ナ・バ・テア | Forlonger

ナ・バ・テア

森 博嗣・著

『スカイ・クロラ』シリーズ第2作です。

時系列的には、前作よりも過去の話となっており、曖昧だった周辺情報を埋めることが(粗方の部分で)できました。

また、主人公の心理描写が前作『スカイ・クロラ』よりも遥かに多く、かつ明瞭に為されているため、個人的には本作の方が自分の中で御し易かったです。

おそらくこの差は、主人公の性格に因るところが大きいのではないかと思います。

両作ともに全編を通して一人称での文章で完結しているために、読み手は当然のことながら、語り手である主人公のパーソナリティというフィルタ越しに、物語に対してアプローチをすることになります。
このフィルタの色で、世界の見えかたはまったく変わっていきます。

本作『ナ・バ・テア』の主人公は、キルドレ(大人にならない子供たちの総称)である自分に対して、嘆きがないというか、むしろ「だからどうした」というようなスタンスの持ち主なので、その点で、よりこのシリーズの特徴である〈空(=飛ぶという行為そのもの)への執着、孤独からの脱却、自由の希求〉などのテーマ性が純粋に強調され易かったのかなと思います。

加えてキルドレではない、大人になっても空をあきらめられずに旧型の戦闘機で飛び続ける、『彼』の存在も大きかったです。

立場や周囲の環境だけでなく、意思や思惑などの自分自身の何もかもさえ振り捨てて、空を飛んでみたいと思わされました。