受験生の皆さん、東大の過去問にチャレンジしている皆さん、お疲れ様です!
こちらのサイトでは、大学受験塾の国語講師・吉田裕子が個人的に作成した2019年東大入試 古文の現代語訳の速報版を公開しています。復習などにお役立てくださいませ。
2019年東京大学 国語(古文)の現代語訳
【リード文】
次の文章は、闌更(らんこう)編『誹諧世説(はいかいせせつ)』の「蘭雪が妻、猫を愛する説」である。
【本文】
嵐雪が妻……
【現代語訳】
嵐雪の妻は、唐猫で見た目の良い猫を愛して、美しき布団を敷かせ、食べ物も特別な器に入れて、朝夕膝元から離さなかったが、「門人や友達などに(猫を)煩わしく思う人もいるだろうか」と、嵐雪はたびたび、
「獣を愛するにも節度がなくてはならない。人間のものをも上回っている敷き物・器・食べ物というのも、魚肉を避けなくてはならない日にも猫には生魚を食べさせるのなども、良くないことだ」
と呟いたが、妻は隠れてでもこれを改めなかった。
さて、ある日、妻が実家に出掛けたときに、自分の留守の間、猫が外へ出ないように、例の猫をつないで、いつもの布団の上に寝させて、魚など多く食べさせて、くれぐれも綱を解かないようお願いしておいて出かけて行った。嵐雪は、例の猫をどこへでもやってしまい、妻を騙して、猫を飼うのを止めようと思い、かねてから約束しておいたところがあったので、遠い所に、人を使って送ってやった。
妻は日が暮れて家に戻り、まず猫を探すが、姿が見当たらない。
「猫はどこへ行っていますか?」
と質問したところ、
「だから、お前のあとを追ったのだろうか、しきりに鳴いて、綱を切らんばかりに騒ぎ、毛も抜けて、首も締まりそうな様子になったので、あまりに苦しいだろうと思い、綱をはずして、魚などやったものの、食べ物も食べないで、ただうろうろと探す様子で、門口・背戸口・二階などを行ったり来たりしたが、その辺りから外へ出たのでしょうか、近所を探すけれど、今に至るまで姿が見えない」
と答える。妻は泣き叫んで、猫が行くはずもないところまで探したけれど、猫は戻らずして、三日四日過ぎたので、妻は袂を絞るほどに泣きながら、
「猫の妻 どんな人が奪って行くのか」 妻
こう言って具合が悪くなりましたので、妻が友人とする隣家の妻――この人も猫好きの人であったが、嵐雪が企んで、猫をよそにやってしまったことを聞き出し、(嵐雪に露呈しないよう)こっそりと妻に告げて、
「猫は無事でいるようです。決して心を痛めなさらないよう。私が知らせたとは示さずに、何町の何さんのところへ取り返しに使者を送りなさってください」
と語ったところ、妻は、
「このようなことがあってよいものか。私の夫は、私が猫を愛することを憎んでいらっしゃいましたが、それでは、私を騙しての悪行か」
と嵐雪に対し、あれこれを恨み突っかかった。嵐雪も、たくらみが露呈してしまった以上はどうしようもなく、
「確かにお前を騙して、猫を他へ遣ったのである。いつも言う通り、あまりにも異常な愛しぶりである。大変良くないことである。私が言うとおりにしなかったら、取り返すつもりはない」
と、あれこれ争ったところ、隣家や門人などが色々と言って、妻に詫びさせて、嵐雪の機嫌もやわらげ、猫も取り返し、何事もなくなったところ、
睦月の始めの夫婦喧嘩を人々に笑われて
「(妻が猫の戻って)喜ぶ姿を見なさいよ 初子の玉帚」 嵐雪
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◆読売新聞 2019年度大学入試問題と解答例 東京大学
https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/tokyo/1302870_5408.html
◆誹諧世説. 巻之1-5 / 闌更 [編] (古典籍総合データベース)
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/bunko31/bunko31_a0605/index.html
◆東大古文の現代語訳は毎年作成しております(2018年古文・2017年古文・2016年古文・2015年古文)。
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