炭屋の思い出話をしていたら、京都での別の記憶が甦りました。

 炭屋に泊まってから六、七年後でしたか、今でもあるかは知りませんが、JCBに「京爛漫」という企画がありました。京都の料理屋を紹介する企画で、和、仏、伊、中華と各種揃っていますが、その中の某料亭が、ディナー後に、夜咄のお茶席にご招待、一服差し上げますという企画がありました。ちょうど京都に用事もあり、つい、そそられて申込み。お店は上京のやや下の中心辺にあり、老舗とかではなく、新興らしいお店、立派ですが新築風の和モダンな感じ。食事は、特徴もないが、まずまずの感じ、しかし、デザートも終わっても何もお呼びがありません。そのうち、お勘定書きが来たので、お茶を貰えるのじゃないのかと訊くと、仲居がえっという感じで引っ込み、やがて女将さんが現れて、少しお待ちをということで、15分以上経ってから、女将が迎えに現れました。廊下伝いに四畳半の茶室に通されましたが、薄暗くはあるものの、電灯の間接照明と、行灯形のスタンド。炭屋のような本格の短棨や手燭の風情はありません。しかも初冬の頃で、結構寒い。女将が菓子を持ち出して、「あいすみません、炉に火を入れてないので」と。えっ!釜は掛けてあるのですが、道理で冷え冷えと見えた筈です。じゃあお点前もないのか、と思う所へ、点て出しのお茶が運ばれました。熱かったのが救いでしたが、道具が見られるわけでもなく、軸は「喫茶去」だったか、掛けっぱなしに出来る感じ、花は椿が竹の掛け花入に綺麗に生けてあったと記憶します。どうも、夜咄茶会を宣伝しても、それを期待する客もいなくて、所望もないまま、パスする状態が続いていたのでしょう。それにしても、これでは看板に偽りありと言わざるを得ません。立ち去りぎわに、釜は何かなと炉の側に座ってみましたが、冷え冷えとした炉は、清少納言じゃないが、凄まじいものでした。

 松山の道後温泉で泊まった時、希望の客には、茶室で呈茶とあり、行ってみたら、ここは風炉に火も入り、点前畳に道具も飾られていましたが、やはり点て出しのお茶でした。旅館で、たまにウエルカムドリンク風に抹茶が出たり、寺の拝観で、別料金で抹茶が出たりしますが、これらの点て出しで、美味しかったという記憶は、まずありません。期待するわけでもないのですが、どうも何時も印象なく終わってしまいます。緊張して細かいところを記憶していないものの、炭屋では茶の湯の風情を十分味わえたのは、やはり、あれは特別だったのでしょう。

 つまらぬ思い出話になりました。またブログ休みます。

   萍亭主