タイトル通りですが、エンドピンを曲げてみました。
理由は、最近、肩こりが酷く、暫く前に朝起きる時に首に激痛が走って「これはヤバい」と思ったからです。
昨年からチェロの構え方を変えて、エンドピンを昔ながらの長さ=親指と小指を広げたくらいの長さに変更して、演奏に関しては特に問題なく弾きやすかったのですが、C線のペグが首や頭に当たる為、これを避ける様にして構える為、頭がやや前に出た状態となって弾いていました。
これ、完全にストレートネックの状態ですが、頭の重さと楽器演奏の影響で肩凝りが酷くなっていました。
一般的なペグの場合は、C線の部分をキーペグに変えると言うカードを切る事が出来ます。
自分もチェロを始めた頃はこれを装着していました。
但し、自分はペグを全てウィットナーのファインチューニングペグへ交換している為、このカードを切ることは出来ません。
そこで、ペグが当たらない様に楽器の構え方を変えようとするとエンドピンを長く伸ばして、楽器を上向きにする必要があります。
今までの弾き方と違う演奏面はともかく、やってみると確かに首が楽な姿勢で弾けるのですが、エンドピンを長くすると、今使っている8mmの細いエンドピンは撓みが増えるので、10mmに交換してみました。
気軽にエンドピンの直径を変更できるのがインナーコレットホルダーの良い所ですね。
10mmの場合、撓みも気にならなくなったのですが、エンドピンの先端の角度が浅くなるのでストッパーも滑りやすく安定しませんし、オケの合奏で、こんなにエンドピンを長く伸ばすと邪魔になります笑
どうしたもんかな。と考え、トゥルトリエが使ってたベンドタイプも考えましたが、手に入れるのも面倒です。
ふと「これ曲げてみるか」と8mmのエンドピンを曲げてみる事にしました。
まあ、別に気に入っているエンドピンも2本くらいあるので、以前からベンド型を使ってみたかった事もあり、すぐに取り掛かりました。
自分、決断と行動は早いのが信条ですが、闇雲に曲げても仕方ないので、一応、絵を描いて検討してみました。
丸棒の場合「ラジアル荷重」と言う横からの力と「スラスト荷重」と言う軸方向の縦の力が掛かりますが、チェロ のエンドピンを伸ばすと、楽器を上向きにする事で楽器の重さ含めて演奏でも横からのラジアル荷重の変化による撓みが発生しやすくなります。
例えば弓の圧力の変化やビブラートにより影響を受け演奏に支障をきたします。
一方でエンドピンの軸方向のスラスト荷重は実際の演奏で発生する事が少ない上、楽器が上を向けば一層少なくなると思われ、曲げる事により受けやすくなるスラスト方向の荷重はあまり考慮する必要が無さそうか気がしました。
問題は何処で曲げるかですが、結局、中心部分から曲げるのが最も強そうで角度も柔軟そうなので、中心部分から曲げる事にしました。
自分のアルフェのエンドピンは鉄とアルミの合金なので、どの程度アルミが含まれてるか不明ですが、恐らく手で曲げられるだろうと思い、昔、木工で使ってたバイスを倉庫から取り出して、タオルで挟んで軽く体重を掛けるとアッサリ曲がりました。
角度は当初、適当で良い?と思ったのですが、自分の欲しい角度と高さはエンドピンを出している長さと角度に影響するので、実際に構えてみると中心から曲げた長さでは、やや角度が深すぎたので、再度、バイスで挟んで、若干浅く戻しました。
さすがに手では簡単に曲がらない様で、それはそれで良いですね。
トゥルトリエのエンドピンは楽器から出た場所から曲がってましたが、自分の場合、それよりもやや出した状態が丁度良い様でしたし、この長さを出し入れする事で角度や高さを若干変更出来ます。
装着して弾いてみると真っ直ぐ長く出しているよりも床への設置距離も近く圧倒的に安定します。
スラスト方向の荷重には弱くなりましたが、予想通り、ラジアル方向の荷重は長く伸ばしているよりも強くなってるので演奏にも支障は無さそうです。
又、自分のエンドピンソケットは見附精機さんのインナーコレットホルダーで、工業用ドリルのチャック(固定する部分)が使われている為、エンドピンをしっかり掴んでいる点も良い様で、一度締め付けると演奏により回転する事もありません。
恐らく、一般的なネジで片側から固定するタイプのソケットだと、単に丸いエンドピンでは簡単に回ってしまう為、挿入部分を半分に切った様な特殊な加工が必要になるでしょう。
これを活かして、楽器に対して横方向へ付ける事も出来ますが、横向きに装着すると楽器が回転する力が発生するので、方向によって弾きやすくなります。
自分の場合、写真の方向(分かりやすく極端に回してます)にした方が表板が右を向いてフィットする感じでした。
ちなみにベンド型のエンドピンを使ってるロストロはこれとは逆方向にしている写真がありますが、これだと左側に楽器が回転するので、左足にしっかり当たって良いのかもしれません。
但し、横向きに装着する場合、楽器を上向にするメリットは無くなるので、自分にはあまり意味がありません。
ベンド型のエンドピンは楽器の中に入らないデメリットがあり別に持ち歩く必要がありますが、自分はBAMのキャリーシステムをケースに装着してる為、キャリーのバッグの中にエンドピンを入れる事が出来るので、それも問題ないでしょう。
後は、上向きにした状態での演奏に如何に慣れていくかですが、暫く弾いてみて特注で作って貰ったジュラルミンの軽いソケットを以前使っていたコントラバス用の大きな物へ変更しました。
理由は締め付けトルクを強くする為で、ジュラルミンは軽くて良いのですが、直径が小さいので締め付けトルクがコントラバス用よりも小さく、可能な限りガッツリ締め付けたい為です。
音質的にはジュラルミンの方が広がる印象ですが、音量的には重たい方が芯のあるしっかりした音になるので問題は無い様です。
ベンド型のエンドピンそのものは、盛ってる訳じゃなくて、メチャ良いです笑
思いきってやってみた事が必ずしも上手く行くとは限らないのですが、今回は当たりでした。
何より、肩凝りも首の痛みも無くなり快適で、予想外だったのがチェロが大変軽く感じられる事です。
これは重さの話ですが、エンドピンを伸ばして楽器を上向きにするとチェロの重さがエンドピンの先端からの長さ分、回転モーメントとなり身体に斜めに掛かるので短い場合よりも腰の負担も増え、首は良くとも今度は腰を悪くしそうでした。
ところが、エンドピンが曲がっていると、接地面から殆ど垂直にエンドピンが立ち上がり、そこから斜めになっている為、真っ直ぐ伸ばしている状態よりも回転モーメントが小さくなり、チェロが大変軽く感じ「こんなに楽器が上を向いているのに軽い」と言う、今までに無い新鮮な感覚です。
演奏面では、最近、弓の毛をあまり張らずに弾く奏法を研究していますが、楽器を上向きにすると弓の毛がフラットに当たりやすい上、腕の重さも当然使える為、音量もアップした様で、左手も上から入る為ハイポジションが弾きやすくなりました。
左手に関しては、左腕の重さも使える為、押さえも楽になってビブラートそのものも掛かりやすいのですが、これに加えて、曲がっている事でスラスト方向の撓みが発生しやすくなった為、ビブラートが大きくなった様に感じます。
先の図の、曲がった部分を中心にした前後の回転方向の撓みが発生しやすくなっている為、これに伴いスラスト方向の振動が発生すると言う事です。
分かりやすく言えば、お寺の鐘を点く棒は一度小さな力で揺らすと棒の重さで水平に動きますが、これと同じ原理で、通常、ビブラートを掛ける場合、エンドピンに対してスラスト方向の振動が発生しますが、エンドピンが真っ直ぐの状態ではエンドピンが変移する事は殆どありません。
ところが、曲がっていると簡単に図の様な撓みが発生し、スラスト方向の振動が増加し、上手く同期するとビブラートが大きくなると言う訳です。
同様に弦そのものも振動で伸び縮みする為、この振動でエンドピンが撓み、振動の正帰還が発生する事で音量も増加しているのでは無いかと思います。
通常のエンドピンでは殆ど発生しないスラスト方向の振動が発生しやすくなるのは予想してましたが、演奏面に関しては良い方向で効果が出ている様です。
比較してませんが、10mmの太いエンドピンよりも8mmの細いエンドピンの方が撓みは顕著だと考えられ、それによる効果も当然8mmの方が顕著でしょう。
エンドピンストッパーもエンドピンを短くしていた時と変わらない位置に置けますので、合奏の時もスペースを取らないと思います。
以上、今のところプラスに感じる点は沢山ありますが、マイナスを感じる事はありません。
まあ、休憩時間含めて、一々エンドピンを抜き差しするのが面倒と言う程度でしょう。
但し、今使っているエンドピンストッパーが時々微妙に前へ動く感触があります。
恐らく、スラスト方向の撓みの影響でストッパーを水平方向へ動かす力が増えたのだと思います。
実際に大きくズレた感触はありませんが「うん?」と言う微妙な感触があるので、これは合奏の場所等で確認する必要がありそうです。
最後に、自分の場合、インナーコレットソケットを付けている為、普通のエンドピンを曲げてもしっかり固定して使えますが、殆どの人はこれを付けてません。
恐らく、ネジ型のソケットの場合は単に曲げた物を装着しても、エンドピンが回転して使えないと思いますので、良い子は真似をしないで下さい笑
今回使ったエンドピン
又、ベンド型と言うのは自分の体格(膝から下の長さ等)に応じて角度や長さを決定する必要があると言う事も分かりましたので、曲がっていれば何でも良いと言う訳でも無さそうです。
そう言えば、コントラバスでもこの様に楽器に対して一定の角度で装着するエンドピンがありましたが、コントラバスでもメリットあるんですよね。