第68回 企業の栄枯盛衰、今や2年
「私は豆腐屋になりたい」とソフトバンクの孫さんがいっていた頃、多くの豆腐屋さんが日本に誕生していた。その意味は、時価総額での、会社の株価の総額が億ではなく、1兆、2兆と兆(丁)というアンビションだった。当事、ソフトバンクの株価は、19万8000円を付け、数兆円の時価総額ベンチャー企業として注目を浴び、アメリカのタイム誌の表紙に、自信に満ちた孫さんの笑顔が登場していた。しかし、昨今の株価は、1000円台まで下落し、今では3500円となっているものの当時の勢いは全く感じられなくなってしまった。 ソフトバンク社に関わらず、つい数年前には時代の寵児ともてはやされていた企業が、一転して転落してしまうケースが後を絶たない。最近の企業の栄枯盛衰周期が、極めて短くなってきている。企業の栄枯盛衰には、アンビジョン(Ambi-tion=大志)、サクセス(Success=成功)、アロガンス(Arrogance=傲慢)、ディクライン(Decline=衰退)と4つの段階があるといわれる。特に時代の先端を行く業界では、その変転が、著しく速い。例えば、NTTドコモなどは、類のないほどの急成長を遂げサクセスしたと思ったら、いつの間にかアロガンスになり、成長イメージが見えなくなり、株評価は更にダウンするのではないかと危惧する声もある。ここ5~6年の企業の動きを見ていくと、日本も世界市場の流れも、2周期ごとに企業の栄枯盛衰が2年サイクルになっていることが見えてくる。仕事柄、永年多くの創業経営者と出会い、企業の大志→成功→傲慢→衰退という4段階の転変を目の当たりにしてきた。
企業に傲慢体質をもたらすのは経営者自身よりも、得てして役員、マスコミ、内部組織などの取り巻きから、牙城が崩れ、崩壊してくることが多い。 早く衰退する企業には共通項があり、衰退を招くのは“覇者の騎り”からくる傲慢である。デフレ時代の今、成功者が少ないので、すこし誰かが成功すると新聞、雑誌、テレビ、などのマスコミが一斉に群がり、芸能人の如くスター化させ賞賛を浴びせる。それで経営者も幹部社員も自分を見失って傲慢になり、危機感が薄れ実力を錯覚し、なすべきことをしなくなり自爆してしまうのかも知れない。
事業で大切なことは、継続する力である。創業時の企業DNAを守り、顧客との接点に向かい、PLAN、DO、SEE、を愚直に繰り返していくしかない。そして、そういった中から、“成功の癖”を身につけることにある。全ての業界、企業によって勝ちつづけているその癖は異なっている。簡単に登頂した山は、簡単に降りられると同時に、誰でも短期間で登ってくる。一つの山を登ったら、その登り方の癖を身につけ、それを踏み台に、今の時代は、2年サイクルで足場を固め更に連鎖した山を登る感覚で進まないと癖は埋没してしまう。 いつの時代も、どの企業も信念を持ったリーダーの基で、邁進する一人ひとりの汗が、他社の追従を許さない業界ナンバーワンになる力となっている。
第67回 「勝ち組」は「価値創造人」
「1136万人」昨年なんと、年間に就職、離職、転職(アルバイト、パート含む)、をした人の総数だ。
うち542万人が、企業間を異動したと、厚生労働省から発表があった。
仕事人の10人に1名が、転職したことになる。信じがたい事実である。
「二極化」の時代といわれている。
転職でも「勝ち組」と「負け組」が、はっきり分かれ、転職によって物心ともに成功した人達は、「自分をプロデュースしてゆくにはどういうポジションをとってゆくのか」そして、「自分のリソースは○○で、市場価値は○○だと、そんな自分のステージを生かせる企業を、紹介して欲しい」と、当社に明快なオファーを、送ってくる人が多い。
企業間においても「勝ち組み」「負け組み」がはっきりし、勝ち残るのは一位、2位の上位群となり、変化に対応できない能力のない企業は淘汰される。まさに、サバイバル戦争に拍車がかかってきた。
成熟した業界では、価格の二極化が進み、「高い商品」と「安い商品」に分かれ、それぞれ売れているが、その中間価格帯のものは売れない。
安ければ何でも売れるというのではなく、安いなりの価値がなくてはならない。
その逆に、高くても価値さえ認めてくれれば、売れる商品に育っていく。
相変わらずルイ・ヴィトンやグッチ、シャネル、などの海外製のブランド品は右肩上がりで売れている。
その一方で、ユニクロの商品なども、安さのわりに品質がいい。
マスコミは業績ダウンといってはいるが、400億の経常利益を上げるほど売れている。
要は、高いものは高いなりに、安いものは安いなりに、価値を提供すれば売れる時代だ。
これまで価格は、原価に利益を上乗せして決められていたが、いまや、価値によって価格が決まっている。
たとえ原価が500円でも、消費者が300円の価値しかないとみなせば、それ以上の値段では売れない。
個人の年収においても、前年収や現在の生活水準原価から転職時に希望しても、市場価値、そして企業にどれだけの価値を提供できるかによってコミットされる時代となった。
企業経営でも、個人でも、肝心なのは、その価値をどうやって創造するかにある。
市場調査ではニーズは発見できても、価値ある商品、能力、スキルは生まれてこない。市場調査からは、過去以上のものは出てこない。
下駄しかない時代に、どんな下駄を履きたいかと調査したところで、桐や黒檀、という答えは返ってきても、エアーシューズという発想は出てこない。
あるいは馬車しかない時代に、車を考えつくはずもない。
もしそれを商品化できれば「こういう商品が欲しかった」と消費者は飛びつく。
これがウォンツであり、本当の意味で価値と言えるものだ。
価値を生み出すことが、企業の使命であり、価値を生み出せる人材を時代が求めている。
変化を見る魚の目(流れをみる目)をもって、その変化を読み取り形にする努力を愚直に継続することである。
「価値を生む人」・これからのワードだ。
第66回 平成維新の予兆
ゴールデンウィークに、明治維新の原動力になった長州藩の中心地、山口県の萩に行ってきた。
幕末の時を観てみたい思いと、人口5万にも満たない小さな田舎町で、倒幕を果たした高杉晋作、桂小五郎、伊藤博文、村田蔵六をはじめ、何故同じ時期に同じ地域であれだけの傑物が出現したのだろうか?
萩には、いまだに当時の歴史を感じる塀が街並に残っており、萩焼きの店が何処にいっても目に入り、街の人々は誇りを持って凛として暮らしている独特の風土を感じた。
時代を変革した発祥の地としての文化と誇りを持って生活している人々の姿は、古き「日本人」を観る思いがした。
当時、薩摩藩の西郷隆盛、桂小五郎、坂本竜馬が集い、薩長同盟を結ぶ場となった旅館が、まだ現存していた。
その旅館の女将に、「何故この地に当時、こんな傑物が生まれ育ったのか?」聴いてみると、「それは、毛利家の歴史背景と二人の人物がいた」と教えてくれた。
その一人は、1857年に私塾松下村塾の塾長として、高杉晋作、久坂玄瑞、吉田稔麿、伊藤博文、山県有朋ら約80人の門下生に、人間の生き様、思想、行動といった大志を打ち込み、勤皇の教育・啓蒙によって倒幕の大きな息吹を創った吉田松陰先生であると。
驚いたことに今でも毎朝、地元の明倫小学校では、吉田松陰の訓えを唱和している。その後、吉田松陰の思想は、京都大学の創立に繋がったのだという。
そして、もう一人は、「白石庄一郎」という赤間神宮の宮司。
この方は、高杉晋作に屋敷や活動費を支援し、これによって奇兵隊がうまれ、この活動が長州の大きな起爆となり原動力となって時代を動かした影の立役者とのこと。
今の時代でいう、エンジェルもしくは投資家にあたる存在と思える。
高杉晋作は、奇兵隊の存在は白石さんがいなければありえなかったとのことをよく語っていたという。
「理念を持った人」と「志ある人を応援したい人」との出逢いが、大きなメッセージを持つエネルギーとなり、大志を持った人が集い、国を変革した。
その後130年の時が流れ、変革世紀を迎えた今、日々の動きの中で歴史が繰り返される予兆を感じる。
第65回 リーダー福田実さん
桜が満開の4月14日ホテル新潟で、20年来親しくさせていただいていた福田組社長の福田実さんの葬儀があった。
福田さんは、新潟のゼネコンのトップカンパニーとして、4000億のグループのトップであり、経済界のリーダーだった。
成熟した業界で、事業変革にチャレンジし業績を伸ばし、最近ではトヨタ生産方式を取り入れ話題を呼んでいた。
福田さんは、100年の企業体質を、生産性の高い変革スピリッツによって第三期創業時代として会社を大きく創り変えた。
福田さんは理念を語り、ビィジョンを描きシンプルな目標を設定し、結果を公平に評価し、きちんと説明するので、皆が安心してついてきた。
そして、常に競争相手よりも早く新しい環境に組織を適応させてゆく変革者であった。
ITを活用し誰からもよく見える体制を創り、入院した病院からも亡くなる直前まで、自らメッセージを各位に送り問題に取り組んでいた。
幹部や社員のやった仕事を管理するだけの経営者が多い中で、数千億を超える企業経営者としては異彩だったかもしれない。
また、「トップは日々、顧客からも、取引相手からも常によく見える存在でありたい、だから社長就任にあたってパーティでなく直接こちらから挨拶して回りたい」と現場を歩き回った。
以前、亀戸の複合商業施設のサンストリートを紹介した際、「誰がどんな思想でこの施設を創ったのか」と熱心に尋ね、そのプロデューサーと面談を私に求め、共に会食したこともあった。
福田さんは、いつも少しはにかんだ笑顔で、率直に、相手の知性に敬意を払い正直に意思表示していた。
数年前、私が招待したミュージカルを観た後に論評してこられ、自分の真意をあいまいにごまかす表現や二枚舌は使わない人で、真意を伝える大切さを学んだ思いがする。
指導者には「情熱」が不可欠であり、毎日、毎時間、勝つために部下や仲間を駆り立て、「情熱」を愛することが大切なんだと、そして、人は皆、勝者になる為に働き、勝ち組に入りたいと思っている事を、教えて頂いた。
「勝とう、実行しよう、チームを組もう」「理念を持ち、ビジネスとは勝つことを目指した競争であり、実行するには速いスピードと効果的にこなせるだけの技量が必要である。
そして、組織として統一的に明快に前進しなければならない。」ということを、語り実際体で示してくれた。
私にとって、親しい間柄にも関わらず、常に緊張感を与える存在であり、自分のもっている上質の情報を伝えたくなる人であった。
惜しいリーダーがこの世を去ってしまった。
合掌
第64回 ターンアラウンド
「企業再生」が、時代のキーワードとなってきた。
組織を変革再生するには、最も重要な要素はリーダーである。
企業が深刻な経営危機に陥った際、「ターンアラウンド(再建請負人)」として、経営を立て直すプロ経営者に、最近注目が集まっている。
ナビスコ、IBMを復活させたルイス・ガースナー氏、日産のカルロス・ゴーン氏、国内では、日本電産の永守重信氏は、その道の第一人者といわれている。
過日、永守さんにお会いした際、22社の企業再建に剛腕を発揮した秘訣を尋ねると、「再建の成否、3年が目安」であるとの話から、これまでの企業買収し、再建してきた経験から「第一に、誰が再生に当たるか。
日本にも経営のプロはいるが、企業再生は別物。
強風下で飛行機を操縦するようなもの。
安全に着陸できる人はごく限られる。
並外れたエネルギーと能力が必要だ」「私は買収した会社の個人筆頭株主になり、失敗すればすべてを失う覚悟で再建に打ち込んでいる。
誇りや金銭的な動機だけではなく、再建への使命感を持てば成功する」また、「すでに集中治療室に入っていて、ひん死の状態では再生など無理。
売り上げ不振や新製品の欠如、海外進出の後れなどいくつも病状を抱えていてはどんな名医でも治療できない。
債務の削減や売り上げ増、黒字化など三年程度でメドがつく企業でなければやらない」「私は買収するかどうかを短時間で判断するが、目利きの最大のポイントは技術力。
陳腐化せず今後の事業に生きる技術を持っているかどうかを見極める。社員が怠けて働かないといった問題は一、二年で解決できるが、技術力を蓄積するには十年はかかる」「不振企業の社員は給料分も働いていない。
私は買収した企業の社員にハードワークを求め『赤字は悪だ』と徹底的に意識を変える。
給料分だけ働くのは過重労働ではない。
当初は抵抗もあるが、一、ニ年で損失を処理し業績が上向けば意識は必ず変わる。
反面、「集中治療室に入った企業は,つぶした方がいい。懸命にやっている企業の足を引っ張るからだ。今はデフレの上に過当競争。オーバーサプライ(供給過剰)が続けば健全な企業も国際競争力を失う。」
「再生にはスピードが問われる。企業は生鮮食品のようなもの。
得に今は腐り方が早い。
立て直すなら早いほどいい」・・と歯切れの良い迫力溢れる話を聞いた。
多くの日本の経営者は、組織の中で、上から引き立てられ社長になった人がほとんどである。
そうしたCEOは前任の決定を覆すと、永年仕えた主君を否定し、裏切ることになることから、大胆な企業変革が出来ないことが多い。
「伝統の承継」だけでは、会社が立ち行かなくなる。ターンアランド「再建のプロ経営者」が、注目されている。