シンプル イズ ベスト
小棚の無駄話の続きですが、利休の好んだ棚は、やはり基本的に使いやすい棚なんだろうと言えます。 小棚は、本来、水指を置く棚ですが、棚によって、水指とのバランスが悪い、どうも似合わない場合がある。形の大小が一番問題になる筈で、棚が大きいのに、水指が小さくて貧弱に見えるとか、棚が小さいのに、水指がやたら大きくて窮屈に見えるとか。昔、徒然棚という三本足で正面は広く開いた棚ですが、そこに仁清茶壷写の大きいい水指が置かれて、膨らんだ腹が棚より外に出てしまい、上も柄杓を入れて汲むのが大変そうなのを見て、思わず失笑したことがありました。これは極端としても、大きさのバランスで首を捻ることはよくあります。「四角い棚に四角い水指は置くもんじゃない」と説く人もいますが、私見では、丸い棚に丸い水指を置いても大丈夫なように、大きさのバランスさえよければ、四角に方形でも案外大丈夫なものと思います。棚が塗りだと、その色合いと、水指の色目がどうも合わないというケースも結構あります。棚が真塗りだと、その黒さに水指の色が沈んでしまって映えないということは案外あります。溜塗りや春慶塗りの場合でも、色合いの問題は生じます。その点、祥瑞のようなはっきりした染付は、どの色でも合うので、色目の点では使いやすいのかも知れません。水指が主役か、棚が主役か、理想は一体化して両方がよく見えることでしょうが、やはり水指の方が主役であるべきような気がします。異風過ぎる棚や、装飾過剰な棚は、どうしても棚の印象が強く残りすぎて、水指は何だったっけとなることがあるのは事実です。裏千家だと、御幸棚とか、巴棚、つぼつぼ棚のように、棚の客付きに、装飾がある棚は、客座から水指がほとんど見えないという極端な例もあります。 その点、利休好みの棚は、大きさのバランスさえ間違わなければ、どんな水指を載せても似合う。どんな色目でも、色を殺すこともありません。過剰な装飾もなく、シンプルですけれど、きちんと計算された美しさがあるのでしょう。中でも四方棚と丸卓は、炉、風炉両方に使えますし、一番使いやすいのではないでしょうか。再好みが多いのも当然かもしれない基本形といえます。 シンプル イズ ベストということでしょうか。考えてみれば、棚に限らず、これは茶道具全般、いや茶の湯の美の基本として、忘れがちですが、時には振り返らないといけないことだと、未熟な私は思うわけです。 萍亭主