(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -8ページ目

効果的なコーチングについて(6)

もう、年明けの2週目に入ります。時間の大切さをひしひしと感じるようになりました。

さて、先週は、ラインマネジャーのコンピテンシーとしては「戦略的思考」「人材育成」「リーダーシップ」の3つあればよい、ということ、また、、ビジネスの目標達成とコンピテンシーの重みの度合いは50%対50%であるべきだと、という話をしました。

私も仕事のうえで、多くの企業様の例を知っていますが、コンピテンシーが10項目以上あったり、(評価や改善のためには項目が多すぎて使えない)、あるいはビジネスの目標達成とコンピテンシーの割合が、ガイドライン上は30対70であるにも関わらず、実際にはほとんど、ビジネス上の目標達成度だけで評価される、という実態が存在しています。

こういった実態が「良し」とされる企業文化を持っている会社では、人材育成がビジネスの結果を産み出すのに大切である、という意識や大切さに関する認識が薄くなっていきます。

私は、「効果的なOJTの進め方」のワークショップを行っていますが、その中で参加者の方々に「人材育成がうまくいったときと、うまくいかなかったとき、個人、組織、そしてあなた自身にどの様な影響が出ますか」という質問をして、ディスカッションしていただきます。その結果として、あげられるのが以下のような要約です。

人材が育った場合に起こることとして:

本人のスキルが上がり、生産性が高くなる
本人のモチベイションが上がり、積極的な態度になる
回りの人が刺激されて活性化する
グループが明るくなる
私の仕事が楽になる
グループ全体の業績が良くなる
私はより高い次元の仕事に焦点を合わせることができる

実に素晴らしい内容です。つまり、人材育成の大切さというのは、ちょっと立ち止まって考えてみるとすぐに理解できる事なのですが、実際にはやっていないといのが実態です。

人材育成というのは、即効性のある処方箋として業績の結果にすぐにあらわれないため、ラインマネジャーとしては、どうしても結果が少しでも出る方法に頼りがちになり、その結果として、コーチングではなくて、「とにかく、手当たり次第に得意先を回ってこい」あるいは「何べん同じことを言わせるんだ」といった叱咤激励に偏ることになります。ムチを振り回すのではなく、人が育つダイアログについては次週から説明することにします。

効果的なコーチングについて(5)

皆様、新年あけましておめでとうございます。2010年という節目の年も終わり、新たな2011年という年が始まりました。わたくし自身、人材育成コンサルタントとして独立したのが、2008年の2月のことでしたから、今年の2月が来ると、もう丸3年が過ぎて、4年目に突入することになります。振り返ってみると、あっという間でしたが、これからも日本のビジネス界に輩出できるグローバル人材の育成を目指して頑張りますのでよろしくお願い申し上げます。

さて、先週までは「コーチング」の進め方というテーマで話を進めてきました。これまで様々な企業様でコーチングあるいはOJTの進め方について研修を行う機会がありましたが、コーチングが定着しない理由として、「人材を育成しても自分の評価にはつながらないから」という点が根本的な原因ではないかと指摘をしました。残念ながらほとんどの企業では、業績評価の際に、人材育成、あるいは部下の育成という項目には重きが置かれていないのが現実です。

多くの企業で行われている業績評価は、いわゆる「目標管理」と呼ばれるものです。

目標管理では、大きな組織目標、例えば、会社の目標が設定され、その目標を達成するために戦略が策定されます。そして各部門では、その戦略が部門の目標となり、その部門目標を達成するために部門の戦略(アクションプラン)が策定されます。この落とし込みが個人レベルまで行われ、個人のビジネス目標になります。

一方で多くの企業では、各個人の行動面についても評価をおこないます。通常はこういった行動の評価には「コンピテンシー」という考え方が用いられます。例えば、リーダーシップや、協調性といった能力です。そして、この中に、ラインマネジャーとして必要なコンピテンシーとしての「人材育成」というコンピテンシーが入ってきます。

通常の企業では、ビジネスの目標達成とコンピテンシーの重みの度合いが、70%対30%程度です。したがって、コンピテンシーが満点だとしても、自分の査定に影響するのは30%だけです。ましてや、その中の人材育成の比率など、満点でも数%でしょう。これでは、どんなに「人材育成が大切」だと、頭では分かっていても、実際の行動面では「人材育成」にかける時間などわざわざとって、成果も出ないようなコーチングに時間をかけられるはずがありません。

会社にはそれぞれの考え方がありますが、私個人としては、ラインマネジャーのコンピテンシーとしては「戦略的思考」「人材育成」「リーダーシップ」の3つでよいと思っています。また、ビジネスの目標達成とコンピテンシーの重みの度合いは50%対50%であるべきだと思います。

効果的なコーチングについて(4)

P&Gの上司はなぜ、自分の部下を育てる必要があったのか?理由は極めて簡単です。それは自分の評価に大きくかかわるからです。つまり、P&Gでは部下の育成、あるいは自分の担当しているグループの成長がなければ上司として評価されないからです。

以前にもこのブログに書いたと思いますが、P&Gのマネジメントの原則の中に、「上司は部下を育成して初めて次の昇進の機会が与えられる」という考えがあります。

わたくしがこれまでいろいろとお手伝いをさせていただいた企業様でも、一応これによく似たことを言われている会社は存在しています。でも、そういった会社のラインマネジャーが部下の育成のために、研修やOJTに対して積極的かというと決してそうでもないようです。

つまり、総論賛成各論反対なんですね。具体的にいうと、「人材育成の大切さはわかっているけど、今の状況では時間がないし、まず売り上げを上げることが先決。トレーニングなんかに行かせる暇はないよ」ということでしょうか。

もちろん売りを上げることは大切でしょうが、そのために何をしているかというと、「とにかく売ってこい」であったり、「数撃てばそのうち当たる」といった指導(こういった指示の出し方を指導と呼べるのかどうか疑問ですが・・・)が中心で、OJTやコーチングの考え方が全く生かされていないという現実です。残念なのは、このような企業様では「コーチング研修」をおこなっているにも関わらず!という点です。

それでは、コーチングを学んで(コーチングの本質を理解していなくとも、最低限コーチングのテクニックを教わっている)いるにも関わらずなぜ「時間や売り上げのせいにして」、コーチングを行おうとしないのでしょうか?

それは、2つの理由があると考えられます。

1.コーチングをしても業績が上がらないから
2.人材を育成しても自分の評価にはつながらないから

そもそもコーチングの進め方を間違っているのが1のケースで、コーチングに対して時間を取らない本当の理由は2のケースです。それぞれの会社にはそれぞれの評価の基準がありますし、それは会社が求めている組織文化ですから、何とも言えませんが、人材育成は大切だと言っているのに、評価にそれが反映されていないというのが「総論賛成各論反対」という行動をとらせる真の原因だと思います。