本作、実在の著名人を描いた伝記映画としてこれまで興収一位の『オッペンハイマー』を抜き、世界興行収入歴代1位に達したとの報があった。ミュージシャンに限ればフレディ・マーキュリー『ボヘミアン・ラプソディ』を越えたことになる。公開以来どこの劇場もほぼ満席が続き、この状況ではもう少し様子見かと観るのをためらっていたが、こうなってくるとそう構えてもいられない。そこで遅まきながら上映館へと赴いた次第。
本作最大の見どころは、本人の甥にあたるジャファー・ジャクソンによるマイケルのパフォーマンスの再現であろう。これはもう実に見事としか言いようがない素晴らしい出来である。マイケルの兄であるジャーメインの息子とのことだが、もうマイケル本人が憑依したとしか言いようのない完璧な歌とダンス。これを見るだけでも一見の価値がある。マイケルの兄ならジャクソンファイブの一員であろう。その息子なら同じ家系、この血縁のエンターティナーの才に感服するしかない。コンサートシーン以外の場で見せる愛嬌あふれる人柄も好感度高い。そのパフォーマンスには、単なるモノマネとしてだけで片付けられない完成度の高さがあり圧倒される。素質と努力の結晶だろう。
映画はマイケルの少年時代に始まり、ジャクソンファイブを経てソロ活動に至り、次々とヒットを重ねる充実期までの彼のステージを重ねてゆく。その間に兄弟との離別や父親との確執などが描かれるのだが、さほど深くは掘り下げられない。そのあたりにドラマとしての物足りなさを指摘する向きもあるが、本作の目指すものはそこではないだろう。重要なのはマイケルのパフォーマンスとその人となり。その白眉は1983年モータウンコンサートでのムーンムーウォークの初披露、そしてもう伝説とさえいえる『スリラー』MVの収録模様の再現であろう。どちらも実際に行われた場所で撮影したという念の入れようである。映画もここまでくればもう文句のつけようがない。
映画はここで終わるが、テロップに「マイケルの人生はまだ続く」と出る。後年児童虐待や薬物疑惑など有名税ともいえるスキャンダルも数あったが、そこにはほとんど触れない映画のあり方。本作では鼻の整形に少し触れる程度だが、映画も音楽も夢を売るものである限りそれも結構。大いに楽しませてくれる映画である。続編があるならその後の彼の人生をどう描くか、楽しみがまたひとつできたことも確かだ。
2026.7