(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ -10ページ目

ロンドン・ビジネススクールで開発されたリーダーシッププログラム(9)

ここ、数週間にわたって、ロンドンビジネススクールの2人の教授が書いた「Why should anyone be led by you ?」という本を通じて、グローバルで通用するリーダーシップを考えてきました。この2人の教授は、この本の内容をリーダーたちへのワークショップに落とし込む依頼を米国のコンサルティング会社である「BlessingWhite」社に依頼しました。

その結果できたのが、全く同じタイトルの「Why should anyone be led by you?」という研修プログラムです。すでに世界各国の大手・有名企業で実施されていますが、日本ではまだ実施されていません。おそらく来年の春ごろにはプログラムが日本語に訳され皆さまにもご紹介できると思います。

さて、先週あるグローバル企業の「コーチング研修」の講師をしました。今回の参加者は、すでにコーチングの研修を受けてはいるのですが、どうも上手くコーチングができていないようなので、さらに追加の研修をという位置づけでした。

なぜ私がこの話を持ち出したのかというと、参加者の話をいろいろと聞いていると、これまで、日本(あるいはグローバルでも同じことが起こっているのではないでしょうか?)でおこなわれてきたコーチングという研修に、大きな取り違えがあるように思えてならないからです。取り違えというのは大きく2つの観点から言えるのではないでしょうか?

●コーチングというのは年に2回の業績評価の際に用いる手法である
●コーチングは自ら考え行動できるように仕向ける手法である

コーチングはコーチされる人の「モチベイションを向上」して、「不足しているスキルを身につけさせ」そして「業績の向上につなげる」事が目的です。したがって年に2回の業績評価の際にコーチングを行うというのは根本的に誤った考えです。年に2回コーチングの手法を完璧に行ったところで本人の業績が上がるわけでもありませんし、モチベイションが向上するわけでもありません。

次に、確かにコーチングの手法を使えば、本人が自ら答えを導き、自ら考えて行動できるようになりますが、こういった側面は、実はコーチングの中のほんの一部でしかないのです。誰に対しても、また、どんなスキルレベルの人に対しても、あるいはどんな状況の時にでも「相手が自ら考え行動できるように」、同じ会話方法を用いることで対応できるということではありません。

次回から少しコーチングについて説明してゆくことにしましょう。

ロンドン・ビジネススクールで開発されたリーダーシッププログラム(8)

さて、これまでロンドン・ビジネススクールで開発されたプログラムをご紹介してきましたが、少しまとめをしてみましょう。Rob Goffeeと Gareath Jones の二人が主張していることをまとめると、ある人をリーダーとして認めてその方を支持するかどうかは、フォロワーの決定であり、フォロワーがリーダーに期待していることをまとめると以下の4つのカテゴリーに分かれる。つまり「Community」「Authenticity」「Significance」そして「Excitement」の4つである。

これを受けて、リーダーが注意してとるべき行動というのは

1)Know and Show yourself
2)Become a Situational Sensor
3)Communicate with Care

の3つに集約されるということでした。

実際に私が9月に上海でこのプログラムのトレーナーの認定を受けてから、日本で多くの階層別研修を行いました。その中で、リーダーシップについても取り上げるのですが、必ず「これまでに出会ったすばらしいリーダーの具体的な行動」をリストアップして頂いています。そうすると確かに優れたリーダーとして尊敬される方々はこの3つの行動をとっていますね。

たとえば、良く挙げられるのが、「人間らしさ」です。具体的には、

・いつも前向きで、良く話を聴いてくれた
・親身になって相談に乗ってくれた

これは、リーダーの人間的側面、つまり、強みや弱みをフォロワーが受け入れていることを示しています。あるいは

・場面に応じて適切なアドバイスがあった

これはまさにSituational Sensorであることを表していますし、フォロワーのモチベイションを上げることになっています。

そして、リーダー達は、恐らく意識はしていないのでしょうが、自分の思いをもっともうまく伝えることができる手段を選んで行動していたのです。

リーダーシップをこのように体系づけることですべてを語れるわけではありませんが、少なくとも皆さんのナビゲーションとして使うことをお勧めします。

ロンドン・ビジネススクールで開発されたリーダーシッププログラム(7)

今日はリーダーシップの発揮について、Know and Show yourself ともうひとつ重要なスキルである、Communicate with Care、という考え方を紹介したいと思います。コミュニケーションのスキルはリーダーシップには必要不可欠なスキルです。

例えば「積極的な傾聴のスキル」や「質問する力」などはコミュニケーションのベーシックとして、優れたリーダーなら ― とはいってもいまだに上から下への命令と統制型のリーダーシップに頼っている人が多いのは嘆かわしいことですが ― コーチングのスキルの一環として、身に付けていることが必用です。しかし、ここで言及しているCommunicate with Care と言うのはコミュニケーションスキルのことではありません。

ここでいう Communicate with Care は注意深くコミュニケーションの方法を考えてコミュニケーションをとりなさいということです。つまり、自分にとってどんなコミュニケーションの方法が最も効果的なのかを自分でよく理解しておくとことです。

具体例を紹介しましょう。私がP&Gにいたときのオランダ人の社長であったダーク・ヤーガー氏についてです。彼は普段あまりオフィスに鎮座しているような人ではなく、オフィスのフロアーをあっちにうろうろ、こっちにうろうろして、秘書の人が捜さなければ成らないほどあちらこちらに出没しては、様々なプロジェクトのキーパーソンと直接話しをする事を好む人でした。また、彼のそういった行動は周りの人々からも親しみを持って受け入れられていました。彼は1対1の関係の中では抜群の説得力と存在感を示すことができていたのです。

しかしながら、社員を多く集めるような場所でのプレゼンテーションはあまり得意ではありませんでした。だいいち、彼の独特のオランダなまりの英語は聞きにくかったですし、大勢の人を引き付けるような派手なボディアクションもありませんでした。つまりヤーガー氏は一人ひとりに語りかけるようなコミュニケーションの時には抜群の影響力を発揮しましたが、大勢を前にしたプレゼンテーションでは、あまり彼の良いところは出なかったように思います。

この事例に代表されるように、人には人を上手く引き付けることができるようなコミュニケーションの場を選択することができますし、自分にとって最も効果的なコミュニケーションの方法を選択する必要があるということです。