受験生の皆さん、センター試験の問題にチャレンジした高校生の皆さん、お疲れ様でした! 

こちらのサイトでは、大学受験塾の国語講師・吉田裕子が個人的に作成した2020年センター試験漢文の現代語訳・書き下し文の速報版を公開しています(2020年センター「古文」の現代語訳・書き下しはこちらです)。

復習などにお役立てくださいませ。

(”最後のセンター試験は漢詩だった”などとtwitterの話題で見かけて気になった方もぜひ~)
 

2020年 大学入試センター試験国語(漢文)の書き下し文・現代語訳
 

【リード文】

次に挙げるのは、六朝時代の詩人謝霊運の五言詩である。名門貴族の出身でありながら、都で志を果たせなかった彼は、疲れた心身を癒すため故郷に帰り、自分が暮らす住居を建てた。これはその住居の様子を詠んだ詩である。


【本文】

樵隠倶在山……

【書き下し文】

 
樵隠倶に山に在るも 由来事は同じからず
同じからざるは一事に非ず 痾(やまひ)を養ふも亦た園中
園中 氛雑(ふんざつ)を屏(しりぞ)け 清曠遠風を招く
室を卜(ぼく)して北の阜(をか)に倚り 扉を啓きて南の江に面す
澗(たにがは)を激(せきと)めて井に汲むに代へ 槿(むくげ)を挿(う)ゑて墉(かき)に列(つら)なるに当つ
 
群木は既に戸に羅(つらな)り 衆山亦た窓に対す
靡迤(びい)として下田に趨き 迢遞として高峰を瞰(み)る
欲を寡なくして労を期せず 事に即して人の功罕(まれ)なり
唯だ蔣生の径(みち)を開き 永く求羊の蹤(あと)を懐(おも)ふ
賞心忘るべからず 妙善冀はくは能く同(とも)にせんことを
 

【現代語訳】

 
木こりと隠者はどちらも山にいるけれど、その理由は同じではない。
同じでないことは、一つのことではない。病んだ心身を癒すのもまた庭園のある住居である。
その住まいでは俗世のわずらわしさを遠ざけ、清らかで広々とした空間が、遠くから吹く風を受け入れる。
家をどこに建てたらいいか占って、北の丘に倚りかかるようにして建て、門扉を南の川に面して開く。
谷川を堰き止めて水を引き、井戸水を汲む代わりにし、槿を植えて壁で囲む代わりにする。

木々はもう戸口に連なり、山々も窓に相対している。
うねうねとつらなり続く下田に赴き、はるか遠くに連なる高峰を仰ぎ見る。
欲を抑え、手間をかけることを望まない。自然のことに合わせて人の手をかけすぎない。
ただ蒋生のように友人を招く道を開き、ずっと求仲・羊仲の故事を思い、友人の訪れを待っている。
美しい景色を愛でる心を忘れられない。この上ない幸福として願うことには、友と共に楽しむことができることを。
 

【解答・解説】

 
問1 ア⑤ イ③
アの他の選択肢は、たまたま「偶」、つぶさに「具」、すでに「既」「已」、そぞろに「漫」。
イ「すくなし」と読む字は「寡なし」「鮮なし」など。「がへんず」は「肯ず」と書く。
 
問2②
「非」は直後の名詞などに「に」(断定の助動詞「なり」連用形に当たる)を付けて、「~に非(あら)ず」と読む字である。
 
問3②
「扉を啓きて南の江に面す」(南の川のほうに扉)、「澗を激めて井に汲むに代へ」(谷川を井戸の代わりにする)から判断する。
 
問4①
押韻から判断すると(他の偶数句末がウと終わっている)、「門」「月」が外れる。上の句と対句になっている点もヒントにすべきで、「戸に羅なり」との構造・内容が似る。「窓に対す」で内容も通る。
 
問5⑤
作者は都での立身が叶わず、田園暮らしになった身であり、都の政治的なものからは遠のいただろうが、田畑の耕作からはるかに遠ざかったとは言い難い。
 
問6④
作者は都で、美しい風景を分かち合える友人もいたことだろうが、今や都から離れた田舎に暮らす身である。なかなか求仲・羊仲のように訪ねてくれる人もいないだろうが、それを待ち望んでいて、友を迎える道を開いたのである。
 
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