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2009-11-12

CAPE HORN/T.HORTA & ARISMAR DO ESPIRITO SANTO

テーマ:MUSICA BRASILEIRA !

(LABEL UNKNOWN/NO No.)


ブラジルが世界に誇るマエストロ2人による連名デュオ作品。

トニーニョ・オルタ TONINHO HORTAはその知名度・高評価のわりにアルバムが手に入りにくいのが理解出来ませんし(リーダーアルバムが結構再発されましたが、彼の参加作でまだまだ入手困難なものが多過ぎるのです)、一方のアリズマール・ド・エスピリト・サント ARISMAR DO ESPIRITO SANTOにいたってはその天才がなぜにこうも世界的に知名度が低いままなのか、というまあ言ってみれば知る人ぞ知る的なコンビなのかも知れません。

しかし、彼らのプレイを一度でも聴いたことがある人なら、飛びつかずにはいられないアルバムですよね。

本作はTONINHOのヴォーカル&アコギ&エレギ、ARISMARのギターに始まるマルチプレイに加え、「ブラジルの天才両JOAO」の一人、ジョアォン・ドナート JOAO DONATOのピアノとドラムのホベルチーニョ・シゥヴァ ROBERTINHO SILVAというこれまたマエストロ、さらにはフルートでヒカルド・ポンテス RICARDO PONTESやTONINHOの妹のレナ・オルタ LENA HORTAが曲によりゲスト参加して、ただでさえクォリティが高いに決まっているこのデュオのサウンドにより華を添えているのです。

どうですどうです、気になって来たでしょう?

音楽的にはゆったり目のテンポのアコースティックブラジリアンサウンドが多くを占め、「癒される」と仰る方も少なくないでしょうが、演奏のレヴェルの高さ、深みという意味でも言うことなしの素晴らしさ。

ROBERTINHOの雨季のスコールのようなパーカッションワークと、瑞々しいTONINHOとARISMARのアコギデュオ、そしてTONINHOのなごむヘタウマスキャットがこれ以上ないくらい素晴らしいチームワークで映像的なサウンドを作り上げるオープニングのタイトル曲から最高。

ARISMARはかなりベース的にアコギを弾いてます。

その彼がスキャットでユニゾンしつついきなり盛り上げにかかる後半のパートも移り変わりの激しい大自然を描いているようでいいですねえ。

このたった4分30秒の間に器楽奏者が度肝を抜かれ感激させられ見習うべき点がてんこ盛りになっています。

だからって決して押し付けがましい暑苦しい音楽になっていない、これぞマエストロ。

TONINHOの大傑作ソロライヴ『SOLO AO VIVO』でやられた変拍子満載のポップな変態ナンバー「レンブランド・エルメート LEMBRANDO HERMETO」も収録。

ここではLENAのフルートとROBERTINHOのパーカスに2人のツインアコギのクァルテットで演奏されています。

TONINHOが尊敬するヘンリー・マンシーニ HENRY MANCINIの「ドリームズヴィル DREAMSVILLE」はオーソドックスなギタートリオ編成+オーヴァーダブのギターで、メロウなムードの中にも彼ららしい緊張感のある絡み合いが楽しめます。

ARISMAR作「ヴェスチード・ロンゴ VESTIDO LONGO」は作曲者自身によるピアノのコンピングとギターカッティングが極楽気分のかっちょええグルーヴィなサンバジャズ。

RICARDOのフルートソロもブンブク言ってるROBERTINHOのパーカスもコイサー!

ブラジリアンファンにとって見逃せないのはTONINHOの名曲「ベイジョ・パルチード BEIJO PARTIDO」とDONATOのブラジル音楽史に残る傑作「アマゾナス AMAZONAS」でしょう。

前者は完全アコギデュオのみによる滋味溢れる演奏。

たった12本の弦が織り成すこの複雑で馥郁たるハーモニー、そして美しいメロディ・・・・たまりません。

根っからギタリストのTONINHOと、ベーシストとしての感性を中心にマルチプレイをするARISIMARとのセンスの違いが如実に現れていて、それもまた深い味わいにつながっています。

「AMAZONAS」は作曲者自身のピアノとRICARDOのフルート、そしてTONINHOのギター&スキャット、ARISMARのエレベ、ROBERTINHOによるクィンテットで、あの名盤『ナラと素晴らしき仲間たち OS MEUS AMIGOS SAO UM BARATO/ナラ・レアォン NARA LEAO』の最強アレンジを踏襲した演奏になっています。

幾つになってもグルーヴの塊のようなDONATOのピアノも相変わらず最高ですし、うねりまくるエレベ、浮遊するギターワーク、そしてすすり泣くフルート、大地そのもののようなどっしりしたビートのドラム、この面子が同時に演奏すること自体が奇跡としか思えない名曲の名演です。

完全ギタートリオ(アコギ、エレベ、ドラム)のみの「ウン・ソニャドール UM SONHADOR」も、シンプルなようでいて深い、そして聞こえて来る以上に複雑なものが絡み合っているようなテイクです。

このゆったりしたムードの中に、テクニックだけでは決して届かない天才達の境地が達成されているように思います。

一転して「ソニャンド・アコルダード SONHANDO ACORDADO」では2人のスキャットと絡み合うアコギ、そして八面六臂の大活躍的パーカッションのトリオによる軽快なスキャットサンバ。

これがまたすぐ終わるんですけれどこれはこれで凄い世界だなあ。

どちらの曲も、大変残念ながら、私がどんなに努力してもこんな演奏は出来ない、というような素晴らし過ぎる世界のように感じます。

だからこそ感動もひとしおなんですけれど。

ところでこのアルバムには3曲ジャズスタンダードも収められていて、それぞれ「酒とバラの日々 THE DAYS OF WINE AND ROSES」「インヴィテイション INVITATION」「ウォッチ・ワット・ハプンズ WATCH WHAT HAPPENS」なのですが、中でもオススメはDONATO、ROBERTINHOとのクァルテットによる「INVITATION」。

これもまたこのメンバーならでは、という個性的なムードの演奏になってまして、もちろんジャズ的に見ても超一流のレヴェルです。

彼らの用いる音のマジカルさって本当に素晴らしい。

自分の拙い言葉が、それを表現するのに到底届かないのがもどかしくて仕方がありません。

というわけで逃げの一手として↓に視聴出来るウェブページへのリンクを張ってみました(笑)。

ブラジル音楽があらゆる人に開かれた素晴らしい世界であることをしっかりと感じさせてくれる名盤です。

入手が大変に難しい作品ですので、街やネット上で見かけられた時は絶対に逃さないで下さいね!


http://www.arismardoespiritosanto.com.br/cd_capehorn+.html


Personnel:TONINHO HORTA(EG,AG,VO),ARISMAR DO ESPIRITO SANTO(EB,EG,AG,Pf,VO),ROBERTINHO SILVA(DS,PERC),JOAO DONATO(Pf),RICARDO PONTES(FL),LENA HORTA(FL)

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2009-11-11

PICTURES/ADAM CZERWINSKI & DAREK OLESZKIEWICZ

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

Pictures

(ADAM CZERWINSKI RECORDS ACR 002)


前作『レインダンス RAINDANCE』で高評価を得たポーランドのベテランリズムセクション2人による連名ユニットのセカンドで、09年10月発売のほやほやの新作。

アメリカ西海岸シーンですでにファーストコールとしての地位を獲得しているダレク・オレシュキェヴィチについては改めて紹介する必要もないでしょう。

ことアメリカのジャズに切り込んだ、という意味に特化するならば、これまでのポーランドのジャズの歴史において彼ほどの成功を収めたミュージシャンはいないのではないでしょうか。

それでいて本国の方で発表される良い内容の作品にもしっかりと参加しているのも偉い。

ちゃんと自分の根っこも失っていないことに好感が持てます。

対するチェルヴィンスキは主にポーランドシーンを中心に活躍するドラマーで、アレンジの天才レシェク・クワコフスキ LESZEK KULAKOWSKIや万能ギタリスト、ヤレク・シミェタナ JAREK SMIETANAなどによる多くの名盤で彼の名を目にするはず。

また彼はポーランドのジャズフェスの一つ「JAZZ W LESIE」のオーガナイザーも務めており、この国のジャズシーンになくてはならないミュージシャンの一人と言うことが出来るのではないでしょうか。

そんな強力なコンビがさらに強固なトライアングルを組むべく招聘されたのが、隠れファンが多いギターの名手ラリー・クーンス LARRY KOONSE。

彼もまたOLESZKIEWICZとL.A.ジャズ・クァルテットを初めとした数々のアルバムで素晴らしいコンビネイションを見せていた、なくてはならない存在。当然前作に引き続いての参加です。

本作はこの3人だけでがっぷりと組み合って録音されたアルバムで、チームワークにおいても実力においてもこれ以上は望むべくもない優れたギタートリオの誕生と言えましょう。

オープニング「シルズ・セイルズ SILLS SAILS」イントロのベースの音色の気合の入りようと言ったらどうでしょう。

骨太で豊かな、素晴らしくニアな音質で、最初の2、3音を聴いただけで期待と興奮を掻き立ててくれます。

KOONSEの超絶のコードワークが炸裂するメロディパートの、疾走感溢れるワルツビートは快感の一言。

変に東欧ムードなど期待せず、ここはアメリカシーン最先端のポストモダンなギタートリオサウンドを体一杯浴びる方が気持ち良くなれます。

ブリッジからソロに移行する時に一拍コードを食わせるKOONSEのセンスに悶絶しましょう。

関係ないですが、この「SILLS」というのはKOONSEとOLESZKIEWICZがアルバムに参加したサックス奏者デイヴィッド・シルズ DAVID SILLSのことでしょうか。

このアルバムではOLESZKIEWICZの作曲能力がたっぷりと発揮されていて、10曲中3曲しか書いてないんですけれど、どれも素晴らしいんです。

特にギンガ GUINGAやアヒーゴ・バルナベー ARRIGO BARNABE、エルメート・パスコアゥ HERMETO PASCOALのようなねじくれたブラジル音楽を思わせる「モーニング・プレイ MORNING PLAY」、これからの季節にぴったりな清冽さと孤独感を浮遊するイーヴンワルツに乗せて綴る「スノウグロウブ SNOWGLOBE」の2曲は名曲。

後者はメロディもコード進行もごくシンプルにジャズコンポジションとしてセッションなどにも使えそうな感じなんですけれど、トリオの演奏が超絶なため、物凄くレヴェルが高いテイクになってます。

いやあ本当にKOONSEの一人でシングルトーンとコードアプローチを同時に弾いているようなギターワークは信じられないです。

それも作用して、「SNOWGLOBE」はすぐにおぼえられる優れた名曲にして孤高のムードをまとったナンバーとして屹立しています。

その凛とした感じが、雪国の厳しい寒さ、体の芯までしゃきっとさせるようなあの空気を知っている者にとっては凄く親近感がわくんですよ。

特に雪国暮らしの方にオススメかも知れませんね。

一方CZERWINSKIも結構面白い曲を書きます。ブルーズなんだか何なんだかよく解らない構成で、変拍子も混じるアップテンポの4ビートナンバー「カインド・オブ・ブルーズ KIND OF BLUES」は飛び石を走って渡るようなスリルがあり、7拍子の楽園ムードなメロディの「イン・ザ・キー・オブ・Bb IN THE KEY OF Bb」もポップで印象的。

本作にはセロニアス・モンク THELONIOUS MONKの「シンク・オブ・ワン THINK OF ONE」の骨太なカヴァーも収録されています。

私は本作を聴くまでOLESZKIEWICZはどちらかと言うと繊細なタイプのベーシストかと思っていたんですが、このアルバムの彼の音は本当に素晴らしくて、豊かでかつ豪快、それでいてたっぷりと歌って、そうした彼の良さがある意味一番楽しめるのが既成のジャズナンバーであるこの曲なのではないかなと思っているんです。

テーマが終わってからのCZERWINSKIとのバース交換もグルーヴの嵐でカッコいいですし、KOONSEが入って来てからのトリオによるギターソロパートのもたらす興奮と言ったら。

何となく演奏の雰囲気が、スティーヴ・カーン STEVE KAHNのトリオ作『レッツ・コール・ディス LET'S CALL THIS』を思い起こさせますが、もっと現代的ですかね。

現代最高のギタートリオの一つが、ポーランドミュージシャンが2人も関わって生み出されたことにファンとしては喜びを禁じ得ません。多くのジャズファンに自信を持ってオススメ出来る逸品です。


Personnel:ADAM CZERWINSKI(DS),DAREK OLESZKIEWICZ(WB),LARRY KOONSE(EG,AG)

Raindance
2009-11-11

SPELNIENIE.../MACIEJ TUBIS

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

(AGENCJA ARTYSTYCZNA PAWEL KOMOLIBUS P.K.014)


今私が一番世界に推したいポーランドの若手ピアニストが、このマチェイ・トゥビス MACIEJ TUBIS。

無理矢理私が作ったポラジャズピアノ3大流派の中では「抽象派」に位置づけられるアーティストです。

「抽象派」は、RGGで飛躍的な人気を得たプシェムィスワフ・ラミニャク PRZEMYSLAW RAMINIAKが先頭を切っている状態ですが、彼に続く存在として並び立っているのが、マルチン・マセツキ MARCIN MASECKIとこのTUBISだと私は考えています。

一口に抽象と言ってもやはりそれぞれ違うカラーを持っていて、薔薇の棘のような硬質の美しさがあるMASECKIに対してTUBISの音楽には、食虫植物に絡め取られるようなマゾヒスティックな甘美さが伴っていると言えるでしょう。

本作は、そんな彼の記念すべきデビューアルバムにしてライヴ。

と言っても、彼は今のところ3枚リーダー作を出しているのですが、全部ライヴなんですけれどね。

このアルバムの売りで第一に挙げられるのは、彼のやりたかったことを可能な限り詰め込んだ、という点ではないでしょうか。

いきなり最初の5曲が継ぎ目なしのメドレーで、抽象精神炸裂の「残り香メロディ」が浮遊感に満ちたハーモニーの中に現れては消えて行くピアノソロ「ナロヂヌィ NARODZINY」に始まり、ソプラノサックスのヤツェク・デロンク JACEK DELONGとのオレゴン OREGONを思わせる開放感に溢れた「コレイヌィ・ヂェニ KOLEJNY DZIEN」や螺旋状に燃焼して行く「チェルピェニェ CIERPIENIE」のデュオ2曲、ドラムとのフリーデュオを挟んでミニマルに盛り上がって行くタイトル曲、と巧みな構成と緊張感に満ち溢れた演奏で満場一致の拍手を浴びています。

クラシックの厳しい研鑽を積んだことがうかがえる高速アルペジオで疾走する「ポドゥルシュ PODROZ」では、前半部のまるでバンジョーでも聴いているかのような躍動感に満ちたテクニック、そしてブレーキをかけた後半部ではプリペアードアプローチも導入して、これまでのポラジャズピアニストとはまた一線を画すピアニズムをたっぷりと味あわせてくれます。

他に印象的な曲と言えば、闇夜の中黒猫がそっと忍び寄って来るようなスロウなスウィングフィールを感じさせるユニゾンラインが大人の心地良さを演出する「レトロスペクツィヤ RETROSPEKCJA」も。

ここでのDELONGのクラリネットのようにくねりまくるソロは絶品。

また、クラシック的なクリシェを分解しながら隠し味的に混ぜ込む「脱構築を構築」するかのようなTUBISのソロも派手さはないものの彼の天才をまざまざと感じる素晴らしい演奏です。

しかし、続く高速疾走ナンバー「イェスト・ヤク・イェスト JEST JAK JEST」こそが本作のハイライトと言えるでしょう。

ピアノトリオで演奏されるこの曲の、冒頭部のメロディがちょこっと昔私が書いたオリジナルに似ているということもあって、私的には心の琴線を刺激しまくりなんです。

このピュアなメロディとわくわくどきどきの高揚感、絶対皆さんにオススメです。

ジャズファンにとって大人気のフォーマットで演奏されていることも、大きなセールスポイントになると考えているのですがどうでしょう。

本人がどう考えているのかは定かではないですが、この曲は間違いなく彼の代表曲になるはず。

一気呵成に畳み掛けるTUBISのピアノも、静謐な緊張感を秘めたこのアルバムの流れの中で絶妙なワンポイントとなっており、しばらくは忘れられない強烈な印象を残します。

おまけに続くは私の大好きなポーランド原産曲の一つで、同国のミュージシャンにもたくさんカヴァーされている、国民的作曲家スタニスワフ・モニュシュコ STANISLAW MONIUSZKOの「プションシニチュカ PRZASNICZKA」(紡ぎ唄)をインプロヴァイズしたピアノソロ「モヤ・ウチ MOJA LODZ」。

ウチとはポーランドのほぼ中央部に位置する都市の名前。

「MOJA LODZ」とは「私のウチ」という意味になりますね。

TUBISはジャケットにこの曲のことを「THE LODZ ANTHEM」と書いており、ウチとの関係は今一つつかめないものの、この都市出身のアーティストであることに強烈な自負を持っているらしきTUBISにとって、とても大切な曲なのでしょう。

これもまたポーランド人ならではのブルーズの表現かと思います。

それにしても、曖昧模糊とした曲調、しかもメドレーが多いという構成なのにもかかわらず演奏はそう感じさせない圧倒的な技巧、そして気がつくとエロティックな粘液にどっぷりとつかってしまっているかのような麻薬のような音楽性は、危険な常習性があります。

最初に聴いた時はちょっとクラシックにおもねってみた、というようなどっちつかずの音楽に感じたのですがいやいやどうして、バンドメンバーにも予断を許さないフランク・ザッパ FRANK ZAPPAのようなメドレー形式の導入も相まって、緊張感という触手がそこかしこにうねうね蠢いている実にインプロヴァイズスピリットに満ちた演奏になっています。

この危険な魅力のデビュー作がなかなかのセールスを記録し、彼は次作でストリングセクションとのライヴという次なるステップに進むことになります。


MACIEJ TUBISのオフィシャルウェブサイトは↓

http://www.maciejtubis.com/


Personnel:MACIEJ TUBIS(Pf),JACEK DELONG(SS),MARIUSZ WIATER(WB),EMIL WALUCHOWSKI(DS)

2009-11-11

COMPLEXITY IN SIMPLICITY/PAWEL KACZMARCZYK

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI
Complexity in Simplicity/PAWEL KACZMARCZYK AUDIOFEELING BAND
(ACT MUSIC 9484-2)

シンプル・アコースティック・トリオ SIMPLE ACOUSTIC TRIOのECM、レシェク・モジュジェル LESZEK MOZDZERのACT、そしてピョトル・ヴィレジョウ PIOTR WYLEZOLのFRESH SOUNDに続いて本作でメジャーレーベルデビューした注目の若手ピアニストが、このパヴェウ・カチュマルチク PAWEL KACZMARCZYK。

レーベルはMOZDZERと同じACTですね。

ACTはMOZDZERとラーシュ・ダニエルソン LARS DANIELSSONのデュオ『パソドブレ PASODOBLE』の空前の完成度でポーランド人ピアニストに味をしめたのか、今度は前作『オーディオフィーリング AUDIOFEELING』でスマッシュヒットを飛ばして乗りに乗っているKACZMARCZYKを引き入れたわけです。

もっともっと味をしめて、これからもいいピアニストやミュージシャンをメジャーデビューさせてあげて下さい(笑)。

さて、そんな周囲の期待を一身に背負ったプレッシャー掛かりまくりのこの作品、一体どんなサウンドになっているんでしょうねえ。

「何っ、マルコメ君(この呼び名の由来は本人のホームページでも見て確かめて下さい♪)がACTデビュー?すげえ!」と先日まで一人盛り上がっていた私をよそに、発売開始後しばらく経つ今になってもウェブショップさん以外で日本のサイトさんが本作に触れているもの(←ブログお友達のアーティチョーク (CLICK♪)さんが購入されているようですので、2番手を勝手に期待)、もしくは感想を書いているものは全くなく、何かだんだん彼の先行きが不安になって来たので(笑)喜んで露払いを務めさせていただきます。

普通ポーランドのピアニストがメジャーデビューするとなると、「美しいピアノ」とかこれまでのイメージを再生産させるようなサウンドを期待されるであろうことが予想されるわけですが、レーベルカラーに沿いつつ、そのある意味「課題」のようなものを見事にクリアして来たのがKACZMARCZYKより前のメジャーデビューピアニストでした。

SATなんかちょっとECMに染まり過ぎじゃない?って感じでポーランドを拠点としていた頃のファンとしては歯がゆい部分もあるくらいではありますが、それはあくまで個人の趣味の話。

そのやり方で多くのファンを獲得して来たのは間違いない事実ですし、それはそれで素晴らしい達成です。

ところが、そんな大事なメジャー初参戦アルバムでその流れに真っ向から棹差したのがこのKACZMARCZYK。

やってくれました。

自分と同世代、あるいは少し先輩格の現代オールスターを巧みに配置して、様々なフォーマットで近未来的/無国籍な複雑なプログレッシヴサウンドをチェンジ・オブ・ペースを見せながら展開し、大方のジャズファンが抱くポラジャズピアノのイメージをあっさりと覆すばかりか、いい意味で単純に自分の売り=音楽性の核をさらけ出してしまわない周到さも兼ね備えた出来。

美音に酔おうとして来た客のポカーンとした表情を前にそ知らぬ顔をして摩訶不思議なポストモダンジャズを繰り出すお茶目なマルコメ君の姿が目に浮かぶような大胆不敵な作品です。

バスクラが怪しげな映画の始まりを告げるようなイントロダクションナンバーに続いていきなり9拍子の骨太なビートに乗ってハードに展開する「ロウガン LOGAN」が、上で述べたような彼の、クールでかつやることはやってやるなノリの、クレヴァーで確信犯的な不良じみたサウンドをいきなり眼前に突きつけて来るような効果を挙げています。

曲中のピアノソロにおける、華麗な右手と豪快な左手のもたらす絶妙のブレンド感とダイナミクスもカッコいい。

彼のこの特徴的な左手のパワフルさがもたらす突進力、これを以て私は彼を現代ポラジャズピアノ3流派の内「マッシヴ派」に位置づけています。

本作のこの手のナンバーとしては他に「キャッチ・モア・チックス CATCH MORE CHICKS」も。

こちらはややミドルテンポの6拍子イーヴンのビートで、アドリブでは最初にトランペット、ソプラノ、テナーが同時にソロをとりまくるパートが前半、後半は千両役者という感じでKACZMARCZYKの登場。

この曲のピアノソロでは、彼がスタープレイヤーとして存在するにあたって不可欠な「華」のようなものが如実に感じられます。

コードとシングルノートの合間に巧みに第3のミニマルなフレイズを潜り込ませながら徐々に盛り上げて行く業は圧巻。

また、本作の特徴は発表前に亡くなっている2人のジャズレジェンド、フレディ・ハバード FREDDIE HUBBARDとエスビョルン・スヴェンソン ESBJORN SVENSSONへ捧げるナンバーが入っていること。

FREDDIEに捧げられた「オマージュ・トゥ・フレディ HOMAGE TO FREDDIE」は3ホーン+ギター+トリオのセプテット編成で、いかにも生前のフレディも喜んで吹きまくりそうな明るい曲調&快適に滑るワルツビートのナンバー。

アルトソロの後のテナー&トランペットの同時バトルは素晴らしい盛り上がり。

そのすぐ後に配置されるSVENSSONへの「エレジー・フォー・E.S. ELEGY FOR E.S.」は澄み切った湖水のような、美しく静謐なナンバー。

クラシック印象派のピアノの練習曲のような佇まいのピアノパートもいいですね。

素晴らしいのはソプラノで情熱的なすすり泣きを聴かせるグジェフ・ピョトロフスキ GRZECH PIOTROWSKI。

昔彼はピアニストのマルチン・マセツキ MARCIN MASECKIらとアルヘミク ALCHEMIKというバンドをやっていたのですが、そのバンドのファーストというのが強烈なバルカンジャズだったのです。

その時の片鱗を感じさせるようなバルカン的フレイジングが一瞬顔を出したりして、美しさの中にもかなりスリリングな面も垣間見せる、強烈な印象を残すソロです。

グループインプロのタイトル曲も、現ウェイン・ショーター WAYNE SHORTERバンドのような充実度を秘めた名演。

こちらはラデク・ノヴィツキ RADEK NOWICKIの妖しく怪しいソプラノが絶品で、静かなムードの中にも真剣を持った4人がじりじりと睨みを効かせて向かい合っているような物凄い緊張感が感じられる演奏となっています。

他の派手なコンポジションの陰に隠れがちではありますが、ある意味、このナンバーが本作のハイライトを成していると言っても過言ではありません。

ラスト1つ手前の「サマラ SAMARA」では3ホーン入りのセクステットで軽快なスモールビッグバンド調の快速演奏が楽しめます。

どの曲もそうなのですが、コンポウズだけでなくアレンジングも非常に堅固なものになっていて、彼がピアニストとしての実力だけでここまで来たわけではないことを実感させてくれます。

みんなが期待する方向性でがっちり固めるのではなく、いきなり食わせ者的に手持ちカードを散漫にばら撒いたような中にも一つ芯が通った何かを感じさせるこの大器の、同じACTからの次回作が本当に楽しみです。

現代芸術のようなカヴァーワークもカッコいいですよね。


ちなみにKACZMARCZYKのオフィシャルウェブサイトは↓

ぜひ彼のマルコメ君ルックスを見てあげて下さい(笑)

http://www.pawelkaczmarczyk.com/?module=home


Personnel:PAWEL KACZMARCZYK(Pf),TOMASZ GRZEGORSKI(BCL,TS),LUKASZ POPRAWSKI(AS),RADEK NOWICKI(TS,SS),GRZECH PIOTROWSKI(SS),JERZY MALEK(TP),RAFAL SARNECKI(EG),WOJCIEH PULCYN(WB),MICHAL BARANSKI(WB),LUKASZ ZYTA(DS),PAWEL DOBROWOLSKI(DS),BOGUSZ WEKKA(PERC)

2009-10-26

THE RAID/STEPHAN BRAUN TRIO

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

(ATS RECORDS CD-0640)


2枚目のポラジャズ関連「チェロ入りトリオ」は、ドイツのジャズチェリスト、シュテファン・ブラオンの記念すべきファーストリーダー作品。

08年に発売されたばかりで、最前線のヨーロピアンジャズものとしての価値も高いように思われます。

ポーランドのミュージシャンはどこに絡んで来るのかと言いますと、ドラマーがポーランド生まれ(お母さんがロシア人ということです)のボデク・ヤンケなのです。

「ボデク・ヤンケなのです」と出し抜けに言われても困るよ、とお感じになった方もいらっしゃるでしょうが、熱心に欧州ジャズピアノ最新事情を追いかけているファンの方なら彼のプレイを聴いている可能性は高いんですよ。

彼は、『ジャズ批評』誌No.146「ピアノ・トリオvol.4」にも掲載されている新世代の名盤、ブラウンと同じくドイツのミュージシャンでピアニストのオリヴィア・トゥルンマー OLIVIA TRUMMERのセカンド『ウェストウィンド WESTWIND』に参加しているんです。

また、独伊仏波の4ヶ国ミュージシャン混合ユニットであるハンス・フィッケルシャー HANS FICKELSCHERのクラブ/ラテン系ジャズバンド『ユーロピアン・ブラジル・プロジェクト EUROPEAN BRAZIL PROJECT』(後日記事アップ予定)にパーカッションで参加したり、自身のソロアルバムではシンフォニックなワールドジャズをやっていたり、ワールドワイドに活躍するポーランド人ミュージシャンとして彼はなかなか目が離せない存在なのです。

そんなヤンケが参加したこの作品はどんなサウンドなのでしょうか。

前記事の『JEJ SERCE...』がミニマルでチェロがうっすらと使用されるという音楽性だったのに対し、このトリオは全く正反対、チェロは凄まじいハイテクニックで爆走し、ヤンケが叩き出すクラブ世代の細密ビートに乗ってキーボードやピアノが乱れ飛ぶというハイパーポストモダンプログレッシヴジャズトリオ!

つい最近購入したのですが、もうぶっ飛びました、やられちゃいました。

まずはオープニングナンバー/タイトルチューンの問答無用のがぶり寄りにあっさり土俵を割っちゃいましょう。

ブラオンのチェロは左手のフィンガリングの高速ぶりもさることながら、恐るべきはそのアルコテクニック。

まるでヴァイオリン入りのパワージャズのような、ゴリゴリでアップダウンの激しいパッセージをギシギシと擦り出しています。

さらには作曲能力の素晴らしさも特筆すべきでしょう。

変拍子や複雑な曲展開を導入したテクニカルでプログレライクなナンバーがあるかと思えば女性ヴォーカリストをゲストに迎えてアンニュイなフランス語ボッサポップスもあり、トランペッターが参加しての曲では超絶キメキメシンコペのラテンリズム・・・・とところ構わずの八方美人っぷり。

ポーランド系ドイツ人のピアノ/キーボード担当、マトイス・ヴィンニツキの強力に疾走するベースラインとハチャメチャにキレまくるキーボードワーク、そしてピアノに替わればハービー・ハンコックばりの美しくドライヴするプレイも圧巻。

彼なくしては、決してこのトリオのサウンドは成し得なかったと思います。

アルバム中の白眉は12分以上に及ぶ「3ONYSOS」。

のっけから高音部のコードをアルコで鳴らし、その返す刀で低音部をバチッと指で弾くというギターのカッティングのようなチェロのハイテクパッセージが強迫的なビートを刻み、バサバサしたブラシがスネアをこすり更にその「乾き」ぶりを後押し。

そしてエレピが奏でるのははなはだ無機質なリフ。

こんな不穏なムードの中、演奏は次第にヴィンニツキのベースラインと浮遊感漂うヴォイシング、唸り、叫びをあげるブラオンのチェロ、だんだんと手数が増えて行くヤンケのドラムが絡まり合って盛り上がって行きます。

キメをバックにしてのドラムソロが一段落つくと今度はブラオンがベースに持ち替えて、ヴィンニツキが再分割かけまくりのノリノリソロでラストスパート!

ベートーヴェンの「ピアノソナタop.102ニ長調」にインスパイアされたという、タンゴ/スロウラテン調の「メメント MEMENTO」もエロくていいですね~。

掛け声をあげながら高速ラテンドラムを叩くヤンケに導かれて、トランペット+ピアノトリオというまともな編成で演奏される極楽疾走ブラジリアンジャズ「フローティング FLOATING」も最高です。

特に後テーマが終わってからのヴィンニツキのピアノソロの素晴らしさ!

フェードアウトで終わるのですが、かなりゆっくりと音量が下がって行きます。

この出来、本人たちも名残惜しかったんでしょうね。

彼のピアノが良いと言えば、ピチカートでのコードワーク&アルコでの旋律むせび泣きでチェロの美しさをたっぷりと放ち、トラッドとミステリアスなサントラの真ん中ら辺を行くようなムードのメロディを女声スキャットが紡ぐ「ノー・トゥモロウ NO TOMORROW」もですね。

この濡れたような叙情は、まさに欧州ピアニズム。

というわけで様々なタイプの名演がごろごろと入っている、ここ数年のベスト的存在ですなこりゃ。

ポーランド人つながりで凄い名盤に出合わせていただきました。


Personnel:STEPHAN BRAUN(CEL,B),MATTHAUS WINNITZKI(KBD,Pf),BODEK JANKE(DS,PERC),GERARD PRESENCER(TP,FLH),ANNE-CHRISTIN SCHWARZ(VO)

2009-10-22

JEJ SERCE...

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

(QIO VADIS No. UNKNOWN)


ポーランド人がらみの2つの「チェロ入りトリオ」を記事を連続アップしてご紹介したいと思います。

まず1枚目、「SILBERMAN TRIO」でちょこっと日本でも話題になったピアニスト、ドロタ・ザジョンブウォ率いるピアノ+チェロ+ドラムのトリオです。

アルバムタイトルの『イェイ・セルツェ』はそのままユニット名なのかどうかちょっと定かではないのですが、3人の連名作品となると異常に長くなってしまうので(笑↓Personnel参照のほど)、ユニット名も兼ねているということにしておきましょう。

ドロタは私が最近のポラジャズピアノシーンを判り易くするためにむりやり作った3つのカテゴリー「美音派」「抽象派」「マッシヴ派」の内「抽象派」に属する、とした人ですが、まあ「SILBERMAN TRIO」ではそういう感じと言えなくもなかったんですけれどもこの「JEJ SERCE...」ではもっとニューエイジ志向の「美音的」ミニマルチェンバージャズをやっています。

とは言え、抽象派に顕著なもう少しでしっかりとした輪郭を持ちそうな「未満メロディ」と言いますか、あるいはもっと趣のある呼び方に替えて「残り香メロディ」と言いますか、そういう「美しい」というイメージだけ聴き手に残してふわっとアルペジオの中に消えて行くようないい意味で印象の薄い旋律のセンスはこのトリオでもしっかりと発揮されていますので、「美音派」と「抽象派」の境界線上に限りなく近い存在ではありつつもやはり「抽象派」に属するピアニストだと考えても差し支えないのではないでしょうか。

このトリオの面白いところは、普通こういう編成の場合チェロがベースパートに代わるものとしてそういうラインを弾くパターンがほとんどだと思うんですが、このアルバムではベースパートはほぼ完全にドロタの強力な左手に委ねられており、チェロはうっすらとカウンターメロディを弾いたりピアノの右手で奏でられるメロディを補強する役割に徹している、というところ。

その左手によるベースラインが強力にドライヴしている上、ただアルペジオを繰り返しているだけなのになぜかグリグリと盛り上がる曲構成の巧みさも相まって「ニューエイジ/ミニマル」と読んで引いてしまった方もいらっしゃるでしょうが、ベースがいない不足感もありませんし、「それ系」の音楽にありがちな退屈さとも無縁です。

またメロディは、故クシシュトフ・キェシロフスキ KRZYSZTOF KIESLOWSKI監督映画におけるズビグニェフ・プレイスネル ZBIGNIEW PREISNERのサントラのような、ほのかな叙情と寂寥感が織り交ざった感じのものや、バルカンの要素を軽く取り入れたものなど、東欧圏らしさを確実に感じさせる内容。

大バッハ/グノーの「アヴェ・マリア AVE MARIA」もカヴァーしており、そちらはマーチングリズムとリズミカルなチェロのアルコワークを用いた雄大な演奏となっています。

大のチェロ好きにはちょっと物足りないアルバムかも知れませんが、その分ドロタの縦横無尽のピアノとメロディアスな金物が映えるヴィテク・ヴィルクのドラミングが聴きものとなっています。

ガツーンという衝撃や確たる新しさがある作品ではないのですが、ふとした時に聴きたくなる、個人的には特に今の時期、秋から冬への変わり目によく合うと思われる、「抽象派」ピアニストの作品にふさわしい「心象風景」のようなサウンドです。


Personnel:DOROTA ZAZIABLO(Pf),KAROLINA STYCZEN-DMOCHOWSKA(CEL),WITEK WILK(DS)

2009-10-14

新譜情報!

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

それにしても最近のポーランドジャズシーンのリリースラッシュは凄いです。

入手した要注目新譜情報をどどっとアップしちゃいます!


BOP BEAT/JERZY MALEK GROUP

今やポーランドのマレットシーンを牛耳る勢いの若手ドミニク・ブコフスキ DOMINIK BUKOWSKIを擁した、イェジィ・マウェクの最新作。いなせな名盤『ゲット・アップ GET UP』のタイトル曲をセルフカヴァーしているようです。


WAROWNYM GRODEM/ANDRZEJ JAGODZINSKI TRIO & AGNIESZKA WILCZYNSKA

ついに出た、ポーランドジャズ史上に燦然と輝く名トリオ、アンジェイ・ヤゴジンスキ・トリオと女性ヴォーカルの共演盤!


BRAND NEW WORLD/SLAWEK DUDAR QUARTET

クラブ系アコースティックジャズも視野に入れた、オールラウンドな若手クァルテット。名ピアニスト、ビリー・チャイルズ BILLY CHILDSのナンバーや「ラウンド・ミッドナイト 'ROUND MIDNIGHT」も収録。


OPOWIESC/WOJCIECH MAJEWSKI

隠れた名手、ピアニストのヴォイチェフ・マイェフスキの最新作。ベテランテナーのトマシュ・シュカルスキ TOMASZ SZUKALSKIや新世代のバカテクドラマー、クシシュトフ・ヂェヂツ KRZYSZTOF DZIEDZICらとのクィンテット編成。


DZIKI JAZZ/PATER,KAMINSKI,UROWSKI,GORZYCKI

エクスタシー・プロジェクト ECSTASY PROJECTなど数種のバンドのリーダーを務めるドラマー、ラファウ・ゴジツキらによるサックス+ギタートリオ作品。


BALBOO/PIOTR ZACZEK

ウルトラハイテクドラマー、ツェザルィ・コンラト CEZARY KONRADのリーダー作や数々のハイテンションなフュージョン作品で気を吐いてきたテクニシャンベーシスト、ピョトル・ジャチェクの最新作。若手鬼才ヴァイオリニストのアダム・バウディフ ADAM BALDYCH他手堅いメンバーに加え、天才レシェク・モジュジェル LESZEK MOZDZERもゲスト参加。


LIVE AT JAZZ STANDARD,NEW YORK/MATEUSZ KOLAKOWSKI & DAVE LIEBMAN

「マッシヴ派」の若手ピアニスト、マテウシュ・コワコフスキと、何とデイヴ・リーブマンとのデュオライヴ!


LIVE AT SJC/OLES BROTHERS & ROB BROWN

「西にMOUTIN兄弟あれば、東にオレシ兄弟あり」の豪腕双子リズムセクション、オレシ兄弟とフリーコンテンポラリー系サックスの雄、ロブ・ブラウンのサックストリオライヴ。熱そう!


A TRIBUTE TO ZBIGNIEW SEIFERT/JAREK SMIETANA BAND

夭逝の天才ヴァイオリニスト、ズビグニェフ・セイフェルトに捧げられた、彼と共演歴もあるベテランギタリスト、ヤレク・シミェタナのアルバム。彼のバンドに1曲ずつ交代でゲストヴァイオリニストが参加、という体裁なのですがそのヴァイオリン陣がムチャ豪華!DIDIER LOCKWOODやPIERRE BLANCHARDのフランス陣、MARK FELDMANにJERRY GOODMAN、さらにはKRZESIMIR DEBSKIやMATEUSZ SMOCZYNSKIを初めとしたポーランドのスタープレイヤー勢揃い!これは凄い作品の登場です。収録曲はもちろん全てセイフェルトのオリジナル。


LIVE AT JAZZ CAFE/URSZULA DUDZIAK SUPER BAND

世界を代表するマジカルスキャッター、ドゥヂャク姐さんの最新2枚組ライヴ。ピアノ、ギター、ウッドベ、ドラムのアコースティックなクァルテットをバックに従えています。ピアノ(&アコーディオン)担当はレコーディングエンジニアとして破竹の勢いで活躍中のヤン・スモチンスキ JAN SMOCZYNSKI。


EMOTRONICA/GRZECH PIOTROWSKI

ACT MUSICからのワールドデビューでぶいぶい言わせ中の期待のピアニスト、パヴェウ・カチュマルチク PAWEL KACZMARCZYKやこれまたぶいぶい言わせてる超売れっ子ベーシスト、ミハウ・バランスキ MICHAL BARANSKIらが参加した、サックス奏者グジェフ・ピョトロフスキの作品。プログラミングなども導入した今風のハイセンスジャズ。


SUPERDESERT/100NKA & HERB ROBERTSON

パンク&ジャムセンス溢れる若手のギタートリオがリヴィングレジェンドなトランペット奏者ハーブ・ロバートソンと共演しちゃった。


個人的に注目のものは全部アップしましたが、もちろんこれ以外にも色々出ています。

ほんと凄い勢いですよね。

2009-10-13

新譜・旧譜取り混ぜて、レヴュー更新予定

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

いや~、いっつもこんなんですんまへんなーorz

諸事情あり、なかなか更新出来ない状態が続いております。

最近は安いレア盤漁りより、シーンの最先端事情を伝えてくれる新譜の購入に力を入れているオラシオです。

それら新譜や、ここ最近気分で携帯に入れてヘヴィロテしている未レヴュー作品でアップしたいと考えているものなどの更新予定リストを挙げておきます。

優先的にアップして欲しい、というものがあればリクエストはお気軽にどうぞ。


ほやほやの新譜系


LITTLE THINGS/JAROMIR HONZAK

チェコのベーシストの最新作。和音建築家ギタリスト、ダヴィド・ドゥルジカ DAVID DORUZKAやポーランドのミハウ・トカイ MICHAL TOKAJ、ファーストコールドラマーのウカシュ・ジタ LUKASZ ZYTA+クリス・チーク CHRIS CHEEKという強力過ぎるインターナショナルバンド。


COMPLEXITY IN SIMPLICITY/PAWEL KACZMARCZYK AUDIOFEELING BAND

「マッシヴ派」ピアニストの急成長株、パヴェウ・カチュマルチクがいきなりメジャーレーベルのACTからぶちかましたサード。若手の実力派がうようよのプログレッシヴテクニカルジャズ。


UKLAD SCALONY/JANUSZ MACKIEWICZ QUARTET

ベーシストのヤヌシュ・マツキェヴィチの最新作。新進気鋭のマレッター、ドミニク・ブコフスキ DOMINIK BUKOWSKIとのハイパーモーダル(?)な芯の太いジャズ。


PICTURES/ADAM CZERWINSKI & DAREK OLESZKIEWICZ

実力派ギタリスト、ラリー・クーンス LARRY KOONSEを迎えてのトリオ。


SIMPLE JOY/MARCIN OLAK TRIO

寛いだ雰囲気の中に高度にユニジャンルな要素を含んだ若手ギタートリオ。ギタリストは完全アコギ&クラギ使用です。


SKETCH IN BLUE/BRONISLAW SUCHANEK & DOMINIK WANIA

リヴィングレジェンドクラスのベテランベーシストと、若手「マッシヴ派」ピアニストとのデュオ。


TRIO/BOGDAN HOLOWNIA,BRONISLAW SUCHANEK,GUNTER WEHINGER

ポーランドのベテランPf&WBに、スイスのフルーティストが加わったトリオ。


SECRET SISTER/SCIANKA

ロックバンドのシチャンカがイレク・ヴォイチャク IREK WOJCZAKとトマシュ・ジェンテク TOMASZ ZIETEKの2人のジャズホーンを迎え、1964年の同名アメリカ映画にインスパイアされて製作した架空のサントラ。クラブ系リスナーに受けそうなカッコ良さ!あちらではかなり売れてます。


NORMAL/KAROLINA GLAZER

ウルシュラ・ドゥヂャク URSZULA DUDZIAKをこよなくリスペクトする女性シンガーの、かっ飛びクラブ系ジャジーポップ。純ジャズを期待するとちょっとハズレますが、キュートな声質とヴォイスオーヴァーダビングのヒップな使用法により、むちゃくちゃ完成度の高いアルバムになってます。


旧譜系


LONG TIME/IREK GLYK

先日『STEP AHEAD』をアップしたイレク・グウィクのファースト。


AUDIOFEELING/PAWEL KACZMARCZYK

上記カチュマルチク君のセカンド。


SLAP & CARESS/LESZEK KULAKOWSKI

才人レシェク・クワコフスキの目下のところ最新作。上述ブコフスキが参加。ヤツェク・ペルツ JACEK PELCも!


LIVE IN MINSK MAZOWIECKI/TAQ

「抽象派」ピアノのスター、マルチン・マセツキ MARCIN MASECKI率いるインターナショナルトリオ。


SPELNIENIE/MACIEJ TUBIS

これも「抽象派」のニューカマー、マチェイ・トゥビスのファーストにしてライヴ。ソロからクァルテットにいたる様々なフォーマットで、彼のやりたいことが炸裂しています。


LIVE IN FILHARMONIA LUDZKA/MACIEJ TUBIS & POLISH STRING ORCHESTRA

と思ったらまだまだやりたいことがあったようで(笑)、トゥビス君今度はストリングスとのライヴ。


JEJ SERCE...

これまた「抽象派」の一人、ドロタ・ザジョンブウォ DOROTA ZAZIABLOがチェリストとドラマーとのトリオで展開するニューエイジ系ミニマルジャズ。


ASAF

「ミスター哀愁」マチェイ・シカワ MACIEJ SIKALAや豪腕ベーシストで現代シーンを牽引するミハウ・バランスキ MICHAL BARANSKIらによるスペシャルクァルテットのライヴ。


SOUNDCHECK

現ズビグニェフ・ナミスウォフスキ ZBIGNIEW NAMYSLOWSKIバンドのベーシスト、アンジェイ・シフィェンス ANDRZEJ SWIESらによるクァルテットのファースト。

2009-10-01

STEP AHEAD/IREK GLYK MULTISOUND

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

(WARTO WYDAWNICTWO)


最近勢い目覚ましいポーランドジャズシーンの「周辺楽器」ですが、そのウェイヴを牽引する一人、アンダー40のマレット奏者イレク・グウィクのトリオ「マルチサウンド」の1stアルバムがこちら。

ドラムに名手アレク・スコリクを迎えて満を持しての発表です。

かの国のマレットレジェンドには長い間イェジィ・ミリャン JERZY MILIANが君臨しており、それに続く存在が超フュージョン畑のベルナルト・マセリ BERNARD MASELIでした。

2人ともあまりにカラーが違い、かつスタイル・オリエンティッドなため、その手の音楽のファン以外はいまいちとっつきにくい楽器だったように思います。

そんなスター不在のシーンに突如デイヴィッド・フリードマン DAVID FRIEDMANの影響を多分に引っ提げて登場したグウィク。

自身によるヴィブラフォン、そしてベース&ドラムのみによる編成もダニエル・ユメール DANIEL HUMAIRがフリードマンと録音した『トリプル・ヒップ・トリップ TRIPLE HIP TRIP』などを踏襲したと言えなくもありません。

しかも本作には2曲ゲストで、そのフリードマンと共演したり彼に捧げた曲を作ったりしているピアニスト、ヨアヒム・メンツェルを迎えているのですからその傾倒ぶりも半端ないですね。

肝腎のサウンドは一聴フュージョンタッチの爽やかなテイストを持ちながらもプログレッシヴな曲展開と幻惑のハーモニーセンスがブレンドされたかなり独自性の強いもの。

ジャズロックファンの方にも諸手を挙げて歓迎されるタイプの音楽だとも思います。

粘りつくような音色と歌いまくるラインが素晴らしいロベルト・シドウォのベース、その名の通りスコリクの「スコスコ」と気持ち良く抜けるドラミングも快楽指数をアップさせてくれます。

グウィクのファニーなメロディセンスが活かされた「アコースティック・ワルツ ACOUSTIC WALTZ」はメンツェルが参加したうちの1曲。

アップ・トゥ・デイトな、いかにも現代的なサウンドヴィジョン(ともすればオールドファンに軽い!と切り捨てられそうな感じ)の持ち主ながら、オーソドックスなジャズ語法も多彩にマスターしていることを証明する達者なアドリブパートが美しいです。

相変わらずリリカルなメンツェルなピアノも素晴らしいですね。

グウィクのフリードマンフォロワーぶりが爆発するのが自作の「シンキング THINKING」における長い長い独奏パート。

靄が立ち昇るようなメロディとハーモニーが一体化したアプローチ、それでいて胸をかきむしるほどロマンティックでノスタルジックなプレイはまさにスタープレイヤー登場の証。

派手な曲でも何でもないですが、真の実力はこういうところにこそ宿っているもの。

また、彼のプログレ魂が炸裂のキメキメジャズロックテイストの「ナーディス NARDIS」もいいですねえ。

アレンジの大部分で編曲の天才メンツェルのアイディアがかんで来ているような気もしますが、7拍子を導入したり妖しいリハーモナイズを施したり、一部分だけベースにもメロディをとらせたり、しかもそこだけちょっとメロディをいじってあったり、一筋縄では行かないジャズが大好きな私のようなファンの心をくすぐるパートがてんこ盛り!

アドリブパートも敢えてベースが引っ込んで、話がどっちに転がるのか判らない手に汗握る三者面談状態でぐりぐりと盛り上がる思春期ドキドキインプロヴィゼイション。

グウィクが退き、すかさずシドウォが入って来てからのピアノトリオによる演奏はリーダーには申し訳ないですがこのアルバムのクライマックスと言える密度の濃さ。

メンツェルは言うに及ばず、スコリクの説得力のあるドラムフレイジングには体が揺れます。

てな感じでなかなかの充実ぶりを誇る本作なのですが、さらに嬉しいことにラストに素晴らしい美曲が収録されているのです。

ピョトル・ヂュベク PIOTR DZIUBEKという人の「ファイン FINE」というワルツです。

これは一度聴くと忘れられない可憐でリリカルなメロディです。

また、その磁力の強い旋律に縛られずにコード進行から適度に逸脱したりシングルコードパートを阿吽の呼吸で伸ばしたりするトリオのインタープレイの緊密なコンビネイションも特筆すべき。

アドリブの後にもう一度テーマを演奏するのをやめて、ベースで断片を弾くに留めてスーッと去って行くのも後味が良い演出。

こういうことをされるとまたアルバムを最初から聴きたくなってしまうではないか(笑)!

42分という最近のアルバムにしては短めの収録時間もその効果を倍増。

グウィク氏、その音楽的才能だけでなくなかなかの策士と見ましたぞ。

どうでも良いのですが、このアルバムジャケのメンツェル参加曲のクレディットが間違ってまして、2,5曲目ではなくて2,4曲目なのです。

CDが届いて聴いたら、参加していないと思っていた「ナーディス」にいきなりピアノが聞こえて来てびっくらこきました(笑)。


Personnel:IREK GLYK(VIB),ROBERT SZYDLO(E-AB),AREK SKOLIK(DS),JOACHIM MENCEL(Pf)


↓グウィクについては彼のウェブサイトをご参照のほどを

http://www.glyk.pl/?irek-glyk,1

2009-10-01

いつか読書する日

テーマ:STORIES IN A SQUARE
いつか読書する日 [DVD]

ひさしぶりに大人のテイストの素敵な映画を観ました。

川本三郎さんだか四方田犬彦さんだかの好意的な評を読んだのと、棒読み「あんたほんまにそれ演技なんかい」演技が好きな岸辺一徳が主人公を演じているので気になっていた映画、ようやく観れました。

50歳になる同級生の中年男女。

田中裕子扮する大場美奈子は、早朝に牛乳配達、昼から夕方にかけてはスーパーのレジ打ちをして生計を立てています。

対する岸辺の高梨槐多は地元の役所の児童課勤務。

2人は高校生の時付き合っていましたが、画家であった高梨の父と大場の母のスキャンダラスな事故死により別れを余儀なくされます。

20歳になり父とも死別した美奈子は一人で生きて行くと決心、以後どんな男性とも付き合わずよりかからず、舞台となる坂の多い長崎の街の牛乳配達という過酷な仕事のように一歩一歩地に足を踏みしめるような人生を歩み始めます。

槐多は末期がんの妻の看病に忙しい毎日。

献身的に妻に尽くす彼からは、彼女への愛が感じられます。

しかし牛乳がほとんど飲めない彼の家には毎日美奈子が配達する牛乳が届けられるのです。

足でしか配達出来ない、それでいてそのことが辛い地形であるにも関わらず毎日時間ぴったりに配達される牛乳の配達手が誰かを偶然知った高梨の妻は、夫の秘められた想いに気付きます。

余命少ない彼女はある日病身をおして牛乳箱に手紙をしのばせるのでした。


私の人生のモットーに、「人間関係は試したら終わり」という自作のアフォリズムまがいのものがあります。

これは、他の人とのお試し関係をしない、という多分に男女関係におけるパターンを想定したものです。

大人の恋愛を描いているという映画や小説に触れる度、結局はセックスに到る主人公たちの姿に「結局は行き着く先はセックスか」といっつもがっかりしていたものですが、この映画が描く主人公2人のセックスは「これは確かめる(=他の人との関係を試す)のはいいよなあ」と思えるものでした。

「でした」と断定的に言ってはみたものの、そう思える理由が何なのか見終わってからずっと考えているのです。


美奈子はスーパーの後輩にずっと一人でさびしくないのかと訊かれ、へとへとになればいいのよと答えます。

実際、彼女のようなハードワークを毎日続けていればそうなっておかしくありません。

しかしそれは裏返せばそうならなければさびしくて仕方ないということでもありますし、また、槐多への想いを封じて一人で生きて行くというのならば街を出て行けば良いのに、そうしないところに彼女の抱えた矛盾と、それゆえの想いの深さが感じられます。

美奈子と槐多は、いい歳をして、街でお互いを見かけてもろくに目も合わせられません。

あえて避けているのでしょう。

たとえ軽い視線の、糸のように細い交わりであっても、自らが選んだ人生を壊す勢いで想いが吹き出しかねないと言わんばかりに。

しかし、2人はあるネグレクトされている子供と、美奈子の痴呆症を患っているおじ、そして槐多の妻の死をきっかけに再び近付いて行きます。


この映画を観ていると、現在35歳の私と相方が、この後どういう中年時代を迎え、そして老いて行くのかということも考えさせられます。

不慮の別れというのはどんなに心積もりをしていても突然訪れるものですが、それでもなお、それまでの日々を振り返って「充分に楽しく二人で過ごせた」と思えるだけの時間を積み重ねた後であって欲しいと思うのです。

大いに矛盾していますが。

悲しみに暮れるだけの未来しか与えてくれないほどの短い間で別れさせられてしまうのは辛いなあ、と改めて痛感させられました。


美奈子が「相手の気持ちを確かめるには1日あっても話し足りないでしょう」とラジオ番組へのハガキに書きますが、実際は1日しかありませんでした。

しかし彼女と彼はその想いを確かめることが出来ました。

小説家である美奈子のおばが綴る「大場美奈子の長い恋は終わった」の文には涙します。


私だけの感想かも知れませんが、この映画には奇妙な逆転現象が発生しているように思えます。

こんなのあり得ないよ、というような複雑怪奇な坂に覆われた、舞台となる街のファンタジックな風景は長崎の実際の姿である一方、いかにもリアルにシリアスに掘り下げられたかのような主人公2人のある種ストイックな姿勢や、高梨の妻のこれもまた別種の愛のありようなどは、実際にはファンタジーでしかないでしょう。

それでもやはり主人公たちの生き方には考えさせられるのです。

実際にはファンタジーでしかない、と断言してしまって本当にいいのでしょうか。

大人の恋を、素晴らしい、そして新しい形で見せてくれたいとおしい作品です。

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