蝸牛好みの香合
前回の続きですが、式守蝸牛の茶事の侘の道具を、仰木政斎は絶賛しているのですが、一体どんな道具だったのか、具体的な記述がないので、全く想像がつきません。 実は、我が家には、式守蝸牛にゆかりの道具があるのです。先代が遺した品で、何故、これがあるのか、経緯も聞いておらず、先代が蝸牛と面識があったとも到底思えないので、茶道具屋で手に入れたのでしょうか。流儀も違うし、何でこれを?と思うのですが、流儀にこだわる方でもなかったので、何かが面白いと感じて手に入れたのでしょうか。前にも書きましたが、先代の生きている内は、私は茶の湯に全く関わらず、道具について、作者や伝来、購入経緯に関して、二、三を除き、全く聞いた事がありません。そのため、茶の湯を始めてから、えらく苦労しました。余計なお節介ですが、茶道具をお持ちで、後継者がおありなら(茶の湯をしようが、しまいが)、道具の価値を教えて置かれた方が良いと思います。もっとも、手探りで勉強した苦労が身につくとも言えますが。 閑話休題、これが、その香合です。 蓋裏の花押。 箱の表。箱裏の書付。「七ツの内」とあり「五楓 花押」と書かれます。 箱の底。泉哉という漆工の作とみえます。 随分長年、これが何だかわかりませんでした。箱の字も読めないし、花押も誰のかわからない。花押辞典も引いて見ましたが、わからない。大体、花押辞典というのは、物凄く調べ難いものですが。何人かの茶人や道具屋に訊いても首を捻るばかり。なまじ花押があるだけに茶会にも使えず、しまい込んだままでした。少し知識がついてきて、箱の字が楓と読め、服部山楓じゃないかと思いましたが、上の字が違うようで、その内、蝸牛の別号に思い当たりました。懇意の道具屋に話したら、江戸千家系に強い、古老に訊いてみましょうということで、やがて返事が来て「間違いありません。式守蝸牛です」とのこと。それにしても相当メジャーでビッグな茶人でないと、流儀系の人、それもよほど物知りの人でないと、判断出来なくなり、歴史の中に埋もれてしまうのでしょう。道具屋さんも流通の少ないものには目を向けませんし。考えてみると、我が家にも、いまだに誰のものかわからない書き付けの箱が10点近くあります。死ぬまで解明できないんだろうなあと諦めています。 この香合、道具屋さんは「烏帽子香合ですね」という人もいるのですが、烏帽子にしては、当てはまる型がなく、冠というのも何だかと思いますし、箱には何とも書かれておらず、ご存知の方は、お教えください。 萍亭主