Thu 190418 浪人生諸君!!その2/ロンドンブリッジ(冬ロンドン再訪記8)3828回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 190418 浪人生諸君!!その2/ロンドンブリッジ(冬ロンドン再訪記8)3828回

 昨日ふと気がついて、4月中旬ですでに焦りに焦っている浪人生諸君のことを思い、もうずいぶん前に書いた浪人生向けの記事を探して、リンクを貼りつけておいた。2009年4月の記事だから、思えばすでに10年も前のものである。

 

 さすがに10年が経過すれば、予備校事情も大きく変化しただろう。浪人生向けの「Pretty塾」「どうすんだい?」だって、まさかさすがに今もなお「4月中旬すぎに開講します」などという馬鹿げたことは続けていないだろうと信じたい。

 

 センター試験が1月中旬だとすれば、4月下旬はもう「残り9ヶ月」を切っている。残り9ヶ月とは、要するに残り40週間であって、もうセンター試験まで日曜日は40回、土曜日も40回。高校生でもなく大学生でもない1年を不安の中で過ごす彼ら彼女らは不安でならないはずだ。

   (2018年12月26日、ロンドンブリッジ近景 1)

 

 今井君の持論としては、「だからこそ浪人生の授業は4月上旬に始めるべきだ」。どういう事情かわからないが、手持ち無沙汰の浪人生に何のスケジュールも提示しないまま4月20日近くまで放置するのは、ほとんど精神的拷問に近いんじゃないか。

 

 ま、予備校サイドの言いぶんはわかるのだ。「慌てても何のプラスもない」「落ち着いてそれぞれに基礎固め」「各自で弱点をチェック」。なるほど&なるほど、わかる&わかる。しかしそれは「言いぶん」じゃなくて「言いわけ」だ。

 

 実態は「放置」「放任」。各自の基礎固めだというなら、教務サイドがギュッと付き添ってあげなきゃいけない。むかしむかし今井君が浪人生だったころとは違う。今はそういう時代なのだ。

 

 ワタクシが東京大学の受験に失敗して浪人を決めたのは、まだ田中角栄や福田赳夫や大平正芳の時代。昭和にどっぷり、平成の影さえ見えない大昔のことだ。山口百恵だの西城秀樹だのキャンディーズだのが、「ブラウン管」などという恐るべき前世紀の遺物の中で元気に走り回っていた。

   (2018年12月26日、ロンドンブリッジ近景 2)

 

 その時代の浪人生なら、放置&放任されても「各自の基礎確認」「自分なりの基礎固め」をキチンとやりながら予備校の授業開講を「満を持して」待ち受けたのである。数学なら「解法のテクニック」「赤チャート」でみっちり、そういう春を過ごしていた。

 

 ただしこの場合、もちろん今井君は除外する。若き今井君は、秋田の田舎から東京に出てきた感激で完全にハメを外し、すでに連日の映画館通いを始めていた。

 

 しかし諸君、当時の「どうすんだい?」の生徒諸君は、やっぱり今とは次元が違ったのだ。何しろ「浪人したからには、第1志望が東京大学文科一類、第2志望は東京医科歯科大学の医学科」という時代である。

 

 今井君が籍を置いた駿台予備校・午前部文科1類の諸君は、4月20日の段階でもうとっくに基礎固めは終わっていた。「午前部」とは、朝8時20分に授業開始、1210分には主要な授業が終了して、午後からは選択科目の授業が組み込まれていた最優秀クラスである。

 

 いやはや、「朝820分に授業開始」とは何とも暑苦しいが、なにしろ「午前部」「文科1類」と、まるで本物の東大生みたいなネーミングのクラスに通えるんだ。暑苦しかろうが何だろうが、受講生の心の張り切りようは、21世紀の浪人生とはホントにホントに次元が違ったのである。

   (2018年12月26日、ロンドンブリッジ近景 3)

 

 講師陣も、当時の迫力はたいへんなもの。駿台の英語なら鈴木長十・伊藤和夫・奥井潔がずらりと並び、奥井師なんか東洋大学文学部長との兼任で、「どうすんだい?」に週3回も4回もいらっしゃっていた。

 

 しかも、チマチマした英語の授業なんか全くなさらないのである。50分授業のうち、教材にちなんだ話は20分程度。残り30分はひたすら哲学談義であって、カントにヘーゲル、ウェーバーにマルクス、いやはや21世紀のマジメな受験生があの教室に紛れ込んだら、間違いなく強烈な不満を表明するはずだ。

 

 しかし当時の生徒たちは、そういう授業を大喝采で歓迎したのである。英語の話しかしない伊藤和夫師の人気は陰りがち。英語のコマゴマしたことはとっくに分かっている、それより哲学や文学や芸術論を語ってほしい。当時の浪人生(=われわれ)は、ひたすらそれを求めていた。

  (ロンドンブリッジの真下。気軽なパブ、The Vault)

 

 そういう時代は、1990年代の中盤まで続いたのである。1990年代初頭、河合塾には古藤晃と芦川進一がいて、授業の進度より哲学&文学の雑談を中心に置いた。駿台もワタクシが生徒として体験したままだったが、関西地区には表三郎(おもて・さぶろう)どんが存在し、授業はマルクス一色に染まっていた。

 

 その中で唯一、代々木ゼミナールは違った。メインに鬼塚幹彦と青木義巳と潮田五郎がいて、「いかにも英語の授業」という本来あるべき授業世界を展開。哲学やら文学やらは置いといて、「訳し方のコツ」「穴埋め問題の鉄則」「代々木ゼミ方式」を講義。それが現在のスーパー縮小路線を招いた。

(ロンドンブリッッジの真下、パブ「The Vault」でビアを満喫する)

 

 いやはやこうして今井君は、昭和 → 平成の予備校物語を自在に語れる長老となったが、1990年代中盤からは、自らが語るストーリーの主要人物として君臨することになったのである。

 

 21世紀にはいると、この予備校戦国絵巻の登場人物たちが一気に矮小化していった。もはや哲学も文学も芸術も語らない。ひたすら英語学習一辺倒であって、英語の書き方&読み方やらトリビアやら「問題の解き方」ばかり、もう哲学や文学の入り込む余地はなくなった。

(ロンドンブリッジの真下の本屋さんで、なでしこはまだ大活躍中だった)

 

 その片棒を担いだのが、何を隠そうこのサトイモ男爵である。もちろん激しく抵抗はしたのだ。訳し方だの解き方だの速読法だの以外に、若者諸君にとって遥かに大切なことがあるだろう。そう語りかけはした。ゴーゴリやゾラやフロベールを熱く語ってみることもあった。

 

 しかし21世紀に入る頃から、その種の話はあまり受け入れられなくなった。英語の講師は英語の読み方と解き方を語るべきであって、それ以外の話は全て無駄話ないし雑談と判断される。

 

「雑談」と判断されれば、それは要するに人気取りの聞くに耐えない時間つぶしであって、もしそこにアンケート用紙があれば「極めて不満」にチェックマークを入れるべき対象になっちゃった。

         (こんなパブもあり...)

 

 こうして、現在の浪人生予備校があるわけである。来る日も来る日も「5文型がわかれば英語がわかる」「テキストさえやっていれば大丈夫」「オレについてこい」という日々だ。もしも自習室でテキスト以外にダンテの「神曲」だのゴーゴリ「死せる魂」だの読んでいれば、かつての今井君よろしく落伍者・脱落者の刻印を押される。

 

 だから諸君、今井君は今後の塾&予備校がどうなるか、心配で心配でならないのである。マスメディアも「4技能」一色。「文科省の学力考査でスピーキングが課されました」「採点は業者が行います」。うぉ、うぉうぉうぉ、そんなチャラチャラした世界で大丈夫なのかい?

          (こんなパブもある)

 

 そういう事情を踏まえて、超高速で進んでいる今井の特設単科5講座についても、うーん、ついつい「雑談」の部分が控えめになっちゃう。どうせ「無駄話」として土俵の外にポイされるなら、最初から控えめにしといたほうがいいじゃないか。

 

 超高速で進行中のリニューアル収録は、「基礎力強化教室」と名付けた「新D組」の第13講までを終了。今週末には「D組」の15講目を完了して、来週には伝説の「C組・特別公開授業」の収録を終える。

 

 そのとき今井君は、どこまで熱烈なトークに踏み込んでいいのだろう。かつての奥井潔師みたいに、授業時間の2/3を教材に注ぎ込んでからなら、哲学&文学の世界に入り込んでいいのか。ワタクシはなかなか結論に至らない。

     (パブ「THE WHITE SWAN」で夕食)

 

 一昨日だったか、ちょっと冒険してトーマス・マンの話をしてみた。ノーベル文学賞の対象になった「ブッデンブローグ家の人々」や「魔の山」よりも、今井は「ある詐欺師の告白」が圧倒的に面白いと思う。そういう話である。

 

 しかしおそらくそんなのは、「メンドいぜ」「カンケーねぐね?」という気だるい感想のもとに、この世界の果てに「ポイ!!」、無慈悲にポイ捨てされるのがオチなのかもしれない。

 

 だから今井ブログなんかは、そんな哲学&文学談義で時間を無駄にするより、クリスマス真っただ中の雑踏のロンドンの休日のことを書いていた方がよさそうだ。

 

 1226日、クリスマス翌日の「ボクシング・デイ」は、クリスマス当日よりもギュッとホンキでお休みを取る人が多い。バスも地下鉄もほぼカンペキにお休みの1日、ワタクシはテムズ川沿いのウォーキングを試みた、ビッグベンからロンドン塔を経て、ロンドンブリッジを横断してこようという計画である。

(THE WHITE SWANのターキー。うーん、写真ではあまり旨そうにみえない)

 

 というわけで今日の写真は全てロンドンブリッジ横断に関わるもの。10年前にはこの橋のたもとでひどく難渋、バスで都心部に帰るのにも果てしなく歩き続けたものだったが、さすがに今井ももう旅のベテランだ、あっという間に目当てのバスを見つけて、マリオットホテルに帰着したのだった。

 

 なお諸君、一昨日というか昨日というか、「浪人生諸君!!」が余りにも人気が高い。ここでもう一度、クリックしやすいように今日の記事にも同じリンクを貼っておこうと思う。浪人生諸君のさらなる熟読を待っている。

 

Sun090419 浪人生の授業がいよいよ開始「高校の延長線上」が心配「授業を切っちゃえ」の話

Tue 090421 浪人を決めたヒトビトの3月と4月 予備校の授業にもう失望したヒトへ

Wed 090422 「オレについてくれば大丈夫」「テキストさえやっていれば大丈夫」について

Thu 090423 再び「テキストだけやっていれば大丈夫だ」について 0.8の累乗の恐ろしさ

Fri 090424 若手情熱派講師の予備校ライフと奇妙な授業 中堅不人気講師の予備校ライフ

Sat 090425 「もう連休に入るのに、授業は全然進んでくれない、ムカつく」人への処方箋

Sun 090426 失望した受験生への処方箋1 得意科目は現状維持で 苦手科目を肉食獣的に

 

 1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 9/18

2E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 10/18

3E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 11/18

4E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 12/18

5E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 13/18

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