれども。
突如4人の音がビシッとひとつになって、一瞬の静寂をおいてまた演奏が続くという場面が何回かあった。こんなことをいうと大げさかもしれないが、なんだか魔法のようだと思った。
ベースのKURKIEWICZがたまにわずかに苦しそうな表情になることはあったが、演奏中の4人は涼しい顔とさえいえるほどだった。ステージが終わっても4人とも汗ひとつかいていないように見えたぐらい。

ステージも中盤を迎えるころには聴衆も随分と熱狂していたに違いない、掛け声や指笛ピーピーも聞こえ始めた。興奮してきた聴衆の体温により、講堂内の室温が3度は上昇したのではないか。そのうちに足元に冷風が漂ってきたので空調が強められたと分かった。このあたりになるとステージの4人は絶好調という感じがした。
途中、曲紹介などのMCは一切なく、聞き覚えのある曲が息をつく間もなく次々に演奏されたが、とにかくどの曲もテーマに入るまでの導入部が長く、テーマのメロディもCDとは少し変えてあるので、注意深く音を追っていかないと分からないほどの曲もあった。ピアノの内部を手で叩き、ドラムは素手でヘッドを叩き、スタッカートで4人が強烈なリズムを打ち出すという民族的な趣が感じられる打楽器的アンサンブルがしばらく続き、ようやくテーマへ移るというような曲もあったが、これが何の曲だったのかは分からなかった。
SUSPENDED VARIATIONS Ⅴも演奏したと思うが、これなどはもともとフリーインプロ的な要素が強いうえに、CDとは少し違う演奏になっていたので、注意深く音を追っていかないとそれとは分からないところだったが、聴き覚えのあるベースのリフでようやくそれと分かった(が、ほんとうにそうだったのかどうかあまり自信がない)。SOUL OF THINGS, VARIATIONS ⅤとSOUL OF THINGS, VARIATIONS Ⅹも演奏していたように思う。

全部で何曲だったかは覚えていない(数えていなかったから)。最後の曲はSUSPENDED VARIATIONS Ⅱだったことは確かだ。STANKOにしては珍しくキャッチーなメロディと転調を伴うユニゾンのリフが強烈な印象を残す私の大好きな曲だ。もう本当に素晴らしい...!としかいいようがない。終わったとたんに立ち上がって拍手する人も何人かいた。STANKOがメンバーを紹介し、4人はステージをいったん降りたが、当然拍手は鳴り止まない。
アンコール曲は何だったか覚えていない、というか何の曲かなんていうことはもうどうでもよくて、ただただ、4人の素晴らしい演奏にこのままいつまでもずっと酔っていられればいいのにと思った。

出演 : TOMASZ STANKO QUARTET
  TOMASZ STANKO (tp)
  MARCIN WASILEWSKI (p)
  SLAWOMIR KURKIEWICZ (b)
  MICHAL MISKIEWICZ (ds)
日時 : 2005年10月26日(水) 午後7時開演
会場 : 駐日ポーランド共和国大使館(東京都目黒区)
ふっふっふ...。オラシオ隊長殿、「こんなコアなポーランドジャズファンが日本にもいるんだぞ大作戦!」のための準備が完了いたしました。
大作戦って何?とおっしゃるかたは↓こちらをどうぞ
            http://ameblo.jp/joszynoriszyrao/entry-10005106164.html
最初、「記事は全部ホッチキスでとめたらええやんねぇ...。」と軽く考えていたのですが、思いなおして、見やすいようにファイルに収納することに変更。印刷してみると、やはりホッチキスではとてもとまりそうにない枚数であるということが判明(笑)。
オラシオさんのブログのポーランドジャズのページを全てプリントアウトし、オラシオさん、しぶちゃさん、アーティチョークのメッセージとともにクリアファイル(100円ショップに可愛いのがありました)に収納。収納作業をしていると、オラシオさんのポーランドジャズへの情熱がひしひしと伝わって来るような気がして、改めて「凄いなぁ、オラシオさんって...。」と思ったしだいです。
大作戦用ファイル
↑大作戦用ファイル(クリックで拡大)

ブログは本文が日本語のため、これが一体なんなのかをSTANKO氏にすぐ理解してもらえるように、"90 articles of polish jazz on weblog by HORACIO"というタイトルのブルーの紙を記事の前に入れておきました。これで、下手な英語でSTANKO氏に説明する手間が省けるというわけですな(笑)。また、STANKO氏の作品に関する記事のページにはイエローグリーンの付箋をつけときました。
大作戦用ファイル
↑大作戦用ファイル(クリックで拡大)
で、せっかくなのでオラシオさんのブログの宣伝もせなあかんと思い、
Please visit Horacio's weblog and leave your comment on his weblog.
っていうのと、オラシオさんのブログのURLをWORDでプリントしたものもファイルに入れておきました。ひょっとするとSTANKO氏からポーランド語のメッセージが届くかもしれんと思って(そこまでは無理かしらん)。
こんなんでよろしいでしょうか、オラシオ隊長?
これを無事、STANKO氏の手に渡せますように。アーメン...。
ほな、いよいよ明日、東京へ行ってきまーす!
昨日は秋の味覚を求めて夫と2人で丹波篠山へ。爽やかな秋晴れはやがて曇り空となりましたが、気持ちのよい一日でした。松茸、丹波栗、山の芋、黒豆の枝豆、殻付きの銀杏などを買い込みました。
帰宅後、テーブルに並んだ山のような食材を眺めつつぼんやりと夕食の段取りを考えていると、むこうの方から「来たーっ!」という大きな声が?一体何事かと思っていると、廊下をやって来た夫が「大使館から招待状。」と言うではありませんか。「見せて見せて!」と受け取ると、それは私が思い描いていたとおりの英語で印刷された真っ白な封筒でした。宛名はちゃんとMr. and Mrs. ○○○○となっています。
招待状
開封して、まず招待状(↑)を確認しました。駐日ポーランド共和国大使館から私たち宛に届いた正式な招待状です。当日大使館に入るためにはこの招待状ではなく、宛名の書かれた封筒のほうを提示しなくてはなりません。ほかにファクス返信用のフォーム、最寄り駅から大使館までの地図、英語とポーランド語でTOMASZ STANKOについて簡単な紹介が書かれたA4サイズのチラシが同封されていました。招待状をよく読んで、その日のうちに、出席の返事をファクスで大使館へ送りました。
あー、ほっとしました~。これで「こんなコアなポーランドジャズファンが日本にもいるんだぞ大作戦!」の任務をなんとか果たすことが出来そうです。
どうかしぶちゃさんのところにも早く招待状が届きますように。
(;゜ロ゜)ハッ!忘れるとこやった。私もSTANKO氏へのメッセージ早よ書かな!

昨日、京都市内へショッピングに出かけていました。高島屋で化粧品、洋服、夫のワイシャツを買い(これと似たような文章、前にも書いたような気がする...)、ブックファーストで写真集を2冊買って(丸善がなくなってしまったのはとても悲しい)、お茶のあとTHE WRITING SHOPへ。このお店で写真集をそれぞれラッピングしてもらって、大使館のBOZENA SOCHAさんとSTANKO氏へのプレゼントにします。


プレゼント


STANKO氏へのプレゼント(左)は写真集です。今森光彦 『里山の道』 (新潮社)
『里山の道』は湖国、滋賀県の里山の美しい自然や小さな生命、そこに生きる人々の暮らしを撮影したもの。

BOZENA SOCHAさんへのプレゼント(右)も写真集。米 美知子 『青い森話』 (文一総合出版)
『青い森話』は八甲田、奥入瀬、十和田の四季折々の美しい自然を撮影したもの。
お二人に気に入ってもらえれば良いのですが。

ラッピングしてもらったTHE WRITING SHOPのホームページは↓こちら。
                           http://www.writingshop.net/
今回初めて訪れたのですが、上質の紙やノートなどを取り扱う、オーナーのこだわりがいっぱい詰まったステキなお店です。オーナーは話好きの、優しく可愛らしい感じの女性。ラッピングをするあいだに、商品にまつわるいろんな話をしてくれました。
彼女の話によると、日本人は何かにつけて豊かなせいか、紙ひとつにしても書き損じなどの場合に使い捨ての感覚でもったいないことをするけれど、ヨーロッパの人たちは紙をとてもとても大切にするのだそうです。また、贈り物をするときに選んだ包装紙やリボン、手描きのメッセージカードには自然と送り手の想いがこもるものだと。中身を選ぶのと同じように、包装紙やリボンにもこだわって、相手を想って選んでほしいとのことでした。(そうなんよね~。デパートにしても他のお店にしても、ラッピングしてもらって気に入ったことなんて今までに一回もなかった。)
また、ラッピングの注文を受けると、贈り手のイメージでラッピングを施すのだとか。ということは、このラッピングは私のイメージ?包装紙を選んだのは私ですが、私自身はこんなにステキではありません...(;^_^A
女性オーナーは荷物をいっぱい持った私のために親切にタクシーまで呼んでくれて、わざわざお店の外へ出て私を見送ってくれました。う~む、なんという丁寧で感じのいいお店なんでしょう。また今度行こっと!

WASILEWSKI(p)氏、KURKIEWICZ(b)氏、MISKIEWICZ(ds)氏の若い3人には日本手ぬぐい2本セット。ちょっと北欧プリントを思わせる可愛らしくてステキなデザインが気に入りました。お店の人が、英語で書かれた説明書を入れてラッピングしてくれました。お店の名前はMADUといって、東京、横浜、大阪、神戸などにもお店があるようですね。

さあ、プレゼントの用意は出来た。洋服も買った。ホテルは予約済み。大使館からの招待状がちゃんと届きますように!

新盤チェックしていたら、ANDRE CECCARELLIの新作がリリースされているではありませんか!
■ANDRE CECCARELLI TRIO / AVENUE DES DIABLES BLUES (Dreyfus Records)

ANDRE CECCARELLI (ds)

BIRELI LAGRENE(g)

JOEY DeFRANCESCO(org)
キャーッ、アンドレーッ!(氷川きよし追っかけのおばちゃんとなんら変わりなし)で、すぐさま注文。う~む、ちっとも知らなかった。CECCARELLIは寡作な人だと思っていたので、すっかり油断していました。

JOEY DeFRANCESCOの演奏は聴いたことがありません。ギター、オルガン、ドラムという編成は珍しいかもしれませんね。あっ、そうかー、オルガンやから、ベースはいなくてもええんやね。どんな音になっているのかな~?