ダウン・ツ・ヘウ゛ン
森博嗣・著
『スカイ・クロラ』シリーズ第3作。
戦闘機の女性パイロット、クサナギがただひとり敬愛する戦闘機乗り『ティーチャ』と空で敵同士として対峙する、その心情に焦点を絞った作品です。
前2作よりもクサナギの主観が強く押し出され、その結果として読み手側により深い理解と共感を呼び起こすことに成功しているように思います。
同じパイロットとして、また一人の人間として、心から愛し慕っている相手と、たとえ敵という立場だとしても再会でき、一緒に空を飛べる。
その切ない喜びに、一貫して淡白な感情しか持たないはずのクサナギが、戦う前夜、会いに来たティーチャと話しながら涙する場面が印象的でした。
「あなたのことを尊敬しています。僕の命を懸けて、精一杯……」そこで言葉が出なくなった。僕の頬に涙が伝っている。それが口に入るくらいだった。涙の味がした。どうして、泣いているのか、自分でもわからない。「がんばります。どうか見ていてください」
『スカイ・クロラ』シリーズ第3作。
戦闘機の女性パイロット、クサナギがただひとり敬愛する戦闘機乗り『ティーチャ』と空で敵同士として対峙する、その心情に焦点を絞った作品です。
前2作よりもクサナギの主観が強く押し出され、その結果として読み手側により深い理解と共感を呼び起こすことに成功しているように思います。
同じパイロットとして、また一人の人間として、心から愛し慕っている相手と、たとえ敵という立場だとしても再会でき、一緒に空を飛べる。
その切ない喜びに、一貫して淡白な感情しか持たないはずのクサナギが、戦う前夜、会いに来たティーチャと話しながら涙する場面が印象的でした。
「あなたのことを尊敬しています。僕の命を懸けて、精一杯……」そこで言葉が出なくなった。僕の頬に涙が伝っている。それが口に入るくらいだった。涙の味がした。どうして、泣いているのか、自分でもわからない。「がんばります。どうか見ていてください」
ナ・バ・テア
森 博嗣・著
『スカイ・クロラ』シリーズ第2作です。
時系列的には、前作よりも過去の話となっており、曖昧だった周辺情報を埋めることが(粗方の部分で)できました。
また、主人公の心理描写が前作『スカイ・クロラ』よりも遥かに多く、かつ明瞭に為されているため、個人的には本作の方が自分の中で御し易かったです。
おそらくこの差は、主人公の性格に因るところが大きいのではないかと思います。
両作ともに全編を通して一人称での文章で完結しているために、読み手は当然のことながら、語り手である主人公のパーソナリティというフィルタ越しに、物語に対してアプローチをすることになります。
このフィルタの色で、世界の見えかたはまったく変わっていきます。
本作『ナ・バ・テア』の主人公は、キルドレ(大人にならない子供たちの総称)である自分に対して、嘆きがないというか、むしろ「だからどうした」というようなスタンスの持ち主なので、その点で、よりこのシリーズの特徴である〈空(=飛ぶという行為そのもの)への執着、孤独からの脱却、自由の希求〉などのテーマ性が純粋に強調され易かったのかなと思います。
加えてキルドレではない、大人になっても空をあきらめられずに旧型の戦闘機で飛び続ける、『彼』の存在も大きかったです。
立場や周囲の環境だけでなく、意思や思惑などの自分自身の何もかもさえ振り捨てて、空を飛んでみたいと思わされました。
『スカイ・クロラ』シリーズ第2作です。
時系列的には、前作よりも過去の話となっており、曖昧だった周辺情報を埋めることが(粗方の部分で)できました。
また、主人公の心理描写が前作『スカイ・クロラ』よりも遥かに多く、かつ明瞭に為されているため、個人的には本作の方が自分の中で御し易かったです。
おそらくこの差は、主人公の性格に因るところが大きいのではないかと思います。
両作ともに全編を通して一人称での文章で完結しているために、読み手は当然のことながら、語り手である主人公のパーソナリティというフィルタ越しに、物語に対してアプローチをすることになります。
このフィルタの色で、世界の見えかたはまったく変わっていきます。
本作『ナ・バ・テア』の主人公は、キルドレ(大人にならない子供たちの総称)である自分に対して、嘆きがないというか、むしろ「だからどうした」というようなスタンスの持ち主なので、その点で、よりこのシリーズの特徴である〈空(=飛ぶという行為そのもの)への執着、孤独からの脱却、自由の希求〉などのテーマ性が純粋に強調され易かったのかなと思います。
加えてキルドレではない、大人になっても空をあきらめられずに旧型の戦闘機で飛び続ける、『彼』の存在も大きかったです。
立場や周囲の環境だけでなく、意思や思惑などの自分自身の何もかもさえ振り捨てて、空を飛んでみたいと思わされました。
スカイ・クロラ
森 博嗣・著
戦争が日常として容認されている世界の、日本とよく似た国で、戦闘機のパイロットとして行きている主人公の一人称で進行する物語。
今夏映画化ということで、大々的にプッシュされています。
森さんの作品はこれが初読となりますが、「本」という媒体を前提として、視覚的効果を重要視した文章構成をされる書き手の方だなと思いました。
戦闘機/飛行機上での場面の、改行や体言止めの多用は、読み手の速読・即解を自然と促し、速度を上げるストーリーに対して一体となります。
改行によって作られた間隙も、頁全体を眺めると、ある理由で他の人間とは異なる存在である主人公の、精神の空白―孤独を表現する手段として秀逸だと思います。
また、中公文庫版の装丁も一面の青に白字で美しい空そのものでした。
ラストに近くなるにつれ、明らかになる事実は痛烈、そして最後に主人公が下した決断は悲痛です。
ただ、スカイ・クロラシリーズでは時系列が刊行順ではないため、この作品の結末に他の意味をもたせるのは、既刊をすべて読んでからにしたいと思います。
戦争が日常として容認されている世界の、日本とよく似た国で、戦闘機のパイロットとして行きている主人公の一人称で進行する物語。
今夏映画化ということで、大々的にプッシュされています。
森さんの作品はこれが初読となりますが、「本」という媒体を前提として、視覚的効果を重要視した文章構成をされる書き手の方だなと思いました。
戦闘機/飛行機上での場面の、改行や体言止めの多用は、読み手の速読・即解を自然と促し、速度を上げるストーリーに対して一体となります。
改行によって作られた間隙も、頁全体を眺めると、ある理由で他の人間とは異なる存在である主人公の、精神の空白―孤独を表現する手段として秀逸だと思います。
また、中公文庫版の装丁も一面の青に白字で美しい空そのものでした。
ラストに近くなるにつれ、明らかになる事実は痛烈、そして最後に主人公が下した決断は悲痛です。
ただ、スカイ・クロラシリーズでは時系列が刊行順ではないため、この作品の結末に他の意味をもたせるのは、既刊をすべて読んでからにしたいと思います。