R3技術士予想問題の解答例 [Q8 高度浄水処理] | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

Q4 高度浄水処理 1200字

地表水を水源とする急速ろ過方式の浄水場において、臭気物質の濃度が上昇するため、高度浄水処理の導入を検討する場合、①調査・検討すべき事項とその内容、②業務を進める手順と留意点,工夫を要する点を述べた上で、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

【解答例】

1 高度浄水処理を導入する際の調査・検討内容

臭気物質対策として高度浄水処理を導入する際、以下のことについて調査・検討を行う。

(1)基本情報の調査

既存施設の形式、構造、能力等の諸元を把握する。水源から給水栓までの各工程における臭気物質(2MIB及びジェオスミン)の濃度、取水量、薬品注入率等のデータを調査する。

(2)目標の設定

原水水質の傾向から、将来的な臭気物質の濃度と発生期間を推定する。浄水に含まれる臭気物質濃度の目標値を設定し、高度浄水処理の設計上の除去率を決定する。

(3)高度浄水処理の方法の選定

高度浄水処理は、①粉末活性炭処理、②粒状活性炭処理、③オゾン・粒状活性炭処理の3種類の方法がある。粉末活性炭処理は簡易に設置できるが、最も除去率が低い。粒状活性炭処理は、粉末活性炭処理に比べ、注入作業が不要で、除去率も高いが、発生期間が短い場合は施設整備費が高くなる。オゾン・粒状活性炭処理は、粒状活性炭処理よりも除去率が高く、粒状活性炭の長寿命化が可能になるが、さらに施設整備費は高価になる。3つの処理方法について、除去率、維持管理性、経済性、必要なスペース、導入によるリスク等を総合的に評価し、最も有効なものを選択する。

また、粉末活性炭処理の方式には、湿式と乾式があり、粒状活性炭処理の方式には、吸着効果を主体とした方式と生物活性炭吸着方式があり、オゾン・粒状活性炭処理の方式には、ろ過池の前段設置と後段設置がある。このため、方式ついても総合的な評価を行い、有効なものを選択する。

2 業務の手順と留意点・工夫点

 業務は上述の(1)〜(3)の手順で実施する。

基本情報の調査において、2MIBは放線菌に由来し、ジェオスミンは藍藻類に由来することを踏まえ、河川上流域のダム湖等の状況も把握する必要がある。また、他都市における高度浄水処理の導入事例について調査を行うべきである。

目標の設定において、水安全計画における管理基準と整合を図る必要がある。

高度浄水処理の方法の選定において、粉末活性炭は可燃性であることから、貯蔵設備を設置する建物は防火対策の検討を行う必要がある。オゾン処理は、消毒副生成物対策として後段に粒状活性炭処理を設置する必要がある。オゾンは毒性を有することから、漏洩防止、常時監視、排オゾン処理を適切に実施できるよう検討を行う。いずれの方法、方式を採用する場合も、実証実験を行った上で導入を進める。

3 関係者との調整方策

関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。

 

【参考】業務の手順と留意点・工夫点を処理方法毎に詳述する場合

※2 業務の手順と留意点・工夫点(オゾン・粒状活性炭処理導入時)

  業務は上述の(1)〜(3)の手順で実施する。

ここでは、オゾン・粒状活性炭処理を導入する際の留意点・工夫点について述べる。オゾン・粒状活性炭処理は、ろ過池の前段か後段に設置するかにより分類できる。原水中のマンガン等の含有量が問題になる場合は前段、トリハロメタン前駆物質等が問題になる場合は後段を選択すると有効である。さらに、粒状活性炭処理前段で塩素注入をしないことにより生物活性炭処理が可能になり、吸着効果の長期維持の必要性が期待できる。

オゾン処理施設は、オゾン発生装置、オゾン接触装置、排オゾン設備で構成される。オゾン発生装置は、発生効率が高く、耐久性、安全性が高いものを選定する。オゾン接触装置は、オゾンの吸収効率を踏まえて注入方式を選定し、必要な接触時間を得られる容量を確保する。排オゾン設備は、排オゾン濃度、風量、運転条件等を踏まえて適切なものを選定する。

※2 業務の手順と留意点・工夫点(粒状活性炭処理導入時)

  業務は上述の(1)〜(3)の手順で実施する。

ここでは、粒状活性炭処理を導入する際の留意点・工夫点について述べる。粒状活性炭処理は、吸着効果を主体とした方式と生物活性炭吸着方式に大別できる。前者は吸着効果の確保と運転管理が容易であり、後者は吸着効果の長期維持とアンモニア態窒素の処理が期待できる。このため、2つの方式を比較検討して、適切なものを採用する。

粒状活性炭処理施設は、吸着設備、洗浄設備等で構成される。吸着設備は、固定式と流動式があり、処理効果、維持管理、経済性等を考慮して、適切なものを採用する。臭気物質を効果的に除去できるよう、空間速度、接触時間、線速度を決定した上で、活性炭の層厚、粒径等を決定する。活性炭は吸着機能が低下するため、適切な交換設備を設ける。洗浄設備は、逆流洗浄の水量、水圧及び時間を決定し、必要に応じて補助洗浄を付加する。

※2 業務の手順と留意点・工夫点(粉末活性炭処理導入時)

  業務は上述の(1)〜(3)の手順で実施する。

ここでは、粉末活性炭処理を導入する際の留意点・工夫点について述べる。粉末活性炭は、湿式と乾式に大別できる。活性炭の性状、保存方法、粉末活性炭処理施設の構造が異なるため、制御性、作業性、経済性等について比較検討を行い、適切なものを採用する。

粉末活性炭処理施設は、注入設備、貯蔵設備等で構成される。注入設備については、粉末活性炭の接触時間として少なくとも20分以上、処理効果を十分に得るためには1時間程度確保する必要があることを踏まえて、適切な注入点を決定する必要がある。貯蔵設備は、使用量と供給能力を考慮して適切な容量を決定する必要があり、連続注入の場合20日分以上、一時的な注入の場合10日分以上を確保する。貯蔵設備を設置する建物は、防塵、防火対策を検討する必要がある。

 

●出題者のコメント

高度浄水処理は、鉄板のテーマでした。

H20からH29までの10年間で、8回出題されています。

ほぼ毎年です。

ところが、H30からR2の3年間では出題されていません。

そろそろかなって思い、予想問題を作ってみました。

1枚じゃぁ少ないからという理由で、2枚物を想定しました。

自分で解答例を作ってみて思いました。2枚でまとめるのは無理。

どうにか1200字以内に調整しましたが、原稿用紙2枚には収まっていないと思います。

というわけで、この問題、あまりいい問題ではありませんね。

【参考】では、粉末、粒状、オゾン・粒状、それぞれについて詳述しています。

本当は、こうした内容を理解しているかどうかを確認するための問題を作りたかったわけです。

そう考えると、

 

地表水を水源とする急速ろ過方式の浄水場において、臭気物質の濃度が上昇するため、高度浄水処理の導入を検討する場合、①高度浄水処理の方法を複数列記し、そのうち一つを選んで調査・検討すべき事項を述べ、②業務を進める際の留意点を述べた上で、③業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

という問題にすればよかったのかもしれません。

 

それから、オゾン・粒状活性炭、粒状活性炭は、比較的大きな都市が対象です。

中小の都市の浄水場は、粉末活性炭が主体です。

中小の都市をコンサルティングする機会が多くなることを踏まえると、粉末活性炭について詳述する問題が良いのかもしれません。

というわけで、高度浄水処理のなかでも、粉末活性炭について、最終チェックすることをお勧めします。

 

 

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