必須:R4技術士予想問題の解答例[Q15 気候変動への対応] | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

Q15【必須】 地球環境 1800字

気候変動への取組として、省エネルギー、再生可能エネルギー、省資源を推進するとともに、風水害や海面上昇による施設被害を最小限に抑制する必要がある。このことを踏まえ①上下水道における技術的課題とその観点を複数抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ,それに対する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策、④業務遂行において必要な要件を技術者倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

 

 

【解答例】

1 上下水道における気候変動に関する課題

上下水道は、気候変動に対応するため、以下の課題に取り組む必要がある。

(1)省エネルギー対策の推進

 上下水道事業は施設型産業であり、水の処理や移送に際して、大量のエネルギーを使用する。このため、地球温暖化対策の観点から、エネルギー利用の効率化に向けた対策の推進が課題になっている。

(2)再生可能エネルギーの主力電源化

脱炭酸社会の実現に向け、再生可能エネルギーの活用による二酸化炭素の排出の抑制が求められている。上下水道事業は、その事業特性を活かし、下水汚泥に潜在するバイオマス、水力、太陽光等を利用し、発電を実施することが課題になっている。

(3)省資源の推進

 浄水場や下水処理場は、薬品を使用して水処理を行い、汚泥等の廃棄物を排出している。また、上下水道施設を整備するためには、大量の資材とエネルギーを消費することになる。このため、資源のリデュース、リユース、リサイクルを行うとともに、施設の長寿命化を図ることが課題になっている。

(4)風水害と海面上昇への対策

地球温暖化が進むことにより、海水面が上昇することが懸念されている。また、集中豪雨の頻発により、甚大な被害が発生している一方で、少雨に伴う渇水が毎年のように発生する地域が存在する。このため、上下水道事業において、高潮対策、浸水対策、渇水対策に取り組むことが課題になっている。

 

2 最重要課題に関する解決策

上述の課題のうち、省エネルギーはコスト縮減にも繋がることから、これを最重要課題と位置づけ、その解決策を以下に示す。

(1)水道における省エネルギー対策

浄水場において、撹拌装置の高効率化、迂流式の採用等を行う。また、複数の浄水場を有している場合、エネルギー消費を最小化できるよう、浄水場間の水運用の効率化を図り、更新にあわせた施設の統廃合を実施する。

排水処理施設において、汚泥水の濃縮工程における薬品の注入、ろ過濃縮槽の設置を行い、脱水工程における脱水機の高効率化を行う。

水道管路において、漏水がエネルギー浪費に繋がることから、定期的に漏水調査を行い、補修・更新を行う。管網のブロック化を図り、直結式給水の範囲を拡大する。

(2)下水道における省エネルギー対策

下水処理場において、最初沈殿池の池数制御、返送汚泥率の設定の最適化を行う。さらに、曝気風量の最適化を図り、微細気泡散気装置、インレットベーンの導入等による高効率化を図る。

汚泥処理において、焼却炉の待機運転時間の削減、断熱の強化等を実施する。

また、上流に下水処理場、その下流に水道の取水場が存在する場合、取・排水施設の再編を行うことにより、水処理に係る消費エネルギーを軽減する。

(3)上下水道共通の対策

ポンプ設備において、高効率モーターの採用、インバータ制御や台数制御による流量調整等を行う。また、建築物の空調設備の高効率化、LED照明設備の採用を行った上で、太陽光発電の導入等を実施し、ZEBを整備する。

 

3 解決策の効果と懸念事項

前述の解決策によりエネルギー使用の合理化が可能になり、地球温暖化防止とコスト縮減を実現できる。

ただし、これを実施するには、膨大な費用が必要である。

このため、将来的な財政収支と必要な事業費を把握し、解決策の優先順位を考慮して、長期的な事業計画を策定する。その上で、これをPDCAサイクルにより継続的に改善し、実効性を高める必要がある。復帰

 

4 業務遂行において必要な要件

分析、評価、計画、設計、施工、維持管理等、業務遂行の全段階において、公衆の安全、健康及び福利を最優先にする必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、持続可能性を勘案して業務を進める必要がある。

 

【参考】浸水災害対策について詳述する場合

◎下水道の洪水浸水対策

管渠の増設、増径、雨水ポンプの設置、増強等により雨水排除機能を強化する。放流先の河川において雨水流出抑制施設の整備、河川改修工事を促進する。雨水貯留管、雨水貯留施設、校庭や公園への流域貯留施設等を整備し、雨水貯留機能を強化する。雨水浸透桝、浸透側溝等を整備し、雨水浸透機能を強化する。

豪雨時も下水道施設が正常に機能することにより、浸水被害の拡大を抑制できる。このため洪水浸水想定に基づき、汚水水処理施設やポンプ場に防水壁、防水扉等を設置し、更新時は建築物のかさ上げを行う。さらに汚水処理施設のネットワーク化を進める。

◎水道の洪水浸水対策

ダムの水利権を有する水道事業体等は、ダムの洪水調整機能を強化するため治水協定を締結し、豪雨が予想される際、ダムの利水容量分を事前放流して浸水被害を回避する。

水道の安定供給のため、洪水被害想定に基づき取水場や浄水場に防水壁、防水扉等を設置する。また、更新に併せて建築物のかさ上げや高台移設を行い、施設能力に余力のある安全な施設に統廃合を行う。相互連絡管の整備、配水本管のループ化等によりバックアップ体制を強化する。

◎上下水道共通のソフト面の対策

流域の気象、降雨量、河川水位等の情報共有化等、水循環に関する取組を流域全体が協力して実施する。浸水ハザードマップの作成・公表・活用、BCPの策定、マニュアル整備、防災訓練を実施し、洪水発生時に速やかに対応できる体制を整える。

 

【出題者から一言】

気候変動への対応は、今年の上下水道部門の必須科目で、最も出題される可能性の高いテーマです。

なぜらな、R4年4月に「地球温暖化対策推進法」が改正されたからです。

改正内容としては、パリ協定を踏まえたもので、2050年までに脱炭素社会を実現すること等の規定を追加したものです。

これ自体がクローズアップされた場合、再生可能エネルギー、省エネルギー、省資源といった対策が3つの観点になります。

ただ、SDGsがクローズアップされていますし、脱炭素社会を実現するため取組だけではなく、異常気象も含めた気候変動への対応という観点で勉強した方が良いと思います。

 

 

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