70代になってからだけでも『ライド・オン』『ベストキッド:レジェンズ』『シャドウズ・エッジ』等々と、止まるところのない活躍ぶりのジャッキー・チェンだが、これら近作ではそのアクションもやや抑えめになりつつあるとはいえ働きづめのジャッキー、たまにはちょっと一休みといった風情の本作で演じるのはなんと本人自身、人気スターのジャッキー・チェンその人、まるで普段のジャッキーがそのままそこにいるかのような、なんとものんびりした味わいの作品だ。
生まれたての赤ちゃんパンダの里親に指名されたジャッキー、その赤ちゃんパンダを奪おうとするギャング団一味と、パンダの飼育員女子やジャッキーのマネージャーを巻き込んでの赤ちゃんパンダを守ろうとするその奮闘ぶりが本作の眼目である。なにしろここでのジャッキーはカンフー達人のジャッキーではなく、カンフーの達人を演じてきたジャッキーだから、まともに闘って太刀打ちできるはずもない。逃げ回りながらどうにか相手をしのいで、なんとかかんとかパンダを守ろうというアクションが本作の見どころだ。この映画のいいところは、そんな闘いぶりを見せながら、まったく緊迫感や緊張感のないところ。相手側のギャング団からしてどこか憎めない。誰一人人は死なない。どこまでものんびりした趣向に徹したところなのだ。
映画中盤、灯台に逃げ込んだジャッキーが飼育員女子との会話で映画に懸けるその思いを語る場面がある。『アクション!』という声を聞くと自分はカンフーの達人になれるのだという。そんなジャッキーの思いが胸に沁みる。のどかな映画の中のしみじみ沁みる名場面だ。そしてまた映画終盤ジャッキー危機一髪の場面でその『アクション!』が効いてくる。ほとんど『インディージョーンズ』におけるあの帽子!。映画だからこそできる嘘っぱちの面白さ。だから映画が楽しくなる。
このギャング団がどうしてパンダに拘ったのか。映画の最後にそのネタバラシがある。ジャッキーの優しさが映画を締めくくる。それは観てのお楽しみ。全編ジャッキー・チェンの人柄だけで見せるような映画だがそれがまた心地よい。名作・傑作・佳作、そんな言葉はおおよそ当てはまらない愛すべき映画だ。
2026.2