受験生の皆さん、センター試験の問題にチャレンジした高校生の皆さん、お疲れ様でした!
こちらのサイトでは、大学受験塾の国語講師・吉田裕子が個人的に作成した2020年センター試験古文の現代語訳、解答・解説の速報版を公開しています(2020年センター「漢文」の現代語訳・書き下し文・解答速報もあります)。
復習などにお役立てくださいませ。
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2020年 大学入試センター試験国語(古文)の現代語訳
【リード文】
次の文章は『小夜衣』の一節である。寂しい山里に祖母の尼上と暮らす姫君の噂を耳にした宮は、そこに通う宰相という女房に、姫君との仲を取りもってほしいと訴えていた。本文は、偶然その山里を通りかかった宮が、ある庵に目をとめた場面から始まる。
【本文】
「ここはいづくぞ」と、御供の人々に問ひ給へば……
【現代語訳】
≪ 第1段落 ≫
「ここはどこか」とお供の人たちに質問なさると、(お供の人が)「雲林院と申すところでございます」と申し上げるので、(宮の)お耳に残って、「宰相が通う先であろうか」と思い、「この頃は(宰相は)ここにいると聞いたが、(宰相の通う姫君のお住まいは)どこであろうか」と知りたくお思いになって、牛車をとめて外を眺めなさっていると、どこに咲いても同じ卯の花、とはいいながらも、卯の花の垣根が続く様子には、卯の花の名所の玉川を見るような心地がして、ほととぎすの初音を聞く野に心をすり減らすこともない地であろうかと、自然と興味深く思われなさって、夕暮れの時なので、そっと葦垣の隙間から、格子などが見えるのをのぞきなさると、こちら側は仏前と見えて、閼伽棚がささやかにあり、妻戸や格子なども開けやってあり、樒の花が青々とした状態で散っていて、花をお供えして(供えられた枝が)カラカラと音を立てている様子(を見て)も、この家では仏道のおつとめをすることで、現世でも所在ないことはなく、(きちんとおつとめをしているので)来世に関してはさらに大変頼もしいことであるよ。仏門の方面は気にかかることなので、(宮は)うらやましくご覧になっている。
やるせない世の中で、こうして(仏事をつとめて)でも暮らしたく、御目が留まるように見えなさっている中、子供達の姿もたくさん見える中に、例の宰相の所にいる子供もいるので、「(例の姫君の家は)ここであろうか」とお思いになるので、お供である兵衛督という人を呼びなさって、(その人を取次役として)「宰相の君はここにいますでしょうか」と、対面するつもりであることを申し上げなさった。
(宰相の君は)驚いて、「どうしましょうか。宮が、ここまで探しにお越しになったのです。恐れ多く思います」といって、急いで応対に出た。
仏様の傍らにある南面の部屋に御敷物などを整えて、(その部屋に宮を)入れ申し上げる。
≪ 第二段落 ≫
(宮は)ほほ笑みなさって、
「今回探し申し上げるところ、(宰相さんあなたが)この辺りにいらっしゃるのを聞いて、こんな所まで入ってきています私の気持ち(=宰相を通じて姫君と縁を持ちたい想い)をお分かりになってください」
などとおっしゃるので、(宰相は)
「本当に、恐れ多くもここまで探しにいらっしゃるあなたのお気持ちには、いたたまれなく感じます。老いた尼上が、間もなく亡くなりそうな病を抱えておりますので、(最期を)看取りましょうということで、(こうした山里に)籠っておりまして」
などと申し上げると、
「(尼上が)そのようにいらっしゃるようなことは、いたわしいことでございます。尼上のご様子もお聞きしようと思って、わざわざやって参りましたのに」
などとおっしゃるので、(宰相は)中に入って、
「このような(宮の)ご発言があります」
と(尼上に)申し上げなさると、
「そのような人間(=尼上のこと)がいると(宮様の)お耳に入って、老いた人生の終わりに、このような(宮に見舞ってもらえるという)すばらしいお恵みをお受けすることは、長生きします命のことも今は嬉しく、この現世での名誉と思います。媒介者を挟まずにお返事を申し上げるべきなのですが、このように病気で弱った状況で」
などと、息も絶え絶え申し上げているのも、とても望ましいと(宮は)お聞きになっている。
≪ 第三段落 ≫
(庵にいる)人々が覗いて拝見すると、月も華やかに出た夕月夜に、(宮の)振る舞いなさっている様子は、似るもののないほど素晴らしい。
山の端より月光が輝き出たような(宮の)ご様子は、(見るのが追い付かないほど)非常に立派で、艶も色も溢れんばかりのお着物に、直衣がちょっと重なっている色合いも、どこで加わっている清らかな美しさであろうか、この世の人間が染め出したようにも見えず、普通の色とは見えない様子で、模様も大変立派である。
(山里暮らしで)それほどでもない男性さえ見慣れていない心地であるのに、(このような素晴らしい人を見て)「世の中にはこのような人もいらっしゃるのだなぁ」と感激し、興奮し合っている。
本当に、(この宮を)姫君に並べたく、(それを想像しながら)頬が緩んでいる。
宮は、この場所の様子などをご覧になると、他のところとは様子が違うと思われる。人が少なく、しんみりとして、このような(さびしい)所に、悩みがちであるような人(=病の重篤な母と暮らす姫君)が住んでいるような心細さなどを、自然としみじみと実感しなさって、むやみに物悲しく、(涙で)袖も濡らしなさって、宰相にも、「必ず、甲斐があるように(姫君との仲を)取り成し申し上げなさってくれ」などと相談をして帰りなさるのを、(庵の)人々も名残多く感じる。
「ここはどこか」とお供の人たちに質問なさると、(お供の人が)「雲林院と申すところでございます」と申し上げるので、(宮の)お耳に残って、「宰相が通う先であろうか」と思い、「この頃は(宰相は)ここにいると聞いたが、(宰相の通う姫君のお住まいは)どこであろうか」と知りたくお思いになって、牛車をとめて外を眺めなさっていると、どこに咲いても同じ卯の花、とはいいながらも、卯の花の垣根が続く様子には、卯の花の名所の玉川を見るような心地がして、ほととぎすの初音を聞く野に心をすり減らすこともない地であろうかと、自然と興味深く思われなさって、夕暮れの時なので、そっと葦垣の隙間から、格子などが見えるのをのぞきなさると、こちら側は仏前と見えて、閼伽棚がささやかにあり、妻戸や格子なども開けやってあり、樒の花が青々とした状態で散っていて、花をお供えして(供えられた枝が)カラカラと音を立てている様子(を見て)も、この家では仏道のおつとめをすることで、現世でも所在ないことはなく、(きちんとおつとめをしているので)来世に関してはさらに大変頼もしいことであるよ。仏門の方面は気にかかることなので、(宮は)うらやましくご覧になっている。
やるせない世の中で、こうして(仏事をつとめて)でも暮らしたく、御目が留まるように見えなさっている中、子供達の姿もたくさん見える中に、例の宰相の所にいる子供もいるので、「(例の姫君の家は)ここであろうか」とお思いになるので、お供である兵衛督という人を呼びなさって、(その人を取次役として)「宰相の君はここにいますでしょうか」と、対面するつもりであることを申し上げなさった。
(宰相の君は)驚いて、「どうしましょうか。宮が、ここまで探しにお越しになったのです。恐れ多く思います」といって、急いで応対に出た。
仏様の傍らにある南面の部屋に御敷物などを整えて、(その部屋に宮を)入れ申し上げる。
≪ 第二段落 ≫
(宮は)ほほ笑みなさって、
「今回探し申し上げるところ、(宰相さんあなたが)この辺りにいらっしゃるのを聞いて、こんな所まで入ってきています私の気持ち(=宰相を通じて姫君と縁を持ちたい想い)をお分かりになってください」
などとおっしゃるので、(宰相は)
「本当に、恐れ多くもここまで探しにいらっしゃるあなたのお気持ちには、いたたまれなく感じます。老いた尼上が、間もなく亡くなりそうな病を抱えておりますので、(最期を)看取りましょうということで、(こうした山里に)籠っておりまして」
などと申し上げると、
「(尼上が)そのようにいらっしゃるようなことは、いたわしいことでございます。尼上のご様子もお聞きしようと思って、わざわざやって参りましたのに」
などとおっしゃるので、(宰相は)中に入って、
「このような(宮の)ご発言があります」
と(尼上に)申し上げなさると、
「そのような人間(=尼上のこと)がいると(宮様の)お耳に入って、老いた人生の終わりに、このような(宮に見舞ってもらえるという)すばらしいお恵みをお受けすることは、長生きします命のことも今は嬉しく、この現世での名誉と思います。媒介者を挟まずにお返事を申し上げるべきなのですが、このように病気で弱った状況で」
などと、息も絶え絶え申し上げているのも、とても望ましいと(宮は)お聞きになっている。
≪ 第三段落 ≫
(庵にいる)人々が覗いて拝見すると、月も華やかに出た夕月夜に、(宮の)振る舞いなさっている様子は、似るもののないほど素晴らしい。
山の端より月光が輝き出たような(宮の)ご様子は、(見るのが追い付かないほど)非常に立派で、艶も色も溢れんばかりのお着物に、直衣がちょっと重なっている色合いも、どこで加わっている清らかな美しさであろうか、この世の人間が染め出したようにも見えず、普通の色とは見えない様子で、模様も大変立派である。
(山里暮らしで)それほどでもない男性さえ見慣れていない心地であるのに、(このような素晴らしい人を見て)「世の中にはこのような人もいらっしゃるのだなぁ」と感激し、興奮し合っている。
本当に、(この宮を)姫君に並べたく、(それを想像しながら)頬が緩んでいる。
宮は、この場所の様子などをご覧になると、他のところとは様子が違うと思われる。人が少なく、しんみりとして、このような(さびしい)所に、悩みがちであるような人(=病の重篤な母と暮らす姫君)が住んでいるような心細さなどを、自然としみじみと実感しなさって、むやみに物悲しく、(涙で)袖も濡らしなさって、宰相にも、「必ず、甲斐があるように(姫君との仲を)取り成し申し上げなさってくれ」などと相談をして帰りなさるのを、(庵の)人々も名残多く感じる。
【解答・解説】
問1 ア③ イ② ウ④
アは「思し召し」が尊敬語なので、②④は×とすぐ分かる。あとは「ゆかし」の意味から、正解は③。
イ「やをら」の語義は「そっと。静かに。ゆっくり」。
ウは文法面に注目すると、「重なる」ラ四已然形+完了・存続「り」連体形+名詞「あはひ」である。ナ下二「重ぬ」ではないので、①②⑤は外す。後ろに「染め出したる」などとつながることを考えると、「瞬間」よりは「色合い」であろう。「あはい」には「組み合わせ。つりあい。色の調和」という意味もある。
問2①
aは「宮を」部屋に入れ申し上げる。bは姫君たちとも取れるが、選択肢上、宰相を選ぶ。cは丁寧語で、話し相手への敬意なので、「宮」に対する敬意。そうすると、自動的にdは「老い人」になる。文脈上も、後ろで答えているのが、息も絶え絶えな病人の尼上であることから確認できる。
問3③
本文の「この世にてもつれづれならず、後の世はまたいと頼もしきぞかし」というところが根拠。「うらやましく」の思いを理解するには、後ろの文脈の「あぢきなき世に、かくても住ままほしく」という厭世の思いも参考になる。
問4⑤
単に「申すべく」とだけ言っていることを考えると、例えば、③のような「受け取る」、④のような「教える」の意味までは考えにくい。尼君の発言では直接的に姫君の話は上がっていないため、①②は外す。
問5②
「めでたし」「めづらかなり」など宮のことを強く褒めている文脈から考える。「並べまほしく」から「結婚したら」を導く。
問6⑤
①姫君自体を見たわけではない。②兵衛督は宮のお供である。宮が呼んで、取次をさせた。また、直接二人と対面はしていない。③尼上亡き後のことは特に出てきていない。④選択肢後半が言い過ぎ。本文前半で仏道に興味はあるとされているが、最終段落では単に気の毒がっているだけ。
アは「思し召し」が尊敬語なので、②④は×とすぐ分かる。あとは「ゆかし」の意味から、正解は③。
イ「やをら」の語義は「そっと。静かに。ゆっくり」。
ウは文法面に注目すると、「重なる」ラ四已然形+完了・存続「り」連体形+名詞「あはひ」である。ナ下二「重ぬ」ではないので、①②⑤は外す。後ろに「染め出したる」などとつながることを考えると、「瞬間」よりは「色合い」であろう。「あはい」には「組み合わせ。つりあい。色の調和」という意味もある。
問2①
aは「宮を」部屋に入れ申し上げる。bは姫君たちとも取れるが、選択肢上、宰相を選ぶ。cは丁寧語で、話し相手への敬意なので、「宮」に対する敬意。そうすると、自動的にdは「老い人」になる。文脈上も、後ろで答えているのが、息も絶え絶えな病人の尼上であることから確認できる。
問3③
本文の「この世にてもつれづれならず、後の世はまたいと頼もしきぞかし」というところが根拠。「うらやましく」の思いを理解するには、後ろの文脈の「あぢきなき世に、かくても住ままほしく」という厭世の思いも参考になる。
問4⑤
単に「申すべく」とだけ言っていることを考えると、例えば、③のような「受け取る」、④のような「教える」の意味までは考えにくい。尼君の発言では直接的に姫君の話は上がっていないため、①②は外す。
問5②
「めでたし」「めづらかなり」など宮のことを強く褒めている文脈から考える。「並べまほしく」から「結婚したら」を導く。
問6⑤
①姫君自体を見たわけではない。②兵衛督は宮のお供である。宮が呼んで、取次をさせた。また、直接二人と対面はしていない。③尼上亡き後のことは特に出てきていない。④選択肢後半が言い過ぎ。本文前半で仏道に興味はあるとされているが、最終段落では単に気の毒がっているだけ。
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