私がこのブログを始めたのが5月17日のこと。オラシオさんとしぶちゃさんにお近づきになれたのが6月の初め頃だったと思う。7月に、お2人が「スタンコが来る!」といって騒いでいらした時にも、私などは「スタンコって誰?」という具合で、さほど興味はなかった。ポーランドのジャズにしたって、7月になってからNAHORNY TRIO / DOLCE FAR NIENTE ...I NIC WIECEJをジャケ買いして聴いたのが初めてだったのだ。
今から述べることの全ては、オラシオさんのブログで、ECMからリリースされているTOMASZ STANKO QUARTETの二枚とMARCIN WASILEWSKI TRIOの一枚が紹介されていた記事を私が読んだことがきっかけで始まったことだ。オラシオさんのこの記事がなかったら、私はMARCIN WASILEWSKI TRIOのCDを聴いていなかったかもしれない。が、聴いてしまったからサァ大変(笑)
MARCIN WASILEWSKI, SLAWOMIR KURKIEWICZ, MICHAL MISKIEWICZ / TRIO(ECM)の記事を公開したあと、すぐにTOMASZ STANKO QUARTETの二枚を注文し、続いてMANU KATCHE / NEIGHBOURHOOD(ECM)も予約した。すぐに届いたSTANKOのCDはしばらく開封もぜずに放っておいて、相変わらず毎日のようにMARCIN WASILEWSKI TRIOばかり聴いていたのだが、聴けば聴くほどに素晴らしくなってくる一方だし、どうしてもこのTRIOのことが気に掛かってしかたがない。とうとう私はTOMASZ STANKO QUARTETのライヴが行われる東京の駐日ポーランド大使館のホームページを捜し出し、問い合わせのメールを送ってしまった。
あきらめていた頃に大使館から返事が来たのが10月6日のことだ。で、TOMASZ STANKO QUARTETのCDを聴いたのはその日が初めてだったから、大使館ライヴのわずか3週間前だったことになる。全てが急展開で、あれよあれよというまに、こんな一夜漬けのにわかSTANKOファンともいえないような私がSTANKOのライヴを体験することになったのは、オラシオさんとしぶちゃさんのお陰だったと思っている。お2人には本当に感謝しています。ありがとうございます。今回の「日本にもこんなコアなポーランドジャズファンがいるのだぞ大作戦!」は全てオラシオさんとしぶちゃさんのブログが発端となって生まれたのだ。非常に運が良かったのだとも思うが、私はたんにお2人のおこぼれを頂戴したに過ぎない。以下はその「大作戦」の様子を綴ったものだ。長文に加え、非常に個人的なことも併せて書いているところもあるが、その辺はどうかお許しいただきたい。
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いよいよ東京へ行く日がやってきた。だが「大作戦」の前にぜひともやっておかねばならないことがもうひとつだけあった。
大使館でしぶちゃさんと会うことになっていることや「大作戦」のことを夫はまだ知らない。実をいうと夫は、私がブログを書いていることさえ知らないのだ。私のブログは、私の友人、知人、私と夫に共通する知人、高校時代の恩師など16人ほどに宣伝してあるが、肝心の夫には知らせていない。
京都駅へ向かう在来線の電車の中で夫に全てを話した。私がブログを書いていること。オラシオさんのこと。しぶちゃさんのこと。そして「大作戦」のことなどこれまでの経緯を全て。
夫がこれを聞いてどんなにびっくりするだろうと楽しみにしていたのだが、ちっともびっくりしてくれなかったので少々あてがはずれた。まぁ、人間、50年以上も生きていると、ちょっとやそっとのことでは驚かないのも確かだ。夫はこう言ったのだ「大作戦なんかより、パソコン音痴の君にブログが出来るということのほうがよっぽど驚きだ。」と。 >┼○ バタッ!ああ~、エアコンのタイマー設定さえ出来ない(というかただ面倒なだけ)夫にそんなふうに言われてしまう私って...。でも、まぁ、いいとしよう。夫はただ私に同行してくれるだけで大作戦に参加する訳ではないのだが、今回の宿泊費用だけが私持ちで、あとは全て夫が持ってくれているのだ(^▽^;) 夫は音楽無しでも生きていける人種で、私が普段聴いているジャズのことなど全然知らないのだが、いつも私と一緒にコンサートを付き合ってくれることだし。いや、そうではなくて、私を放し飼いにしておくのが心配だからかもしれないが。
東京へ向かう新幹線の中で夫に大作戦用のファイルを見せると、「しかしこのオラシオさんっていう人は凄いねぇ。」としきりに感心していた。ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう。いよいよ今夜はスタンコ氏に会って、このファイルをその手に渡すのだよ。あ~、ドキドキする。
ホテルに着くとまず部屋を居心地良く散らかしてしばらくゆっくりしたあと、洋服を着替えて「大作戦」用の荷物(ぬかりはないか何度も確認した)を持ち、いったん恵比寿ガーデンプレイスの一角にある東京都写真美術館へ。ここで内外の現代作家の写真作品をゆっくりと鑑賞したあと、なぜかひどくハワイアン丸出しの喫茶店へ入ってお茶をすませてから、いよいよここを出ることにした。ハワイアンムード100パーセントからポーランド大使館モードへの切り替えがうまくいくだろうかなどと夫と冗談を言いあいながら。
駐日ポーランド共和国大使館は恵比寿ガーデンプレイスからタクシーで3分ほどの閑静な住宅街の一角にあった。到着したのは6時35分頃だったと思う。
エントランスで招待状を提示し、大使館のロビーへ入る。クロークの向かいのテーブルにはヨーロッパ連合の旗、ポーランド共和国の国旗、日本国旗のそれぞれミニチュアと、ヨーロッパバイソン(絶滅危惧種)と思われる大小のぬいぐるみが飾られていた。ぬいぐるみの頭をひとなでしてからさらに進み、会場となる講堂へ通じる螺旋階段を降りきる一歩手前のところで、恰幅のよい白髪の外国人男性に呼び止められてしまった。なるほど、ここは第二の関所としては実におあつらえ向きの場所ではないか。名簿らしきものをチェックするが、私達の名前が見つからない。外国人男性がどこの所属だ?と聞いているようなので、すぐ横にいた若い日本人男性に、一般として招かれた旨を伝えると外国人男性も納得したようで、私たちはようやく開放され、前の方へ座ってくださいと言われた。あとでしぶちゃさんに教えてもらったところによると名簿をもっていた外国人男性はオーストラリアのプロモーターということだ。ということは私たちは業界人と間違われてしまったのか?そうだとしたら、きっと夫がはやしているヒゲのせいだ(-_-;)
講堂の奥にステージが見える。前列の指定席のすぐ後ろの一般席の左側に、しぶちゃさんらしき人物を発見しアプローチ。しぶちゃさんはブログのイメージそのままの、穏やかで優しい表情をした好人物だった。今日初めてお会いしたというのに、そうとは思えないほどにこのシチュエーションがごく自然なことのように感じられた。挨拶とお互いの紹介をして、私たちはしぶちゃさんのすぐ後ろに座った。
時間がたつにつれて、真っ赤(なぜだ?!)なテーラードジャケットを着た日本人のおじさん、いかにも高級そうできらびやかなスーツをまとった妙齢のご婦人、地味なスーツを着た若い日本人女性、若い日本人のカップル、香水の匂いを漂わせた外国人女性、紫色でフリンジのついた派手なジャケットを着て頭をドレッドヘアーにした痩身ですごく背の高い黒人のお兄ちゃん、スーツ姿の外国人男性などなど、国籍も、服装も、老若も入り乱れて様々な人たちが次々にやって来る。う~む、さすがは大使館。どういう関係かフランソワーズ・モレシャンさんの姿も見かけた。そういえばモレシャンさんは、5ヶ国語だか6ヶ国語を話すことが出来ると聞いたことがある。こうして見た限りでは、一般として来場したのは私たちだけではないようで結構大勢いるように思われた。開演前になって例のプロモーター氏が現れ、英語でTOMASZ STANKO QUARTETの紹介をし、また、このライヴがプロモート目的であることなどを説明して、いよいよライヴが始まった。
ライヴについては、10月30日の記事「ライヴリポート編」をご覧ください。
終演後、大使館の二等書記官ボジェナ・ソハさんと思われる女性が登場し、ここは今からレセプション会場となるための準備をするので、それぞれ荷物を持って少し移動してくださいというようなことを告げたが、あまりに流暢で完璧な日本語(第8回各国大使館員日本語スピーチコンテスト2005で受賞されている)だったのですっかり感心してしまった。続いてプロモーター氏による挨拶のあと、レセプションの準備が始まったとたん、たちまち狭い会場はポーランド語、英語、たどたどしい英語などの話し声でいっぱいになった。会場の人口密度は異常に高く、場所を空けようにもそのスペースさえないほどなのだが、折りたたみ式の丸テーブルが出され、外国人女性がトレイに載せた飲み物を配り始めた。
しばらく所在無く立ちつくしていると、しぶちゃさんが私達におみやげを渡してくださった。ラ・メゾン・デュ・ショコラというフランスの超高級チョコレート専門店のアマンドショコラ(キャッ!嬉しい)。私も昨夜焼いてクリアバッグに包んでおいたナッツがたっぷり入った手作りクッキーをしぶちゃさんに差し上げる。
大作戦については、会場の様子を見て臨機応変にということになっていたのだが、この様子だと実行してもよさそうな雰囲気だ。そろそろしぶちゃさんとともに大作戦を開始することにした。あ、マルチン君(p)が暇そうにしている!ということで、まずは彼から攻めてみようということになった。「Excuse me, Mr. Wasilewski.」と声をかけ、挨拶して「This is for you.」とプレゼントを渡すと快く受け取ってくれて早速びりびりと包みを開け、「これはどうやって使うの?」と質問してきた。すぐそばにミハウ君(ds)もいるのに気がつき、彼にもプレゼントを渡す。「手を拭いたり、汗を拭いたり、頭に巻いてもいいです。」と説明すると、2人は「きれいなプリントだね。」とかなんとか口々に言って、マルチン君が「これ、いいね。僕、さっそく使ってみることにするよ。」と言ってくれた。私が「Will you give me your autograph, please ?」(この文句だけはスラスラと言えるのだ)と言ってサインをお願いすると、マルチン君がマジックペンを持ったまま「今日は25日かい?」と聞くので、「いえ、26日です。」と言うと「26日だね。え~26日、TOKYOっと。」と言いながら書いてくれた。マルチン君に握手を求めたら(外国人男性は女性に対して自分からは決して握手をしないものなので、こちらから要求しないとだめなのだ)ちょっと恥ずかしそうに笑いつつも気軽に応じてくれた。マルチン君の第一印象はいかにもシャイな感じだったが、色白でスキンヘッドの童顔は外国人版一休さんみたいで笑顔が可愛らしく、4人のなかでは最も気さくで陽気な人物という印象へと変わった。
さぁ、いよいよ御代トマシュ・スタンコへアプローチする時がやってきた。しぶちゃさんと一緒にそちらへ向かう。
ここへ来るまでは、スタンコ氏が気難しく近寄りがたい人物だったらどうしようかと思っていたのだが、全然違った。ライヴが始まった時点で、スタンコ氏が優しい心の持ち主であることが分かる場面がいくつかあったし、控えめで穏やかな性格という印象を受けていた。演奏が終わった今、スタンコ氏は優しい笑みを浮かべて私達のすぐそばに立っている。こんなことをいうと変かもしれないが、強烈なオーラが発散されているという訳でもなくて、スタンコ氏の発する言葉も一言か二言ぐらいしか聞いていないにもかかわらず、凄く人間味に溢れた人物という印象を受けた。
ああ、それにしても私、スタンコ氏に「バルヅォミ・ミウォ。」(お会いできて嬉しいです)という挨拶をちゃんとしただろうか?全然覚えていない(-_-;) 「Thank you for your superve performance.」とかなんとか言わなくてはと思っていたのに、言わなかったような気がする。それでもなんとか大作戦用ファイルとプレゼントを渡したことだけは覚えている。それからしぶちゃさんが助け舟を出して大作戦用ファイルの説明をしてくれたら、スタンコ氏が理解してくれたようだったことも。スタンコ氏に「Will you give me your autograph, please ?」と言ってサイン帳にサインを貰ったことさえ忘れて、あとでしぶちゃさんと2人で確認しなければならなかったというていたらくだった。
年季の入ったミュージシャンはさすがに達筆で感心する。ページの真ん中に美しいラインで描かれたスタンコ氏のサイン。美しい演奏をするヴェテランのミュージシャンはサインまでもが美しい!言っちゃ悪いが、ほかの三人のサインがミミズの這ったあとみたいに見えてしまうのだった。
スタンコ氏を真ん中にしてしぶちゃさんと私の三人を撮影してくれたのは夫だ。スタンコ氏にぴったりとくっつくようにして写真に納まった。私、このあとスタンコ氏と握手しただろうか?これまた全然覚えていない(T_T) 本当はもっといろんなことを話したかったのだが、一部のファンがスタンコ氏を独占してはいけないという感じがしたので、お礼を言ってその場を離れた。「一応、作戦成功ですね!」という感じで、笑いながらしぶちゃさんと顔を見合わせ、頷きあったのは覚えている。どうかオラシオさんのポーランドジャズへの熱い想いがちゃんとスタンコ氏に伝わってくれますようにと願った。
テーブルの上にはすでにカナッペやケーキの乗った大皿が置かれているが、この際、食べたり飲んだりは後回しだ。
さぁ、次なるターゲット、人ごみを掻き分けるようにして会場の真ん中あたりにいるクルキェヴィチュ君(b)に接近。近寄ってみるとクルキェヴィチュ君は体が大きい!手も大きい!腕も太い!胴回りも太い!(少し太ったのか?)だが、三人のなかでは一番シャイで控えめな印象を受けた。優しい目が笑っている。プレゼントを渡してサインを貰う。クルキェヴィチュ君はその大きな体に似合わず、ページのはじっこにこじんまりとサインをしてくれた。
しぶちゃさんはベーシストだからクルキェヴィチュ君に何か質問しているようだ。あ、お互いの手のひらを合わせて比べっこしている(笑)こうして比べてみると、やはりクルキェヴィチュ君の手はすごく大きい!やはり、ウッドのベーシストは背が高く、手も大きいほうが演奏上は有利なのだろうな~。しぶちゃさんの話によると、クルキェヴィチュ君の使用しているウッドはフルサイズということだった。
ドラマーのミハウ君にまだサインを貰っていなかったことに気づき、ミハウ君にもぬかりなくサインを貰う。ここで、急に喉が渇いていることに気がついたので、ケータリング会社から派遣されたと思われるおばちゃんに頼んでグラスにミネラルウォーターを入れて貰った。
可愛らしくあどけない外国人の子供が2人チョロチョロしているのを横目で見ながら、最後に二等書記官のボジェナ・ソハさんに接近する。「Excuse me, are you Ms. Socha ?」と聞くと彼女は「Yes.」と言って笑顔で首を少し傾けた。私が「バルヅォミ・ミウォ。」と挨拶すると分かってくれたようで笑顔が急に大きくなり、ポーランド語らしき言葉でなにやら答えてくれた。が、さっぱり意味が分からなかった(^▽^;) そこでたどたどしい英語で「私は○○と申します。あなたにメールをしたら招待状を送ってくれた。私たち夫婦をお招きくださってありがとう。」というようなことを伝えると「オー!」と言って頷き、彼女の目が急にまん丸になったのだが、分かってもらえたのだろうか。そこで「This is for you.」とプレゼントを渡し、「I hope you'll like it.」と言うと彼女はますます笑顔になって「Thank you !」と受け取ってくれて「これはなんですか?」と日本語で尋ねてきた。あ、すっかり忘れてた。ソハさんが日本語堪能なことを(;^_^A 今度は日本語で「日本の美しい自然の風景を撮影した写真集です。」と答えると、またまた「オオー!」といって喜んでくれているようだったので安心した。「ソハさんは日本語が大変おじょうずなんですね。」と言おうとしたが、一瞬の隙をつかれてドレッドヘアーの黒人のお兄ちゃんがソハさんと楽しげに話し始めたので、その場を離れ、その後はしぶちゃさんと私と夫の三人でしばし歓談した。この頃になると、カナッペもケーキも全て売り切れて、空のお皿や飲みかけのグラスがむなしくテーブルに乗っているだけとなった。
9時をとっくに過ぎて、いつのまにか招待客も半分ほどに減ってしまったがレセプションが終わる気配はない。その後もしばらくは夫と2人でおしゃべりしていたのだが、知り合いと見受けられる男性とお話していたしぶちゃさんにいとまを告げ、螺旋階段を上り、ロビーに飾られたヨーロッパバイソンのぬいぐるみをもう一度なでてから、小雨の降る夕闇のなか、私たちは大使館をあとにした。宿泊先のホテルへ帰るあいだじゅうずっと、私の頭のなかでトマシュ・スタンコ・カルテットの曲、SUSPENDED VARIATIONS Ⅱがいつまでもいつまでも鳴り続けているのだった。
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以下は、実に個人的なことで恐縮なのだが、もしお暇ならもう少しお付き合いいただきたい。
スタンコ氏にプレゼントしたのは、滋賀県出身の写真家、今森光彦の 『里山の道』(新潮社)。この写真集は湖国、滋賀県の里山の美しい自然や小さな生命、そこに生きる人々の暮らしを撮影したものである。この写真集をスタンコ氏のプレゼントに選んだのには訳がある。初めて訪れた日本という国を知ってもらうには、写真が一番手っ取り早くて分かりやすいと思ったからだ。スタンコ氏はおそらくこのあと、観光などする暇もなくあわただしく移動するに違いない。次の国へと向かう飛行機の中で、この写真集を広げて眺めながら、今回初めて一瞬だけ降り立った日本という国に思いを馳せてくれたら嬉しい。そしてスタンコ氏にとってこの写真集が、ハードなツアーの最中、つかのまの安らぎとなってスタンコ氏を楽しませてくれればと思う。
私はトマシュ・スタンコの日本ツアーがぜひとも実現してほしいと願っている。そして、トマシュ・スタンコの素晴らしい音楽が、大勢の日本人の耳に届くことを願っている。スタンコの音楽の良さが分かるまでには少し時間が掛かるかもしれないし、人によってはある程度の根気や忍耐といったものも必要かもしれない。現に私がそうだったから。だが、いったんその素晴らしさと美しさが少しでも感じられたなら、その人はきっとスタンコの音楽に夢中になってしまうことだろう。彼の音楽にはそういう“力”があると私は信じている。それがなんなのかは私にもはっきりとは分からないのだが、この先もずっと色褪せず、輝き続ける宝物のような音楽、スタンコの創り出す音楽とはそういうものだと思う。私はトマシュ・スタンコの音楽の一端に触れることでその素晴らしさをほんの少しだけ知ることができ、そのうえライヴを体験するというめったにない幸運にも恵まれた。ジャズファンとしてこれ以上はないほどの幸せをようやく実感としてかみしめられるようになったこの頃だが、今も相変わらず毎日のように聴いているスタンコの音楽から、当分のあいだは離れられそうにない。