【問題15】
施設の老朽化と人口減少が進む中、マネジメントシステムの最適化が求められている実情を踏まえ、①多面的な観点から上下水道共通の技術的課題を抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ,それに対する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策、④業務遂行において必要な要件を技術者倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。
【解答作成のコンセプト】
予想問題の問題文は「マネジメント」システムとなっています。しかしながら、これではイノベーション、マーケティング、スタッフの指導育成等について言及してもいい内容になります。技術士二次試験の予想問題で扱うテーマとしては抽象的すぎて失敗でした。
ここでは技術士試験対策のため、「アセットマネジメント」について述べたいと思います。
ご了承ください。
1 上下水道におけるアセットマネジメント
人口減少社会が到来し、水需要が減少する中、上下水道施設の老朽化が進んでおり、アセットマネジメントを実施することが不可欠であり、以下の課題を解消する必要がある。
(1)ミクロマネジメント
上下水道施設の維持管理を適切に実施する必要がある。しかし、自治体によっては対処療法的な処置しか実施していないケースがある。ミクロマネジメントを確実に実施するべきであり、施設情報を収集した上で、定期的な点検・診断を実施し、適切な時期に補修、耐震補強、更新(更生を含める)を行う必要がある。
(2)マクロマネジメント
老朽化した施設の更新を行う必要がある。ただし、上下水道事業は、水の処理、貯蓄、移送、排除等を行う施設を大量に有している。このため、マクロマネジメントを適切に実施すし、実現可能な事業計画を策定する必要がある。
(3)収入不足への対応
人口減少、水需要の低迷により、税収、料金収入の減少が見込まれる。これにより、上下水道施設の更新や災害対策の強化が困難になる。このため、コスト縮減により支出を抑制するとともに、料金の適正化等により収入を確保する必要がある。また、企業債は将来世代に残す借金であることを鑑み、持続可能な財政収支を検討する必要がある。
2 最重要課題とその解決策(マクロマネジメント)
人口減少を踏まえた基盤強化を実現するため、財政収支を踏まえた長期的な施設更新計画を策定する必要があることから、マクロネジメントを最重要課題と位置付け、以下に解決策を示す。
(1)施設の長期的な更新計画の策定
30〜40年を計画期間とする更新計画を策定するため、施設毎に更新時期、更新費用を算定する。
更新時期は、点検結果と直接診断に基づき、余寿命を見極めることが理想的である。これが困難な場合は、材質、環境、建設年度等から使用年数を設定した上で、施設の重要度、災害リスク等を勘案した更新優先順位に基づき、具体的な更新時期を決定することが有効である。また、上下水道施設を構成する構築物、管渠、機械・電気設備は、それぞれ使用年数が異なるが、1つのシステムとして捉え、最適な範囲で更新を行う。
更新費用の算定は、統廃合、ダウンサイジング、省エネルギー、耐震化、省力化等、更新にあわせた改良やコスト縮減を考慮する。
(2)財政収支計画の策定
施設を管理運営するために必要となる将来費用を把握するとともに、人口予測、水需要予測を実施し、将来的な収入を推定する。さらに、予算制約等の条件を設定し、更新需要の平準化や施設の延命かを図り、実現可能な財政収支計画を策定する必要がある。こうした計画を地域水道ビジョンの作成や運営基盤強化の検討等に活用する。
(3)ICTの活用
マクロマネジメントだけではなく、ミクロマネジメントも含めたアセットマネジメントを実施するためには各種情報を収集・整理・蓄積する必要がある。こうした重要情報は、ベテラン職員の退職により喪失していくことが懸念される。このため、施設台帳、資産台帳等をデータ化した上で、ICTによる一元管理を進める。さらに、ストックしたデータを活かしAIによる計画策定等を行い業務の効率化と高度化を図ることが重要である。
3 解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策
上下水道施設の更新は、相反する要求事項が含まれている。必要性、経済性を優先して脆弱な施設を整備すれば機能性、安全性が損なれる。リスクの隠ぺい、偽装により、二次災害が発生する可能性がある。また、検討段階では適切な技術であっても、新たな調査、知見により、地球環境、人体への影響が発覚する場合もある。
こうしたリスクを踏まえ、複数の選択肢を検討し、最適な解決策を提案する。さらに、マネジメントサイクルにより改善を重ねる。
技術者が公共の福祉の確保、法令遵守、継続研鑽を実践できるよう、指導・教育体制を確保する。また、施設整備には多くの費用と期間を要することから、広域連携や官民連携を推進し、合理的な対応策を講じることが重要である。
4 業務遂行において必要な要件
分析・評価、計画、設計、施工、維持管理等、業務遂行における全工程において、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努める必要がある。
●参考
アセットマネジメントとストックマネジメントの参考資料は こちら をどうぞ
水道施設台帳については こちら をどうぞ。
●試験対策
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●試験と解答例
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