第63回 利益の創出
今月、上場企業の多くが決算を迎える。
昨年、東証に上場している1507社の全企業の2002年損益を、足し合わせると、9,669億赤字になった。
何故、利益が出せないのだろうか?
赤字経営者の方々は、環境の激変、競争激化、市場飽和といった要因をあげることが多い。
しかし、こういったことは、いつの時代も、どの企業も出あう必然の事態である。
解決の手立ては、環境変化に素早く対応し、利益を出せる経営ができるかどうかにかかっている。
顧客の利益接点にすべてを集中すること」によって、自社の競い合う事業分野の中で、ひたすらナンバーワン、もしくはオンリーワンを目指している企業は、結果として利益を生み出すことへとつながっている。
過日、エンジャパン越智社長に、お会いした際、どうしてそんなに利益が出るのか訊ねると、「売上数字は追いかけていない。」との言葉が返ってきた。
「ただ、ひたすら、「職縁」という理念を持って、転職された方に企業で活躍して貰う為に、企業側に情報開示を正確に求め、求職者が求めている情報を徹底的に提供し尽くそうと思ってやってきた。
特に、一社一社取材し、専門のコピーライターが原稿を作成し「取材者の印象」や「職場を動画ムービー」で閲覧できるようにしている。
値引きなしの定価販売で、どの企業に対しても、同価格で同レベルの情報サービス提供している。
質のNO1を目指し、量を追求しない“不良品を出さない”経営を展開している。」とのことであった。
現在同社は、売上31億、経常12億、時価総額120億だ。
越智さんの経営は、頑固なまでの経営姿勢と、理念を共有によって組織がまとまり、効率的な資源や能力が整った企業活動ができ、利益を創造していくことを示している。
どのような環境変化が起きても、利益を生む基本は、いつの時代も変わらない。
第62回 ユビキタス情報社会
過日、自分の名前をネットで検索エンジンにかけてみた。
自分自身の情報が数多く掲示されていて驚いた。
講演・会社情報、新聞パブ、イベント協力情報、各種団体の参加仕事情報に登場している。
プライベートな内容までと考えると、ぞっとした。
1995年頃のネット黎明期の頃は、情報を見てもらうだけのサービスだった。
最近では急速にインフラが整い、そして機能が増え、いつでも何処でも誰でも様々な情報を、コストをかけずに入手できる「ユビキタス情報社会」(ユビキタスとは、ラテン語で神はどこにでも遍在するという意味)がやってきた。
便利である反面、「このサービス、こんな使い方すると、こんなことできてしまう」と、セキュリティの視点でドキッとする場面が時々ある。
ネット利用者は爆発的に増え、作り手側の「こんなふうに使って貰いたい」といった勝手な解釈はいっさい通用しない。
一度事故が起こったら、信頼を失う社会になった。
今、どの企業も、ネットの危険性に直面している。
とくに、知名度の高いサービスや会社ほど、何か問題が起こった時の反響は大きい。
便利な面ばかり追求することなく、サービスやシステムを、良く検証し、そして取り入れていかないと大変なことが想定される。
「2チャンネル」のことは皆さんご存知だろうか? いろんな【族】が、様々な企業に向け、いろんな造言を書き綴っている。
その内容が事実かどうかは別にして、実社名入りで書かれた企業は、大きなイメージダウンとなる。
情報が真中に位置し、大きな力を持った今日の社会は、利便性とリスクの両面を有している。
また、小が大に挑めるこれまでにない、大きなビジネスチャンスの時代でもある。
今日の絶好のビジネス機会に向けベンチャー企業は、個人情報を頂けても、安心して自社のサービスを利用してもらえる目線から、ひとつずつリスクをヘッジし、マーケットインからの、ビジネスモデルを構築していくことが
大きなビジネスに育っていくだろう。
第61回 変革の世紀へ
新たな年を迎え、皆さん今年はどんな「志」で望まれただろうか?
昨年は、株価8000円台、金融再編、大手企業の経営破綻、ナスダック撤退、デフレ継続、拉致問題etc・・と21世紀の訪れは未だ閉塞感の中にあった。
企業間においては、主役の座が入れ替わり、目前の変化を、ビジネスチャンスに捉えた起業家や、支援してゆく仕組みやインキュベータ-が数多く生まれた。
昨年の年末12月20日ベンチャーリンクの小林会長が、突然業績不振を理由に辞任した。
小林さんとは、20年来の知人でもあり、ベンチャー企業待望の昨今、彼が辞任することは、残念なだ。
以前、インキュベーションの在り方を議論した際、私とは違った視点からのアプローチだったが、小林さんが与えた社会へのインパクトは大きく、多くの企業成長の実績を残したと思う。
最近、至るところで行政を始め、民間組織でベンチャー支援が行われている。
ベンチャー起業家やそのスピリットを醸成するというより、手っ取り早くインキュベート(培養)し、途中から、起業家の意志とは離れた利益を求める風潮や手段に走ってい。
本物の成功者達は、培養された企業(起業)ではなく、したたかで足腰も強く胆力を持って、自己責任で経営を推進する経営者と強いチームマネージメント陣によって構成されている。
頑固な理念を持ち、少ない資金を積み上げ、夢と現実の狭間に苦しみながら問題解決の連続から社会に根ざしてきたからである。
ここ数年前まで、勘違いする投資や、過大評価を与え、本人の意志と違ったところでフィールドが膨張してしまうケースが数多く見受けられた。
こういった一連のベンチャー企業の挫折や支援会社の衰退も、大手企業の失態も、共通した原因によるものと思えてならない。
経営は、決断と実行の連続である。
経営を掌るリーダーが、自らの理念で意思決定(決断)し、「すべての責任は自分にある」と心底思っていなければ、他人任せの経営者不在の経営になってしまう。
今、多くの経営者が陥っている要因は、決断する経営陣不在であり、その基準値が不透明な状況にあるからだ。
未来社会は、ますます「真ん中に情報と知識」が存在し、「個人の存在や力」に注目が集まる。そして、それは同時に個人に責任が生じることでもある。
これからの経営は、指揮でなく「情報が変革の原動力」となっている現実に気づき「個々人が新たな担い手」となって表舞台に登場している事実を直視することにある。
そして、パートナーのモチベーションが最高に良い状態を創造し、維持しなければならない。
変革の世紀の今、100年続いた組織概念でない新たな情報モチベーション組織で、2003年のスタートを!
第60回 ニューブリード
激動の2002年も残すところ一ヶ月、
経済界は相変わらずデフレから出口の見えない一年となった。
例年この季節に、芸大祭や上野美術館で開かれる日展に足を運んでいる。
日本中から集った若き芸術家の卵達のおりなす芸大祭は、毎年新鮮な発見と感動を与えてくれる。
特に今年の芸祭は、感動の出会いがあった。
これまで見たことの無い画風と遠近感溢れる完成前の風景画に、心惹かれ、作者と会ってみた。
29歳の目元涼しい青年芸術家は、「ボーボリ庭園」をモチーフにしたという作品への思いを、力強く説明してくれた。
話を聞きながら、春先の穏やかな季節に、「庭園」を散歩しているシーンを感じ、未完の作品であるにも関わらず、仕上がった画面が見える気がした。
この作品を身近な人達に見て欲しい衝動に駆られ、本人にそれを伝えると快く譲ってくれ、今では会社に飾ってある。
来社した人達は、一様にこの作品に近づき「絵だ!!」と驚いている。
この感動が媒体となって、話が弾み元気な会話を創造してくれている。
ここ数年、社会人の日展作品は、残念ながらインパクトのある個性溢れる作品と出会うことが少なくなって来た様に感じる。
年末になると経済誌を始め、各新聞社はきまって、今年の勝ち組み、負け組みの特集を組む。
今年の勝ち組みの多くは、ベンチャー企業が大半であり、オールドエコノミー企業郡は、一部を除き負け組みになっている。
偶然の一致かどうか解からないが、芸術の世界も経済の世界も新たなことに果敢にチャレンジするニューブリード(新しい世代)が、元気だ。
カオスとデフレの延長の2003年に向け、一旦のオールクリアボタンを押し、新たなブリード目線で「思いをかたちに、デザイン」してゆきたい。
第59回 「桧原村」
過日、東京の秘境といわれている桧原村にいった。
運良く年に一回の柏野木神社祭礼の日に出会い、村の皆さんと共に、伝統的な舞いを観た。
隣に居合わせた女性が、「あの壇上で舞っている男の子は、家の子で今年の代表で選ばれたんです!」と誇らしげに説明してくれた。
村では永年、年一回の祭礼に向け、子供も大人も伝統ある舞いの練習をし、特定の人の評価でなく参加者全員による互選によって、晴れの舞台の参加を得る慣習がある。
日頃見ることのない、神楽での優雅な演舞に、忘れかけていた子供の頃の思い出がよみがえり、その頃にタイムスリップしたような時間だった。
地方に育ったせいか、時々田舎恋しくなる。
幼い頃、近所の皆さんがよく家に集い、楽しく世間話をしている風土の中に育ったからかも知れない。
以前、ディズニーランドの仕事に携わっていた際、毎年“The Spirit of Tokyo Disneyland“という称号を与える制度を知る機会があった。
この賞は、年間パークに訪れるお客様(ゲスト)に対し、ディズニーランドスピリッツである「ハピネスを提供する」ことを一生懸命実践したキャスト(従業員)を称える賞だ。
その人選は、従業員達による互選に委ね、キャスト同士が、共に働く仲間で頑張っている人を称える「recognition 」評価・認定の実践をしている。
選ばれたキァストの胸には、シルバーピンの上にミッキーのロゴがつけられ、最高の名誉だ。
仲間たちから、称されて与えられる勲章の習慣は一つの文化となった。檜原村で見た舞に、時空を超えた偶然とは思えない共通のモチベーションスピリッツを感じた。
混沌の時代の今、人と組織の生かし合えるあり方に対して、あふれんばかりの情報や、さまざまな価値観が交錯し、憶測や悲観的観測が飛び交っている。
人々はいったい何を信じ、来るべき時代をどう読めばいいのか・・見定め、決断してゆくことが難しく、個人も企業も変革のスピードが速まってきた。
村で見た夜空は身近で、人間と宇宙がこれ以上近づいてはならない限界のようにさえ思えた。
先人達が大切にしてきた村の畑や神社を守る文化を継承している村人達の姿に、惑わされることなく生き抜いてきた「心の尊さ」があった。
そして、カオスの社会で生き抜くために忘れてはいけない「何か」を投げかけられた。