輪も難しい
ご退屈かもしれませんが、もう少し、蓋置の話を続けます。 文房具などからの見立て、転用、模作だけでなく、本来、蓋置として作られた品も無論あるわけで、その最初が唐銅皆具の中の蓋置と言われます。皆具も個体により、装飾や型など多少の様式の変化はありますが、蓋置は、円筒形のものと決まっているようです。円筒で天地は塞っておらず、吹き抜けになっていて、点前によっては、柄杓の柄にこの蓋置を差し通して、建水(棒の先など深い建水)に仕組むこともありえます。こういうことからか、本来「輪」の蓋置という名前ですが、「吹貫(ふきぬき)」という別名でも呼ばれます。こちらを通称にしている流儀もあるようです。本来の金属から、陶磁器でも作られるようになると、胴に彩色や紋様を描くことで、華やかなものも造られるようになります。 もともと皆具の金属製の蓋置も、紋様や透かしが入っているものがあり、陶磁器もそれを受け継いでいると言えます。ちなみに、茶道具は、水なり抹茶の粉なりを扱いますから、器物に透かしを入れるのは難しいわけですが、その点、蓋置は透かしの技法の美を見せられる数少ないものと言えます。輪の蓋置は、シンプルな形で、変に目立たず、他の道具と調和も取りやすく、しかも文様によっては趣向や季節の表現に役立つこともあり、扱いやすくて釜の蓋も載せやすく、使い良さで、竹を除けば、蓋置の主流を占めていると言えるのではないでしょうか。私などは、あまり細かい事を気にせず、類似のものは全て「輪の蓋置」と呼んでしまうのですが、細かい違いで呼び方に違いがあるというのが、ちゃんとした茶人の言い分のようです。すなわち、同じ輪の胴が膨らんでいれば「太鼓胴」、逆に、胴が絞られているタイプは「千切(ちぎり)」と呼ぶとされます。下の写真、左は明らかに「太鼓胴」と呼べると思いますが、片方は「千切」と呼べるのかどうか、もっとくびれていないといけないのか、でもそうだと、杵形という用語になりそうですが。更に、同じ円筒形(もちろん中心に穴が空いている)でも、楽焼であれば、あるいは別の焼き物でも轆轤を使わない手造りであれば「つくね」と称するそうです。 手造りの場合、歪みや凹凸はあるのは当然ですが、これが円筒形にならず、手造りでなくても方形になれば、「四方」と呼ばれます。 「輪」の蓋置の進化形の一つだというのが、金属で一枚の木の葉形を作り、それを巻いて円筒にしたのが「一葉(いちよう)蓋置」です。細い木の形を束ねたものを集めて円筒形にしたのが「束柴蓋置」です。この他にも進化系があるかもしれませんが、この辺でやめておきましょう。今日はこの辺で。 萍亭主